いまナイキのこのCMに対して、日本で大きな議論になっている。
ナイキ日本はこのCMの意図を「日常の苦しみやあつれきを乗り越え、スポーツを通じて自分たちの未来を動かす」と説明していて、それに賛同する人がいる一方、アメリカ企業が日本社会の人種差別をCMで取り上げたことに批判的な人も多く、いまネットで賛否が真っ二つに分かれている。
個人的には、日本人女性と結婚した知人のバングラデシュ人が、肌の色の違いで子供が学校でいじめにあって悲しい思いをしたという話を聞いたことがあるし、大阪で暮らす在日韓国人の後輩もいる。
だから、外国人やハーフへの偏見や差別はなくさないといけないというのは当然賛成としても、こういう形で企業がストレートに消費者に突き付けるとかえって反発が大きくなる気がする。
それに外国人でもハーフでも気にせず受け入れる日本人もいて、日本人によって傷つくこともあれば救われることあると思うのだけど、CMではそれがほぼ皆無。
まぁ日本は外国からの圧力(ガイアツ)がないと変わらない部分があるのは確かだけど、今回のやり方は日本人に合ったものかどうか。
それにしてもCMの作り方が本当にうまい。
ただ、日本は同調圧力が強く自殺率が高い、女性は二等市民として扱われている、と外国企業が日本の社会問題をCMで訴えるようになることが日常的になるのがいいこととも思えない。
*くわしくは前回の記事を。
アメリカのスターバックスが2015年に、人種差別をなくそうと「レース・トゥゲザー」というキャンペーンを行った。
バリスタが「Race(人種/民族) Together(共に)」と書かれたカップに客にわたして、多くの人が人種差別問題と向き合うことをねらったのだけど、大反発をくらってこの企画は大失敗に終わる。
どこの国でも人種差別はあって、そういうセンシティブな問題を取り上げるには細心の注意が必要だ。
さて、このナイキのCMを欧米人はどう見たか?
アメリカのワシントンポスト紙は、日本が単一民族国という「神話」が国民のアイデンティティの一部にあってそれが外国人、ハーフ、先住民といった人たちへの差別を助長していると書く。
ロイターも、日本は伝統的に単一民族であることを「誇っていた国」であることが、このCMへの激しい反発の背景になっていると指摘する。
これと違って、どちらかというとナイキに批判的な意見を載せているイギリスBBCの記事を見ていこう。(2020年12月2日)
米ナイキの多様性示す広告、日本で大きな反発 なぜ?
日本人とアメリカ人のハーフでニューヨーク出身のジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏は「多くの日本人は、外からやり方を変えろと言われるのが好きではない」と指摘し、「アジアの波に乗る 世界の新秩序の中でどう生き抜き繁栄するか」の著者スティーヴ・マクギネス氏はこのCMはナイキの「オウンゴール」と表現しこう言う。
「地域的な人種差別は、どんな文化でも繊細な話題だ。ナイキは、外国企業がその国の人種問題を指摘する立場にあると思うべきではない」
「ナイキは、多くの日本人が『立ち入り禁止』だと思っている場所に、露骨なスポットライトを当てた。これはナイキの大きなオウンゴールだ」
またブランド・アドバイザーで、アジア・ビジネスに関する著書も多いマーティン・ロール氏の見方はこうだ。
「アジアで活動する西側のブランドにとって最悪の敵は傲慢(ごうまん)さと慢心だ。アジアの消費者が持つ地元文化への誇りを過小評価している可能性がある」
前回の記事で紹介した、「西洋文明にいる人たちは他者の文化を批判して、自分たちの文化を押し付けるという不幸な歴史を持っている」という意見と重なる見方だ。
これと逆、日本企業が欧米で現地の人種差別取り上げて、日本製品を使ってそれを克服するというCMを公開したら、彼らは「よくやった!」と好意的に受け入れてくれるか?
それは難しいと思う。
ただ長期的に見れば、「ナイキの日本での売り上げは恐らく上がるだろう。この広告を嫌う人も結局、ナイキの商品を買うだろう」とロバートソン氏は言う。
結局のところ、これで人びとの意識が高まって、差別や偏見が減っていく方向に向かえばナイキのチャレンジは成功だったことになる。
現時点でもこれだけ大きな世界的な注目や関心を集めたのだから、ナイキの思惑通り進んでいるのでは。
投じられた一石はいま大きな波紋を呼んでいるところだけど、最終的にどんな形に落ち着くか見守っていよう。(トランプ風)
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>でも長期的に見れば、「ナイキの日本での売り上げは恐らく上がるだろう。この広告を嫌う人も結局、ナイキの商品を買うだろう」とロバートソン氏は言う。
私もその見解に賛同します。社会において注目を集めたという意味では、効果的なCMでした。
ですが、私自身は二度とナイキの製品を購入するつもりはありません。
米国で暮らした経験もあるので言いますが、日本に向かって説教する前に、自国内の同じ問題を何とかしろよ。
私は小学生の頃、「帰国子女」と
いう理由でイジメられ、耐えてい
ましたが、ついに我慢の限界を迎
え、取っ組み合いの喧嘩をした所、
教師が来て「喧嘩両成敗」と説教
された経験があります。そんな私
でも当該CMは不快極まりなかっ
たです。BLM運動も然り。この
ようなやり方は、また新たな差別
を生み出すことにしかなりません。
いじめを受けたバングラデシュ人のハーフの子には、助けてくれる日本人も多かったと聞きました。
その子はいまたくさんの日本人の友人と仲良く楽しく過ごしています。
今回のCMでもそういう部分を演出してほしかった。