さて、これを見て何のシンボルか分かるだろうか?
「え~っと、なにか海賊的な?」とボクは思ってしまったけど、これはナチス=ドイツの親衛隊(第3SS装甲師団:トーテンコップ)のシンボルだった。
トーテンコップはドイツ語で骸骨、髑髏(どくろ)を意味することと、この師団の構成員が強制収容所維持管理及び警備を担当する親衛隊髑髏部隊(SS-Totenkopfverbände、通称SS-TV)から抽出されたことから、髑髏師団とも呼ばれる。
それを知らずに、取り返しのつかない失敗をした日本人がいる。
京都パープルサンガのサポーターこれをネットで見つけて、そのマークをデザインした応援旗を作成してスタジアムで掲げたところ、こうなりました。
毎日新聞の記事(2020年2月15日)
J2京都、サポーターがナチス親衛隊連想させる旗 セ大阪戦で 厳重注意し謝罪
試合中に気づいた人はほとんどいなかったらしく、試合が終わったあとネット上でこの旗をめぐって騒ぎになったという。
サンガ側が連絡を取ると、このサポーターはクラブハウスに行って謝罪し、「インターネットの画像検索で見つけ、意味も分からず、かっこいいと思って使ってしまった」と説明。
サポーターの行為もサンガの責任になるから、「深くおわびする。改めて禁止掲出物の周知徹底を行い、内容確認を強化する」とコメントを発表する。
Jリーグでは差別思想を連想させる物の掲示を一切禁じていている。
2017年には今回と同じように、ナチス親衛隊のマークによく似た旗を掲げたガンバ大阪のサポーターが無期限の入場禁止処分となって、ガンバ大阪には200万円の制裁金が課させられた。
でもこれはどこのスポーツ団体も同じで、差別や偏見をあおるような言動や掲示物が認められるわけない。これは、した側とさせた側の双方が責任を取らないといけなくなる。
さてこれにネットの反応は?
・>男性は後日、クラブハウスを訪れて謝罪。
職員室かよ
・京都なんだから卍にしとけよ
・ヤフートップに載ることかよ。
・本人がまねたって言ってるんじゃしょうがないな
ネットで拾ったやつは使うな。わかったか
・これで無観客にならんだから緩いよな
・応仁の乱の時代にナチスは存在しなかったから
・のんびり宇治抹茶の旗でも振ってろよ
ナチス=ドイツは第二次世界大戦中に、600万人ものユダヤ人を虐殺したことで(ホロコースト)、そのシンボルマークはいまでは人種差別の象徴となり、世界中、特に欧米社会で強いタブーになっている。
上のハーケンクロイツは日本でも有名になってきたけど、今回の親衛隊髑髏部隊や下のSS(ナチス親衛隊)のマークの認知度はまだまだと思う。
欧米ではこの3つのデザインを公の場で使ったら、犯罪行為として警察に捕まることもある。
日本でも「知りませんでした」では済まず、サポーターの「永久追放」のように何らかの社会的制裁をくらう。
日本では伝統的にユダヤ人居住者がいなかったから、欧米社会のようなユダヤ人との摩擦や対立、そこから生まれる憎悪や差別(反ユダヤ主義)がなくて、ナチス=ドイツのような強烈な人種差別思想とも無縁だった。
ナチ党は文化創造力を持つアーリア人種も混血によって「劣等な血」が混じれば退化するので アーリアの「血」を守らねばならないとした
日本が国として、特定の民族との結婚を禁止したという話は聞いたことがない。
前に何かの海外メディアで、「日本はユダヤ人差別がなかった唯一の先進国だ」と書いてあるのを見て、「なるほど。こういう視点は日本人にはないかも」と思った。
でも逆に、ナチスがどんな存在で、そのシンボルマークの持つ恐ろしさについてはあまり理解が進んでいない。
それで2015年には「ファッションセンターしまむら」の商品が、2016年には欅坂46のコスチュームが問題となった。
日本人が犯した「ナチスの失敗」。しまむら・欅坂46・Jリーグ
ナチス=ドイツに関しては「知らなかった」という無知は通用しないから、歴史を学んでシンボルマークとその意味を覚えるしかない。
