「ハポン」(日本)というスペイン人が約600人もいる理由

 

南米のペルーではアニメ「ドラゴンボール」が大人気で、自分の子供にキャラクターの名前を付ける親が何人もいた結果、ゴクウ、クリリン、ピッコロ、フリーザといった名前のペルー人が500人以上もいるという。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

”ゴクウ”というペルー人!欧米(キリスト教圏)の名前のつけ方

出会った外国人に名前を聞いたら、「クリリンです」と言われる日がくるかも。

ピッコロでもフリーザでも、自分の子に「悪魔」と命名した日本人よりはよっぽどまともだ。

くわしいことはここを。

悪魔ちゃん命名騒動

 

では初対面の外国人から、「こんにちは。わたしは日本です」とあいさつされたらどう反応しよう?
可能性としては超激レアだけど、いつかそんな日がくるかもしれないから、スペインにいる「日本さん」について知っておこう。

その人たちはスペイン南部、アンダルシア地方にある人口3万人ほどの小さな都市「コリア・デル・リオ」に住んでいる。

 

さて、話は400年ほど前にさかのぼる。
戦国時代が終わって平和な江戸時代となって、戦闘能力よりも金もうけの才能が必要とされる世の中となった。
そんなとき仙台藩主の伊達政宗が「スペイン領のメキシコと貿易したいな~」と考え、家臣の支倉常長(はせくら つねなが)にスペイン国王との交渉を命じる。

*このとき伊達政宗はスペインと軍事同盟を結んで徳川幕府を倒そうとした、という説もある。

「大任をまかされた!」と思ったか「無茶ぶりにもほどがある」と思ったか知らないけれど、支倉常長は約180人とともに慶長18年(1613年)、いまの宮城県石巻市から船でスペインへ向かった。

これが慶長遣欧使節(けいちょうけんおうしせつ)だ。

 

支倉常長

 

結果から言うと、この使節派遣は失敗に終わる。

1614年にスペインに到着した支倉常長らは、スペイン国王フェリペ3世と会って話をすることはできたけど、仙台藩との通商の話は拒否られた。

動機はよく分からないけど、スペイン国王立ち合いのもと、支倉たちは洗礼を受けてキリスト教徒となった。
そのあとローマに行ってローマ教皇・パウロ5世と会い、ローマ市民権証書をもらう。
ローマ貴族になった日本人なんて、範囲を広げて全アジア人の中でも支倉常長だけだろう。
ちなみに初めて太平洋と大西洋を横断した日本人も彼ら。

 

さてスペインから日本へ戻るとき、現地に残った日本人がいるとされ、その子孫がいまのアンダルシア州コリア・デル・リオにいると言われている。
そこにはスペイン語「Japón」(ハポン:日本)という姓を持つ人が約600人も住んでいて、彼らは自分たちを「サムライの子孫である」と考えている。と毎日新聞の記事(2015年12月16日)に書いてある。

“刻む記憶 スペイン “祖国”思う「サムライの末裔」”

 

このハポン(日本)さんたちが本当に日本人の子孫か分からないけど(いまDNA鑑定を進めているらしい)、本人がそう認識しているのは確か。
細かいことはおいといて、一緒に飲んで仲良くなったらそれでいいらしい。

1996年に、駐スペイン日本国大使の坂本重太郎がラジオで呼びかけ、ハポン姓を持つ650人や、使節ゆかりの東北地方の裏千家メンバーなどを集めた「ハポン・パーティー」を、セビリアで開催した。

慶長遣欧使節

いまでは700人ぐらいいるかもしれない。

 

さいきん日本が好きな外国人が集まるSNS上のグループで、ハポン姓についてスペイン人からこんな投稿があった。
不自然な日本語もあるけど、そのまま載せよう。

「日本では「Japón 苗字がある」で止まってますが、イタリア、スペインだけでなく苗字を変えることは、ものすごく大事な事です。
私達は両親の祖父母の苗字も自分の名前として受け継ぎます。
普段は自分の名前+両親の苗字ですけど。
苗字をJaponに変えるのは、両親の系統を切ることになります。」

スペイン人やイタリア人の感覚や文化だと、姓を変えることは一大事だ。
日本人だって簡単じゃないけど。
自分の苗字を変えることは、親や一族とのキズナを断ち切る覚悟が必要のようだから、逆に言えばそれだけ過去との絆、サムライだった先祖とのつながりを大事にしているということだろう。

 

 

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5 件のコメント

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  • >私達は両親の祖父母の苗字も自分の名前として受け継ぎます。
    >普段は自分の名前+両親の苗字ですけど。
    >苗字をJaponに変えるのは、両親の系統を切ることになります。

    ???
    そのスペイン人は勘違いしているんじゃないですか? スペインのJaponさん達は、自分の先祖に実際に日本人が含まれていたと考えているのでしょう? だったら、両親の系統を切ることにはならないでしょうが。
    Japonもまた、両親や先祖から受け継いだ立派な苗字なのですよ、きっと。
    キリスト教的な価値観の東洋人に対する差別的感覚であるように思えてならないですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。