正月休みが終わって本格的な仕事モードに入った1月7日に言うのもなんだが、12月25日はクリスマスだった。
このキリスト教文化はいまや地球規模のイベントになっていて、この日が近づくと、世界中のホテルやお店でいろいろな飾りやツリーが登場し、飲食店ではクリスマス仕様のコップが使われたりする。
「クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う日」という意味は万国共通だけど、その受け止め方や国や地域よってさまざま。
たとえば日本のクリスマスツリーは人工のものが一般的だけど、本場のアメリカやヨーロッパでは自然の木(生木)を使う。
マーケットでクリスマスツリーを購入する人たち(アメリカ)
日本や欧米でクリスマスは冬のイベントで雪のイメージが強いけれど、そのころ南半球では本格的な夏が始まっている。
だから前にオーストラリア人が、サーフィンをしているサンタクロースの写真をSNSに投稿していたのを見て地球の広さや多様性を感じたもんだ。
東ヨーロッパのリトアニア人とロシア人と冬に静岡の愛鷹山を登ったとき、上の景色を見て2人とも、「まさにクリスマス!」とよろこぶ。
でもこのときオーストラリアやニュージーランドでは、サンタクロースの赤い帽子をかぶった水着姿の人たちがビーチで海水浴を楽しんでいる。
同じクリスマスでも、その表現方法は場所によっていろいろ違う。
ということは知っていたのだが、クリスマスの日も国によって変わるということを知っておどろいた。
愛鷹山に登っているときにクリスマスの話題になって、カトリックの影響が強いリトアニアでは日本と同じく12月25日に祝うけれど、ロシアでは1月7日がクリスマスの日になっているという。
この理由はまず、ロシアで信仰されているキリスト教にある。
カトリックやプロテスタントとは一線を画すロシア正教会について、くわしいことはここをクリックですよ。
10世紀以前から既にドニエプル川流域にはキリスト教:正教会の伝道は行われていたが、988年のウラジーミル1世によるルーシ人の集団洗礼が一応、ロシア正教会の起点とされる事が多い。
もともとヨーロッパには「ユリウス暦」というカレンダーがあって、16世紀になると、太陽年との誤差を修正したグレゴリオ暦に変更された。
日本をふくめていま世界中で使われているのがグレゴリオ暦。
でも、ロシア正教会やセルビア正教会では古いユリウス暦を使っているから、クリスマスの日もずれてグレゴリオ暦の1月7日(ユリウス暦の12月25日)になっている。
これを東アジアに当てはめてみると、正月を西暦(太陽暦)の1月1日に祝う日本に対して、中国・ベトナム・韓国・台湾では旧暦(太陰暦)の1月1日に祝うようなもの。
旧暦は1か月ほどずれるから、いまの1月下旬や2月上旬に、これらの国や地域では正月を迎えることになる。
日本も江戸時代まではそうだったけど、明治政府になって「脱亜入欧」し、西暦を取り入れて正月を移動した結果、東アジアの例外となった。
日本でクリスマスは12月25日に終了して、街や店の飾りは撤収されて間髪入れず、正月モードに突入する。
でも欧米では、1月6日の公現祭(こうげんさい:3人の賢者がイエス・キリストの誕生を祝福した日)までがクリスマスで、その日のあたりにツリーを片づける人が多い。
くわしいことはこの記事をプリーズ。
だから日本では2週間ほど前、アメリカ・ドイツ・オーストラリアなどではクリスマスが終わった翌日、ロシアではクリスマス本番を迎えるのだ。
ロシアに住んでいるある日本人がブログに、現地での年末のあいさつは「Merry Christmas and Happy new year」じゃなくて、「新年とクリスマスおめでとう」と順番が逆になると書いている。
さらにいうとロシアのクリスマスではサンタクロースの代わりに、青い服を着た「ジェド・マロース」というキャラが登場する。
ジェド(おじいさん)とマロース(寒波)がくっついた「ジェド・マロース」はロシアの民間伝承に出てくる霜の精らしい。
ネットを見るとこのロシア版サンタクロース、ジェド・マロースには「厳寒おじいさん」という日本語訳が当てられている。
日本や欧米と違ってロシアのクリスマスでは、このおじいさんが孫娘のスネグーラチカ(雪娘)というキャラを連れて現れるという。
この女の子がソリに乗ってみんなにプレゼントを配るというから、その間、ジェド・マロースはどこで何をしているのか。
飛べない豚はただの豚のように、プレゼントを配らないサンタクロースなら日本での需要は見込めない。
でもとにかく世界は本当に広くて、いろいろなクリスマスがある。
ジェド・マロースとスネグーラチカ
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数ある正教会のうち最大派であり、ロシアは面積的には大国ですから、まあ、「ロシア正教会」でも概略としては間違いではないですが。ギリシャ正教会、その他東欧諸国の正教会を完全無視した名称で呼ぶのはいかがなものでしょうか。ここはやはり、「東方正教会(オリエンタル・オーソドックス)」という単語でまとめる方が正解では。
何てったって、(キリスト教を国教としていた)ローマ帝国の東西分裂後にも、西側に比べて1,000年も生きながらえた「東ローマ帝国」の流れを汲むキリスト教ですし。また、ロシア正教は、かつてのソ連時代には社会主義政府から存続を否定され、一時はほぼ「非合法な地下宗教」と化していたようなものです。
なお、そのように弾圧されていたソ連時代のロシア正教を再び認めたのは最後の書記長「ミハイル・ゴルバチョフ」でした。彼は、ソ連を代表する書記長でありながら、自らキリスト教徒であることを公言し、そのことによって、固く閉ざされていた西側との対話の扉を開いたのです。ただ結果的には、そのことが「ソ連崩壊」を招くことにつながったのですが。
ギリシャ正教会やブルガリア正教会などでは12月25日にクリスマスを祝いますし、ロシア正教会とはいろいろ違います。
ここでは正確性を重視しました。
> ロシア正教会やセルビア正教会では古いユリウス暦を使っているから、クリスマスの日もずれてグレゴリオ暦の1月7日(ユリウス暦の12月25日)になっている。
なるほど、多数ある東方正教会グループのうち、1月7日にクリスマスを祝うのは、(主に)ロシア正教会であると。それならば理解しました。