きょう20日の加藤官房長官の会見で珍しいことがあった。
「鬼滅の刃」に言及した加藤長官は、「私自身も先日、テレビで過去の映画が放映されているのを見た。若い人を中心に大変人気を博しているということもあって見させていただいた」と話す。
さらに記者から聞かれてもないのに、『進撃の巨人』を「全巻通じて読んでいる」と明かしたから、加藤長官はわりとアニメファンかも。
日本政府の立場を代弁する人が公の場でアニメについて語って、プライベートな一面を見せるというのはめったにない。
これにネットの反応は?
・今度から加藤閣下ってアニオタから崇められるんか?
・もっとさぁ
好きなキャラとかも聞いときなさいよ
・麻生大臣は今もジャンプやスピリッツを読んでいるんだろうか
・やっぱ自民は進撃よな
ワンピースは誰が見てるんやろな
・若い奴には理解できないだろうが
今の50代なんてマジでゲームやアニメに夢中な奴だらけで子供だらけ。
・東京グールも読んでそう
まぁとにかく、加藤官房長官の「映画、アニメ、漫画等のメディア芸術は広く国民に親しまれるとともに、海外でも高く評価されている。我が国が誇る日本文化として重要だと考えている」という意見には大賛成。
海外にもファンが山盛りいるアニメや漫画は、いまや日本が誇る世界的な文化なのだ。
でも、海外で日本のアニメが爆発的な人気と知名度と得た結果、日本人が想像しなかった、好ましくない使われ方もされるようになる。
タイでは反政府デモの「シンボル」としてハム太郎が「#」付きで利用された。
Run! Hamtaro! Run!
Run for Democracy!BGM byt : @AfterRab 🤩💕#วิ่งกันนะแฮมทาโร่ #Hamtaro#FreeYOUTH #SaveThaiDemocracy #respectdemocracyTHAI #ให้มันจบที่รุ่นเรา pic.twitter.com/GY7k08UuC5
— Thaikun 🇹🇭 It’s Monday for จะนะ (@ThaikunBot) July 26, 2020
これだと、政府を支持する側からはハム太郎は「敵」になってしまうから、こういう政治問題にアニメが巻き込まれるのは、日本の関係者は望んでいないどころかきっと大迷惑。
アニメに政治色がつくと、下手したら政府から何らかの「規制」がかかってしまうかもしれない。
でもそんな日本人の思惑もなんのその、アニメキャラの政治利用は世界各国でおこなわれている。
きょねん抗議デモで警官隊と衝突して多くの逮捕者を出したチリでは、「鬼滅の刃」の伊之助がデモ参加者のシンボルになって警察に“逮捕”された。
reminder that inosuke was a symbol of the protests in chile pic.twitter.com/3a9RZ3NEEl
— momo ✿ TWO ME LONS (@_RAYM0M0ND) December 23, 2019
アニメはアラブ世界でも人気でイエメンを旅行中、こんなスナック菓子を見つけた。
ボクがはじめてアニメの「政治利用」を見たのは、2006年にパレスチナ人がおこなった反イスラエルデモで、参加者が掲げるプラカードに人差し指を上げる涼宮ハルヒが描かれていた。
これはイスラエルの攻撃に対する抗議デモで、「イスラエルはこんな子どもを殺さないで!」という意味でハルヒが採用されたらしい。
それを海外メディアが記事にして、当時は世界的な話題になった。
くわしいことはこの記事を。
著作権の関係で画像を載せられないから「ハルヒ パレスチナデモ」で画像検索されたし。
個人的にはこの意外性が注意を引いて効果的と思ったけど、同じアラブ人のエジプト人に聞くと、どうもそうではない。
日本のアニメの大ファンというエジプト人はこう言う。
I’m not againest using anime but I think it’s not effective enough.
I thought every countries support Israel.
デモにハルヒを使うことには反対しないけど、効果的ではないと思う。
世界中の国がイスラエルを支持していると思った。
別のエジプト人の見方はこうだ。
You know…. Most of the major countries are on the side of Israel.
I am sad about this.
It is true that Japanese anime has become famous around the world, but those who do not know anything about Japanese anime or Japanese culture think that they are just children’s cartoons
ほとんどの主要国はイスラエル側に立っている。それが悲しい。
日本のアニメは世界中で有名になったのは事実だけど、日本のアニメや文化をまったく知らない人にとってはただの子供向けの漫画にしか見えないと思う。
2人ともシリアスな政治デモで、日本のアニメキャラを使うのはふさわしくないと考えている。
そのギャップが注目を集める効果がある一方で、言われてるとたしかに、タイやチリのデモも「かわいく」見えてしまって、「大したものではない」と誤解されるかもしれない。
『進撃の巨人』を全巻読破したと官房長官が言う国は世界的にはマレで、海外では「アニメや漫画は子供のもので、大人は関係ない」と思う国が多い。
アニメキャラの政治利用は世界の注目を集めるけど、政治意識の高い人には有効なアピールにはならないかも。
こちらの記事もいかがですか?
日本の「kawaii(かわいい)文化」!海外の反応は?由来は?
海外に広がる日本文化(国際化)③中国やタイで見たアニメ・相撲
旅㉘外国人が日本に興味をもつきっかけ:物からアニメやマンガへ
> 海外では「アニメや漫画は子供のもので、大人は関係ない」と思う国が多い。
ちょっと不正確な表現ではないですか。
アニメについては確かにそうだと思います。しかし、漫画(1コマ漫画)は政治的な風刺画にも使われることが多く、特にフランスや米国などでは新聞にも欠かさず登場する、大人向けのジャンルとして確立していますよ。
日本の劇画あるいはストーリー性のある漫画は、手塚治虫や石ノ森章太郎らの巨匠を嚆矢とするものですが、海外ではこれに相当するものはほぼ存在していないと思われます。
一般の漫画と政治家などを風刺する絵とは分けて考えたほうがいいです。