日本人の“宗教差別”?ヒジャブはバイト拒否の理由になるか

 

さいきん日本の大学に通うインドネシア人留学生と話をした。
そのインドネシア人は20代の女性で日本語能力試験(JLPT)の2級に合格しているから、日常会話レベルの日本語なら、ほとんど問題なく聞いたり話したりできる。

そんなインドネシア人がアルバイトをしようと考えた。
それでおススメのバイト先を紹介してもらおうと、まわりの外国人の友だちに聞いてみると、「あんたの日本語力なら大丈夫よ~」と言われて、いくつかのよさげな物件を見つけることができたという。

日本語もそこそこできるし日本人との付き合いもあるから、それなりの自信を持って、コンビニやカフェでバイトの面接を受けたのだけど、結果はまさかの連戦連敗。
「マジで~。あんたヒクソン・グレーシーの逆じゃん」と言われたかどうか知らないけど、まわりに相談して、いろいろ原因を考えてもらったりアドバイスを受けたりする。

話を聞いた中で「きっとそれだ!」と思った原因は、自分がかぶっていたヒジャブ。

 

アラビア語で「覆(おお)うもの」を意味するヒジャブは髪をかくすために、イスラーム教徒の女性が身につけている。

一般に欧米では女性の頭と体を覆う布を意味するが、アラビア語においては頭に被るベールといった意味のほかに「貞淑」「道徳」といった意味も持つ。

ヒジャブ

 

そのあとレストランで採用されて、いまは客からは見えないキッチンでアルバイトをしている。
面接に失敗した理由が本当にヒジャブだったかわからないけど、本人はそう信じている。
自分より日本語の下手なインドネシア人やマレーシア人の男性はバイトに受かっていたことからも、そう確信している。
個人的にボクはイスラーム教徒との付き合いがあるから、ヒジャブは気にならないけど、それを見て不安に思う日本人は多いのだろうか。

そんな経験をふまえて彼女は、「日本は多文化共生ではまだまだ後進国ですね」と言うことはないけど、「ヒジャブが原因なら、ハッキリそう言ってほしかったですね。時間をムダにしてしまいました」と不満を言っていた。
*経験的に、「日本は多文化共生の面でまだまだ遅れている」というセリフは日本人に多い。
そのインドネシア人の友だちの日本人は、「それは外国人への差別だ」と怒っていたらしい。

もしヒジャブの着用が不採用の理由だとしても、店側はそれを本人には言えないとおもう。
このインドネシア人はそんなことをしないけど、もし裁判に訴えられたら「差別」と認定されて店が負ける気がする。

ここ数年、浜松市では、マクドナルドでハンバーガーを食べていたりイオンで買い物をしたりと、本当にたくさんのイスラーム教徒を見るようになった。
でも、ヒジャブをかぶった店員は一度も見たことがない。
そういう“裏基準”があるのかもしれない。

 

ネットで調べてみたら、2017年にインドネシア人の「スカーフ着用ではだめですか?」という投書が朝日新聞に載っていた。
娘が日本でアルバイトをしようとしているけど、ヒジャブ(インドネシア語でジルバブ)を理由に断られているという。
「日本の人たちが、なぜいまだに偏見の目を持っているのか理解できない」という気持ちは分かるけど、別の表現にしたほうがいい。

 

女忍者のバイトならちょうどいいかも

 

無宗教の人が多いという点では日本と似ているヨーロッパのチェコで、3年前にこんなことがあった。
AFPの記事(2017年1月29日)

「ヒジャブ禁止は差別」ソマリア難民の主張、裁判で認められず チェコ

看護学校でヒジャブの着用を禁止するのは差別だとして、イスラーム教徒の女性が学校側に謝罪と6万コルナ(約27万円)の損害賠償を求める民事訴訟を起こす。
でも裁判所は、「ヒジャブが学校の安全および衛生基準に違反する」といった学校側の主張を認めて女性の訴えを退けた。
原告の女性は法廷に来なかったというから、自分が不利なのはわかっていたのだろう。

日本でもそのうち、こんな裁判が起こると思う。
ヒジャブの着用がどこまで認められるか、法律で示す事例があると、店側も判断が楽になるはず。
ところで、ヒジャブをつけた日本人もアルバイトを断られるのだろうか?

 

 

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6 件のコメント

  • 日本の差別の最もたるものはタトゥーでしょうね。
    今年のラグビーW杯で来ていたNZの選手が、タトゥーを隠す行動が報道されてましたが正に差別でしょう。
    相手の文化を尊重してない(単純に無知)から差別って起こるんですよね。
    僕は性差別や障害者差別はある程度仕方ないと思っている人間ですが、(もちろんどちらも区別レベルまで)
    こういう無理解からくる人種(文化)差別は本当に嫌いです。
    自分が無知だと公言していると理解しているのかな?って思っちゃいますよね。

  • タトゥーについては温泉に入れないことが問題視されています。
    外国人ならOKという所もあるらしいのですが。
    ただ、ワールドラグビーの公式ホームページやイギリス外務省は日本ではタトゥーを嫌う文化があるから、外国人はそれに配慮するようにもとめています。
    NZの選手の場合もホスト国への敬意や配慮だったかもしれませんよ。

  • すみません。言葉語りていなかったですね。
    仰るとおりNZ代表の話は、彼らが日本文化に対して配慮して隠した。ってコメントもありましたし、そのとおりなんですが、それに対して「日本に来てるんだから当たり前だ」とか言ってしまう日本人が嫌なんですよね。
    むしろこちらから「配慮してくれてありがとう。我々もあなた方の文化を尊重する。気にしないでいいよ。」と言ってあげてほしかったんです。

  • 「日本に来てるんだから当たり前だ」
    こういう日本人はたしかにいます。日本が招致した大会ですから、選手の配慮を当たりまえと思ってはダメですね。
    互いに敬意をもって接するのが日本人のいいところなんですが。

  • 「日本に来てるんだから当たり前だ」
    私もそう考えますね。実際、自分が他国へ行った場合のことを考えるとそのような配慮が当たり前ですから。
    海外から招待されてようがされてなかろうが、訪問した先の文化・習慣に配慮することは、不必要な摩擦を防ぎ自分の身を守るための第一歩ですよ。
    ヒジャブやタトゥーをあからさまに見せて接客しているような店は国内にはほとんどありません。そのインドネシア人は面接の際に「ヒジャブの着用が許されるかどうか」を自分からハッキリ質問して確認すべきでしたね。誰か、教えてあげればよかったのに。
    でもそこまで流暢になるほど日本語を学んで、まだそんなことに自分で気づかないかなぁ。やはり宗教的慣習というのは仮にでも取り去って考えるのが難しいのでしょうね。

  • 本人に聞かないと分かりませんが、ヒジャブは当たり前すぎて着用が問題になるという考えは出てこなかったと思います。
    日本にいてそれまでヒジャでトラブルになったことはないでしょうし。
    でもそのうちヒジャブをつけた店員を見るようになると思います。
    ブルカはむずかしいでしょうけど。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。