前回、毎日新聞のこんな記事を紹介しましたよ。
広島お好み焼き、世界制覇へ一歩 オタフクソースがイスラム教徒に受けた理由
今回はここにある「覇者」という言葉をとり上げて、その歴史や意味について書いていこうと思う。
日本で覇者といえば、北斗の拳に出てくるラオウが自称した「世紀末覇者拳王」が有名だ。
乱れた世の中を圧倒的な力で統一しようとラオウは覇道を選ぶ。
アニメ「ペルソナ」の新島真のあだな「世紀末覇者先輩」の元ネタもきっとラオウに違いない。
でも、いまでは覇者=ラオウという考え方は古いらしくて、ネットで「覇者」を検索するとモンストの「覇者の塔」ばかり出てくる。
アニメやゲームでよく使われる「覇者」という言葉。
中二病の心をくすぐるこのワードはいつどこで、どうやって生まれたのか?
漢字なのだから、「覇者」が中国語というのは想像できるはず。
生まれた時代は気が遠くなるほど古く、春秋時代(紀元前770年~紀元前5世紀の約320年間)にさかのぼる。
この時代、周王朝は弱体化して権威をなくしていき、中国の各地に独立状態で領地を治める諸侯があらわれた。
日本史でたとえるなら、室町幕府の影響力がなくなっていって全国に戦国大名が登場した戦国時代だ。
そもそも「戦国時代」という言葉は、秩序が崩壊して乱れまくった世の中を当時の公家が中国の「春秋戦国時代」になぞらえて「戦国の世」と表現したことに由来する。
春秋時代、200以上もいた諸侯は日本の戦国大名のように戦いをくり広げていた。
その中で特に強大な力をもって周辺の異民族を打ち払ったり、他国との争いをまとめるリーダー的な人物が現れ、そんな存在を人々は「覇者」と呼んだ。
時代とともに言葉の意味も変化していき、やがて武力で周辺国を支配する人間が「覇者」となった。
立派な徳をもった君主が国を治めることを「王道」といい、それに対して武力で国を治めることを「覇道」という。
曹操や織田信長は覇道の人で、いまの日本人の「覇者」のイメージはこれだろう。
だから「広島お好み焼き、世界制覇へ一歩」という場合は武力ではなく味で人々の心を掌握するから、その道のりは覇道ではなくて王道になる。
日本では弥生時代、紀元前7世紀の中国には次の5人の覇者(五覇)がいた。
*だれを五覇とするかは資料によって違う。
斉の桓公、晋の文公、秦の穆公、宋の襄公、楚の荘王
秦の始皇帝の墓(兵馬俑)
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個人的には信長さんが覇者かと言われればまあ、否定はしませんが、同時代の連中なんて全員が覇者ですよ。信長さんだけ特別に覇者扱いされていることは納得できませんね。(強い言葉
覇者、いいじゃないですか。最近のスターウォーズシリーズも、まさに覇者の栄華と衰亡を描いた物語です。
覇道であろうと王道であろうと、世界を制覇して政治的・経済的な混乱を収めることは、偉大な行為です。
パクス・ロマーナは1日で成るものじゃない。
覇者であるには他を圧倒するような力が必要で、そんな武力があって天下統一に近い人物は信長と思っただけです。
このへんは主観ですから、人によって違うでしょうね。
覇者はいいですよ。
むかしの儒教的な考え方からするとダメですけどね。
そんな人間は簡単には出てこないし、ドラマや人生の参考になります。