ネットで拾った画像を確認なしで使うというのは論外で、注意一秒けが一生、ちょっとした不注意からとんでもない制裁をくらうことがあるのがいまの時代だ。
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いつも興味深く拝見しております。
確かにトーテンコプフ(髑髏)は第3SS装甲師団の師団マークですが、どちらかと言うと親衛隊の徽章(帽章)としての方が有名かも知れませんね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%97
ドイツ国防軍陸軍でも戦車兵の制服に髑髏の徽章が使われて居ましたが、プロイセン王国からの伝統的なタイプの髑髏でした。
前線では親衛隊と勘違いされ捕虜にとられなかったと言う悲劇もあった様です。
https://www.welt.de/geschichte/zweiter-weltkrieg/article177598118/Uniformen-Hitlers-Panzersoldaten-trugen-Totenkoepfe-wie-die-SS.html
件の京都パープルサンガの旗は明らかに親衛隊型髑髏でなので糾弾されるのは仕方ないかと。
まあ、軍装マニアならともかく、歴史に興味の無い日本人が分かるかと言うと微妙な気がします。
ダブルジークルーン(ᛋᛋ)はヨーロッパでは完全NGですが、アメリカだとこんな事があったり。
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-16973868
Scout Sniper とSchutz staffelの頭文字が同じで「武装」SSが勇敢に戦った事を
リスペクトして部隊内の軍事マニアがやったと思いますが、流出してしまうとこうなりますね。
本人にその意志が無くても、ナチ関係のマークを掲げると無条件に悪となってしまうこのご時世ですから
注意が必要ですね。
お詳しいですね!
わたしはトーテンコプフを今回初めて知りました。
今の時代、何かするとネットに証拠が残ってすぐに拡散しますし、無知ではいられません。
kokontouzai 様
恐縮です。
SSことナチ親衛隊は非常に複雑な組織でマニアでも詳しい人はあまり多くないかと。
親衛隊の武装部門である武装親衛隊(Waffen-SS=武装SS)は割合有名かと思われます。(上のトーテンコップ師団は武装SSです)
ヨーロッパでSSマークがハーケンクロイツ並みにNGなのは、ナチドイツの悪行と言われている事の
実行組織になったからなんですよね。
絶滅収容所でのホロコーストや特別行動隊(アインザッツグルッペ)は親衛隊とその麾下部隊が行っておりました。もっとも占領地で行動していたアインザッツグルッペは現地の徴用者などが居たりしてまた複雑だったり。
さらに警察機構も傘下に収めており、有名な国家秘密警察(ゲシュタポ)も親衛隊指揮下だったりします。
親衛隊長官 ハインリヒ・ヒムラーの趣味や実益から民族研究や営利部門まであった有様でした。
とまあ、複雑怪奇な組織で色々なエピソードがあるので歴史好きには面白いのですが
一般的評価は極悪非道なナチ中のナチなのでSSルーンなど掲げた日には上記の状態になってしまうと…
なのでネオナチ関係は微妙に違うシンボル使ってたりするのが、また何とも言えない感じがあったりします。
政治的な話はセンシティブなので難しいかもですが、今後機会があれば歴史系の話も含めて海外の方に聞く機会がありましたらお願いします!
トーテンコップはホロコーストに深くかかわっているようですね。
それじゃアウトですわ。
それにしても親衛隊にこんなにたくさんの種類があるとは思いませんでした。
知人のドイツ人の話ではハーケンクロイツ(それと親衛隊のマーク)よりも、ひじをまっすぐにして腕を上げるナチス式敬礼のほうがヤバイらしいです。中国人観光客がそれをドイツでやって警察に捕まりました。