処理水放出にみる韓国のネロナムブル:悪いのは日本だけ

 

オレはいいけどオマエはダメ。
ジャイアンが言いそうな、自分を特別扱いする二重基準を韓国語で「ネロナムブル」という。

このまえのソウル市長選挙では、国民には『反日不買』を強調しておきながら、自分は東京で家を買っていたことがバレた与党の候補者が惨敗した。
くわしいことは前回のこの記事を。

世界語になった韓国語:プルコギにキムチ、そしてネロナムブル

二重基準を表す「ネロナムブル」には韓国独特の価値観や考え方が込められている。
だから英語にすることはできないという。
あえて言うなら「ダブルスタンダード」だけど、でもそれだとアメリカ人はかえって誤解するらしく、ニューヨークタイムズ紙は「naeronambul」という韓国語をそのまま使った。

日本語ではよく「二重基準」と訳される「ネロナムブル」の概念は日本の社会にはなさそう。
だから、この言葉の意味がいまいちピンとこなくても仕方ない。
でもいま韓国が日本にしていることを知れば、「ネロナムブル」の意味がすこしは実感できるはずだ。
それをこれから見ていこう。

 

福島原発から出る放射能汚染水を国際基準をクリアした安全な処理水に変えて、2年後に海へ放出すると日本政府が発表した。

国際原子力機関もOKを出したこの措置に対する隣国の全国紙の見出しがこれ。

中央日報日本語版の記事(2021.04.13)

韓国政府、日本の汚染水放出に「一方的決定…あらゆる措置取る」

東亜日報の記事(2021/04/15)

文大統領、日本の汚染水放出で「国際海洋法裁判所への提訴検討」を指示

ハンギョレ新聞のコラム(2021-04-16)

[コラム]福島第一原発の汚染水、「反日」ではなく世界の問題だ

 

では次に日本の反応、FNNソウル支局・熱海吉和氏の解説を見てみようか。(2021年4月14日)

【解説】処理水放出になぜ反発? 韓国の「反日プロパガンダ」と「健康志向」

日本が放出する処理水には放射性物質のトリチウムが含まれている。
でもこの毒性は弱いため、世界中の原子力施設から海や大気に排出されているのが現状だ。

例えばカナダのブルース原発では1年間で1971兆ベクレル、フランスのラ・アーグ再処理施設からは年間1京3700兆ベクレルが放出されている。
韓国の月城原発からは約136兆ベクレル(2016年)のトリチウムが出ている。

日本はどうなのか?
福島原発から出る処理水のトリチウムは年間22兆ベクレルと想定されているから、誤差があったとしても、カナダ・フランス・韓国に比べれば、危険性はケタ違いに少ない。
もちろんこれらすべての国は、国際原子力機関の定める基準を満たしたうえで排出しているから問題はない。実際、韓国の月城原発周辺で人体や環境への重大な影響は報告されていない。
トリチウムだけが問題ではないが、それを含めて福島原発から出る処理水については、国際原子力機関がOKを出している。

韓国より安全な処理水であるにもかかわらず、FNNの解説によると韓国最大の通信社「聯合ニュース」はこう報じた。

「体内で被爆を引き起こす」「生殖機能低下など人体に損傷を来す」など恐怖を煽る記述のみで、トリチウムの放射線は紙1枚も透過出来ないほど弱いこと、体内に入ってもすぐに排出されること、韓国含め世界中の原子力発現所から日常的に自然界に放出されるほど安全なことなどは一切触れられていない。

 

現在進行形で月城原発が、福島原発以上の“汚染水”を出しているのにそれは完全スルー。
フランスもカナダも無視して日本だけをたたく。

韓国ではいま「健康志向」の人が増えているから、日本に怒りや不満をそらすために政府・メディアが行っている「反日プロパガンダ」はかなり効果的のようだ。
ここまで露骨で悪質、さらに厚顔無恥な二重基準を表す言葉は日本語や英語にはなく、「ネロナムブル」としか表現できないだろう。
自分たちが流しているのは「処理水」、でも日本が流すのは「汚染水」と表現したとしてももう驚かんわ。

「反日感情を利用して感情的になり、事実とは異なる内容で放射能問題を取り上げることがあってはならない」という熱海吉和氏の訴えが、ネロナムブルの壁をぶち破るのはむずかしそうだ。

それまで問題ないと言っていた韓国メディアが、突然手のひら返しをしたのは2年前のあの夏。

FNNオンラインの記事(2021年4月15日)

こうした「福島沖の放射性物質は韓国に影響しない」との報道がガラリと変わった瞬間がある。2019年7月の日本政府による輸出管理強化だ。

「影響なし」が突然「危険」に…原発処理水を反日政治利用した韓国にブーメラン

 

ただしこれは諸刃の剣。
日本が放出する“危険な汚染水”を非難すると、実はそれ以上のモノを流している韓国にブーメランが返ってくる。
専門家ほどその未来が見えるから、韓国科学技術院の原子力・量子工学科のチョン教授は政府やメディアの反日扇動にブレーキをかけた。

中央日報日本語版の記事(2021.04.16)

韓国教授「汚染水の危険だけを強調すれば負け試合に…放出後は共同監視を」

量にもよるだろうが、トリチウムは人体に特に危険ではないと、英国の健康保護局やカナダの原子力規制委員会がすでに結論を出したとチョン・ヨンフン教授は指摘。
そういえば最近ではトリチウムを取り上げず、別の物資に注目する『論点ずらし』が始まった気がする。
でもそれ以前に、一体いつの間に韓日戦になっていたのか。

 

韓日関係改善のための努力は惜しまない!と言う文大統領は先月の演説で、『易地思之(相手の立場で考えること)』の重要性を日本に強調した。
でも日本が韓国と同じこと(実際はそれ以下)をすると、国際海洋法裁判所への提訴をチラつかせるのだから、やっぱり人物が韓国ネロナムブル界のラスボスだ。
ついでにフランスとカナダも訴えればいい。
韓国政府は「国民の健康と安全を最優先にする」と強調し、日本に対しては「あらゆる措置取る」と言う。それならまずは月城原発のトリチウム放出を止めるべき。
文政権はいろいろとすごい。

 

 

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1 個のコメント

  • ソウル大の教授すら意味不明でデータを読み取れない。
    これで日本と関係を改善しようとか。
    不買運動?どうぞうぞうぞという感じ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。