戦時中の日本人が記録した日本軍のカリバリズム(人肉食)

 

「日本じゃ人肉が売買されてんだぜ」

「マジかよ!日本人サイテーだな」

という会話がどうやらブラジルで交わされていたらしい。
ブラジルでは数年前から、「日本での人肉売買の実態」を伝える写真や動画が広がっていた。
そこには冷蔵庫に何体もの遺体がつるされたり、切断された手や顔が見えたという。

でもこれはすべてうそ!
芸術家の作品やホラー・ゲームの画像を加工したものだった。

見た人が信じたかどうか分からないけど、多くの人の目には触れてしまった。

朝日新聞の記事(2019年12月13日)

数年前からフェイスブックなどで「日本で人肉売買」「東京のレストランでは1万2千ユーロで売られている」などとして、写真や動画が拡散していた。朝日新聞が確認したところ、ある動画は28万回以上再生され、別の動画は3万件以上共有されていた。

「日本で人肉売買」FB拡散 南米でフェイク写真と報道

 

このフェイクニュースを流したサイトは「日本に人間動物園が開園へ」という記事で、「人権は適用されない。日本は資本主義が優先される国だ」と書いている。
悪意をもって日本の評判をおとしめようとするヤカラがいるらしい。

これに日本のネットの反応は?

・都市伝説が文字ではなく動画として広まる感じだな
・よく八百屋で売ってるじゃん
・ニンニクを人肉表記している居酒屋だか屋台だかあったよなw
・謎肉の話から来てるなこれは
・なんで人間の肉食わんといけないんだよ(゜д゜)

 

さて、ここまではフェイクだけど、これからの話はガチでマジ。
「なんで人間の肉食わんといけないんだよ(゜д゜)」といっても、極限の状態におかれたらいまの日本人もきっとそうなる。

たとえば飢饉だ。
食べ物がなくなって飢え死に寸前になれば、きっと死んだ人の肉にも手をのばす。
そんな悲しく凄惨なできごとは海外でも江戸時代にも起きている。
くわしくはこの記事を。

日本とソ連の「食人飢餓の地獄」天明の飢饉とホロドモール

 

そして直近では太平洋戦争のとき、昭和の日本人もそうした。
食料の当てのないままフィリピンやガダルカナル島へ送り出された日本兵は、すべての食料が尽きたあと日本兵の死体を食べることもあった。

グアムでは殺害して肉を食べるということも発生した。

敗走中のある陸軍上等兵が逃避行を共にしていた日本人の親子を殺害してその肉を食べるという事件が発生。事件の目撃者がアメリカ軍にこのことを密告したため、上等兵は戦犯として逮捕され、アメリカ軍により処刑された。

戦争中の人肉食

 

戦時中の日本軍によるカリバリズム(人が人肉を食べる行為や習慣)については、フィリピンで日本軍と行動していた軍属の小松真一氏が虜人日記(りょじんにっき)にくわしく書いている。

山では食糧がないので友軍同志が殺し合い、敵より味方の方が危い位で部下に殺された連隊長、隊長などざらにあり、友軍の肉が盛んに食われたという。

「日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条  (角川oneテーマ21) 山本 七平」

 

これはネグロス島の様子。
*比島はフィリピンのこと

ここは全比島の内で一番食物に困った所で友軍同志の撃ち合い、食い合いは常識的となっていた。行本君は友軍の手榴弾で足をやられ危く食べられるところだったという。敵も友軍も皆自分の命を取りにくると思っていたという。

「日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条  (角川oneテーマ21) 山本 七平」

 

こうした日本人も国内にいて食べ物さえあれば、こんな餓鬼のようにはならなかったはず。
内地の日本人も、令和の日本人も本質的には変わらない。
「日本軍はなんて残酷なことをしたんだ!」と言う人間も同じ状況におかれたら同じ行動をとるのだから、この時代の日本人を責めるのは意味がない。
そんなことで自己満足を得るのではなくて、大事なことは未来にこんな状況をつくらないことだ。

 

小松氏がジャングルで記したメモ

太平洋戦争の終盤、フィリピンに送り込まれた小松真一の体験記。奇跡的に命拾いを重ねた異常な現実を捕虜収容所内で、豊富な絵と、簡潔な文章で記録。

虜人日記

米軍の収容所にはいる日本兵

 

 

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4 件のコメント

  • 太平洋戦争中の飢えた日本軍の話よりも、1972年、アンデス山中に不時着した遭難機の乗客たちが、事故の犠牲者の死体を喰って生き延びた話(ウルグアイ空軍機571便遭難事故)の方が世界的には有名だと思います。何度か本にも映画にもなっているし。
    南米ブラジルでも、その話の下敷きがあって「さもありなん」とか話が拡がったのでは?
    そりゃ本当に生きるか死ぬかとなれば、誰しもそのような行動を取り得るでしょう。座して餓死するのは想像以上に難しいですよ。即身仏なんて常人にはとても無理。

  • これまで中国と韓国の話を書いたので、今回は日本のことを書きました。
    これは日本の歴史ですから、外国人には関係ないですが日本人は知っておいていいことです。
    「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」のことは別の記事で書こうと思っています。

  • >これまで中国と韓国の話を書いたので、今回は日本のことを書きました。
    こう言う姿勢こそがとても大切だと思います。書いて下さってありがとうございます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。