和製漢語:日本由来の言葉がないと、中国人は思考もできない!

 

漢字は中国から伝わった文字、ということを知らない日本人はいない。
でも、「中華人民共和国」という国名の7割が“日本語”ということを知っている人は、どれぐらいいるのだろう?
この中で純粋な中国漢語は「中華」だけ。
あとの「人民」と「共和国」は日本人が考案した日本漢語なのだ。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

「中華人民共和国」の7割は“日本語”。日本から伝わった言葉とは?

「新しい国名に日本語ばっかじゃん」と、当時の中国共産党も悩んだらしい。
韓国紙・中央日報のコラムにこう書いてある。(2001年07月05日)

共産主義の理念を具現する人民の国家という意味を盛り込まなければならないが、漢字でできた近代的な概念語の大半が日本製だったからだ。特別な代案もなかったために、結局自尊心を捨てて「中華人民共和国」と定めたわけだ。

造語後進国

 

国名からしてこうなのだから、いまの中国で日本由来の言葉は本当にたくさんある。
それで中国メディア「今日頭条」が「日本からの外来語を使わなければ中国人は思考停止に陥ってしまう」とする記事を載せている。

サーチナの記事(2019-07-23)

【文化】日本から導入した外来語を排除したら、中国人は思考が停止してしまう!

古代では言葉は中国から日本に伝わったけど、近代では日本から中国に伝わっている。
たとえば政治、経済、文化、革命、階級、社会主義、資本主義といった言葉がそうだ。
こうした言葉は幕末・明治の日本人が外国語を翻訳したもので、現在の中国人もよく使っている。

では、日本から中国へというこの逆転現象はどうして起きたのか?

「今日頭条」の分析によると、中国人が翻訳した言葉より「すぐれていた」からだ。

日本の翻訳があまりに適切でうまく意味を伝えていたため、中国が翻訳した単語は「生存競争」で敗れたと分析した。

 

その一例として「電話」をあげている。
英語の「telephone」を「電話」と訳したのはもちろん日本人で、中国人は「徳律風」と訳していた。
中国では一時期、「電話」と「徳律風」の両方が使われていたけど、そのうち後者が消えて「電話」が生き残った。

「徳律風」のほうが相撲の四股名みたいで強そうだけど、実際に勝ったのは日本語の「電話」のほう。
適切な訳語には「音、形、意味」の3要素が必要で、日本人による訳語は「中国の文字、日本の音、西洋の意味」がバランスよくそろっていたという。

「特別な代案もなかったために」という中国共産党の悩みを思い出してほしい。
「人民」「共和国」に代わるいい言葉が思い浮かばなかったのだ。
それで「7割日本語」という国名になってしまった。

「中二病」、「超」、「達人」といったわりと新しい日本語も中国に伝わって、いまでは普通の中国語になっている。
そういえば日本語を話せる台湾人が「超すごいです」「超おいしいです」と、やたらと超をつけていたのが気になったけど、台湾でも「超」は一般的な言葉になっているらしい。

 

この記事にネットの反応は?

・「達人」が日本からの外来語だったなんて… 中国拳法の達人とかなんやったんや!老師か?
・telephone→電話、は絶妙だな
・まぁ中国から多くを教わったお返しです
・中国語でもshampooが香波(シアンポー)とか上手いこと言おうとしている
・そういえば中国人に日本語で作成された資料見せたら、これ日本語か?って驚いてたわ
結構同じ漢字の組み合わせあるみたいだな

 

コカコーラの漢字のチョイスはいいと思う。
他にもテレビを「電視台」、コンピューターを「電脳」と訳したのもいいセンスだと思った。

 

中国人の日本語ガイドなら、いまの中国語のなかで、日本から伝わった言葉がどれほど多くあるかがわかる。
中国旅行でお世話になったおっさんのガイドは、「幹部」と「共産」という言葉が日本人による和製漢語と知って衝撃を受けたという。
共産はコミュニズムを「公共が産業を行う」と日本人が訳したことから作られた言葉だ。

きのうの記事で出てきた「経済」という言葉も、日本人がエコノミーを漢字であらわしたもの。
ただ「経済」という言葉自体をつくったのは中国人で、1500年以上まえの古典にこの言葉が登場している。
意味はエコノミーとは違って、「経世済民(世の中を治め、人民を救う)」ということ。

日本由来の和製漢語はこれほどたくさんある。

国債、特権、平時、戦時、民主、野蛮、越権、慣行、共用、私権、実権、主権、上告、例外、文化、文明、民族、思想、法律、経済、資本、階級、警察、分配、宗教、哲学、理性、感性、意識、主観、客観、科学、物理、化学、分子、原子、質量、固体、時間、空間、理論、文学、電話、美術、喜劇、悲劇、社会主義…

「日本から導入した外来語を排除したら、中国人は思考が停止してしまう!」と中国メディアがいうのも納得だ。

和製漢語についてもっと知りたい人はここをクリック。

和製漢語

 

カタカナがないから、とにかく漢字にしないといけない。

 

おまけ

中国の古い街の様子

 

 

こちらの記事もいかがですか?

中国 「目次」

読めない!日本人のアナウンサーや首相が間違えた難漢字!?

今の韓国人は漢字をどう思う?漢字を読めないハングル世代はいつから?

韓国のソウルを漢字で書けない理由:漢城?京都?首爾(首尔)?

外国人「独とか蒙古って漢字は差別だろ?」、日本人「えっ?」

 

2 件のコメント

  • 欧米語からの翻訳語として、日本製漢語の方が中国製漢語よりも優れていた理由として、「翻訳した人のセンスが良かった」ということもあるかもしれません。でも、最も大きな理由としては、欧米の文明・文化を学ぼうとする姿勢の「真剣さ」に違いがあったのではないでしょうか。
    清国が海外へ門戸を開いたのと明治の世が始まったのはほぼ同時期でしたが、中国人に比べて、日本人は「一刻も早く欧米に追いつく必要がある、でなければ植民地としていいように蹂躙されてしまう」という危機感で、明治の先人たちの頭の中は占められていたのだろうと思います。その危機感が、それまでは世界をリードしていた先進文明国の一つであった中国人には欠けていたのです。
    必然的に、「より適切で感覚的に馴染み易い翻訳語」を考案し、それを使った翻訳書も一気に大量に出版され、利用されたと思います。その必死の努力の差が、言語の翻訳という分野でも成果の違いとなって現れたのでしょう。

  • >清国が海外へ門戸を開いたのと明治の世が始まったのはほぼ同時期でした
    これはまさにそのとおりで、原文の記事にも書いてありました。
    それに当時の清は欧米より文明や文化では上を行っていたと考えていましたから、真剣に学ぼうという気に欠けていたでしょうね。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。