戦争とサマータイム:米国人が話す日本での経験と長所・短所

 

やってしまったヘタ打った。
先週の土曜日にアメリカ人とスカイプで話す約束をしていて、その当日、予定時刻(朝10時30分)の1時間ほどまえに「いまからスカイプ大丈夫?」という連絡がきた。

「いやいや。まだ早いよね。いまガストでモーニングの最中なんだが?」と返事をすると、「いやいやいや。約束は9時30分のはず」と言う。
チェックしてみるとその通り。
いつもは10時30分にしていたけど、次回のときにはアメリカでサマータイム(夏時間)が始まっているから9時30分にしよう、と前回言ったことをすっかり忘れていた。

*2021年のアメリカのサマータイムは3月14日~11月7日まで。
ドイツでは3月28日から。

夏と冬では太陽が出ている時間が違うから、昼の長さに合わせて時間を1時間進めるというのがサマータイム。
くわしいことは夏時間を見てほしい。
現在このシステムはおもに欧米で採用されている。

 

サマータイムとウィンタータイムがあると、ごちゃごちゃして面倒くさくないか?
とボクは思うのだが、日本に住んでいたことのあるそのアメリカ人に言わせると、サマータイムは人間が太陽に合わせたもので生活はより自然になる。
でも実際のところ、サマータイムに大したメリットはないから、個人的にはあってもなくてもどっちもでいいらしい。

あえて良いところを挙げるとこんな感じだ。

日本で冬だと16時半には暗くなり始めるのに、夏の16時半はまだまだ明るい。だから1時間遅らせると違和感がなくなる。
それに夏は太陽が早く上がるから、朝の陽ざしや温度で早く目覚めてしまう。だから冬は1時間早めたほうがいい。

このへんの感覚はサマータイムを経験したことのないボクにはわからん。

 

ボクがヘタを打った原因となったサマータイムは、もともとは「戦争のため」に導入されたものだった。

これを初めて採用した国は、第一次世界大戦中のドイツ(1916年4月30日~10月1日)とイギリス(1916年5月21日~10月1日)。
日照時間の長い夏に時間を早くすると、それだけ照明の必要がなくなり節電効果につながる。
そしてその分の電力を、”勝利”のために使うことができるようになる。
アメリカでもそんな省エネ目的で1918年と1919年に導入してみたけれど、国民には大不評で廃止された。がそのあと第二次世界大戦中に、節電を目的に復活して現在まで続く。
ドイツも一度は廃止したものの、オイルショックを受けて1980年にサマータイムを再開した。

 

日本も一度、太平洋戦争が終わった直後にサマータイムが導入された。
1948年(昭和23年)5月2日~9月11日にかけてGHQの指導下で実施されたものの、残業が増えたり寝不足になったりと日本人にはどうしてもなじまなかったから、占領が終わって主権が回復するとこの『夏時刻法』はすぐに廃止される。

 

幻の夏時間はサンマータイムと呼ばれていた。

 

アメリカ人にサマータイムのデメリットをたずねると、冬時間から切り替わるときに交通事故がよく起こることと、心臓発作の増加がよく指摘されているという。
いつもより1時間早く起きて、寝不足のままハンドルを握るからミスが多くなるらしい。

電気機器や時計の針を変えるのも面倒だし、そもそもいまは戦時中ではなく、サマータイムの導入は省エネにはつながらないということで、このシステムの廃止を求める声は欧米でも以前からよくあった。
それでヨーロッパでは2021年のサマータイムが最後ときめられた。
はずだったのに、コロナ対応で忙しくて手続きが進んでいない。

朝日新聞の記事(2021年3月27日)

これで最後?EUが夏時間へ 廃止検討するも議論進まず

いまは国境なんて無意味のネット空間で、世界中の人が気軽につながる時代なんだから、こんな不便なものははよ消えてほしい。

 

 

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1 個のコメント

  • サマータイムですか。よくもまあ、こんなめんどくさいことを。
    その昔、日本がまだ不定時法(夜明けを「明け六つ」、日暮れを「暮れ六つ」として、その間を12等分する時制)だった頃、南蛮渡来の時計を日本の不定時制に合わせられるよう改良しようと時計職人達がものすごく苦労して、どうしても実現できなかったのですが、天才・織田信長がひとこと「そんなもん、季節によって文字盤を交換すりゃ簡単にできるがや」と解決してしまったそうです。(実話かどうか知りませんけど、「下天は夢か」からの孫引きです。)
    欧米人もきっと、サマータイムを自動調整する時計が欲しかったことでしょうね。でもそれだと、自動調整できる時計とできない時計が混在するので、ややこしくてしょうがない気もするが・・・。

    ところで昔、私が北米に住んでいた頃ですが、彼らはみな Daylight saving time と表現してました。Summer time という言い方は、知ってはいたが、現地ではぜんぜん聞いたことがなかったです。
    なので、最初その単語を聞いた時には、「もしかして昼間に銀行へ行って貯金すると、利子を優遇する制度でもあるのか?」と誤解しちゃいました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。