「くしゃみ」の語源は、死を防ぐための呪文だった

 

新型コロナの感染拡大にまったく歯止めがかかんない。
そんななか用事があって電車に乗っていると、停車駅で、マスクをしていないおっさんが入ってくる。
それだけでも非常識なのに、席に座って「ハックション!」と大きなくしゃみをするから、まわりの乗客は距離を置いて静かににらんでいた。

 

静岡も「エヴァ風」をやってほしい。
マスクとはATフィールドだったか。

 

ところで、この「くしゃみ」という生理現象の語源はご存じだろうか。
毎日新聞のコラム「余禄」がその由来について書いている。(2021年1月20日)

昔はくしゃみをすると鼻から魂が抜け出して死ぬといわれた。もともと「くさめ」とはそれを止める呪文(じゅもん)だったという

くしゃみは俳句では「くさめ」…

 

「ハックション!」とすると、その勢いで魂が抜け出てしまうと古代の日本人は信じていた。
いまとなってはアニメの世界のようだが、そのころの日本人はくしゃみをすると「死ぬ!」「寿命が縮まる!」と厄災を本気で怖がっていたらしい。
それですぐに「くさめ(嚔)!」という呪文を唱えて魂が抜け出ないようにした。

いろんな魔除けもそうだけど、恐怖心は文化をうむという好事例。
「たまげる」を漢字で書くと「魂消る」となるように、魂がなくなることを日本人は伝統的に身近に感じていたのだろうか。

とにかくそうやって、死を避けるため使っていた「くさめ」ということば(呪文)が語源になって、いつの時代か「くしゃみ」になって現在にいたる。
それで俳句ではくしゃみは「くさめ」、歌舞伎や狂言では「くっさめ」という古いことばを使っている。

「くさめ」の由来には「休息万命(くそくまんみょう)」や、「糞食らえ」の意味の「糞食め(くそはめ)」が縮まったものといった説がある。
ちなみに中国語ではいまでも「嚔」の漢字を使っているとか。

 

 

「くさめ」はあくまで魂を体内にとどめるための呪文で、昔の日本でくしゃみをするという行為は「鼻ひる」と言った。
「放る(ひる)」とは体の外へ排出・発散することで、「おならをする」を下品に「屁をひる」なんて表現することもある。いまではないかな?

平安時代に清少納言が書いた『枕草子』に「鼻ひる」という表現が出てくる。

「鼻ひて誦文する。おほかた、人の家の男主ならでは、高く鼻ひたる、いとにくし」
(くしゃみをして呪文を唱える。大体、一家の男主人でもないのに、声高にくしゃみをするのは、本当に好きでない)
*この呪文はもちろん「くさめ」のこと。

同じ平安時代の『源氏物語』にも、「鼻をいと高うひたれば、『あな、心憂』」(とても大きなくしゃみをしたので、「ああ、いやなことだ」)という文がある。
こんな感じに、くしゃみをしたらすぐに「くさめ!」と呪文を唱えることは、昔の日本では一般的にあったのだろう。
これは多分くしゃみとは関係ないけど、鎌倉時代の随筆『徒然草』にも、尼さんが子供の延命を願って「くさめ、くさめ」と唱える場面がある。

 

くしゃみをすると、魂が抜け出さないように「くさめ」と呪文を唱えていたのが古代の日本人。
その迷信深さがいまとなっては面白い。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。