フランス語になった日本語。『タタミゼ』ってどんな意味?

 

新型コロナ対策としてフランス人が注目したのは、日本人の生活様式だった。
外出するときにはマスクを着ける、靴を脱いで家に入る、つばを飛ばすような熱い議論をしないで静かに話す。
フランスではそんな日本人の行動が高く評価されて、それを採用する人が増えたという記事を最近書いたわけだ。

【ホルホル】コロナ禍のフランスで、日本人の評価が急上昇

 

この記事を書いているときに「タタミゼ(タタミーゼ)」という言葉を発見。
「tatamiser」というフランス語を直訳すると「畳のようになる、畳化する」といった意味と思われるが、これで「〜を日本人化する、させる」といった動詞になる。
「畳の上の暮らし」というニュアンスで「tatamiser」を使い、椅子ではなくて床の上に座るといった日本人の生活スタイルや、畳などの日本文化を家に取り入れることを「タタミゼ」と言うようだ。

動詞に「ゼ(ーゼ)」を付けて新しい言葉にすることは日本語でもある。
東京都港区の高級住宅地・白金(白金台)に住む女性を「シロガネーゼ」と呼ぶのと同じ発想だ。
もともとあそこは大量の銀(しろかね)を持っていた白金長者の柳下上総介が由来になっているから、まさに『選ばれた者が住む地』ではある。
フランス語の城(シャトー:Château)とブドウ(レザン:Raisins)を合わせた「シャトレーゼ(ぶどうの城)」の「ゼ」も同じかもしれない。

*あとから「シロガネーゼ」は日本語とイタリア語の造語ということが発覚。フランス語は関係ナカッタ。
でも、マメ知識として載せときます。

これが逆輸入されて大阪には「TATAMISER」という畳の会社があるし、「タタミゼ」というフレンチレストランが福岡にある。

 

ではこの言葉は、いまのフランス社会でどのように使われているのか?
フランス在住の日本人にきいてみたので、以下、そのコメントを載せよう。

・80年代のフランスでよく聞いたのはタタミとサケ。
タタミは日本の象徴のように思われていて、「日本文化の影響を受けて日本的になる」という意味の「se tatamiser」という動詞があると聞いた。もっとも、一般的には使用されていない。

・35年ほど前にパリっ子の間で畳がブームになっていて、そんな人たちをタタミゼと呼ぶと雑誌に書いてあったのを思い出しました。

・tatamiser や tatamiséは80年~90年代のはじめごろに、日本に住んでいるフランス人や日本に関心のあるフランス人の間で使われていたと思います。でもあまり広まらず、いまの若い世代はほとんど知らないのでは。

・昔の記憶ですが、生活様式やインテリア、家具についてポジティブな意味で使われることが多かったと思います。

・当時とても人気のあったジュリー=ドレフュスが古い日本家屋に住んでいて、雑誌で「タタミゼ」の代表的存在のように取り上げられていました。

・「無批判な日本好き」のようなフランス人に対して皮肉でよく使います。

・私が聞いた話では、日本に長く住んでいたフランス人が日本風のライフスタイルを取り入れたり、日本人のような考え方になって、それをタタミゼ(名詞、動詞)と言っていた。
ちなみにフランス化した日本人は「バゲティゼ(バゲット=フランスパン)」と言います。

 

ということで「タタミゼ」は基本的には過去の言葉のようだ。
この言葉が使われていたのは、フランス社会で日本に「東洋の神秘の国」といったイメージがあったころと言う人もいた。
最近のフランスではアニメやコスプレなどの「kawaii文化」が人気だから、ちょうど「タタミゼ」と入れ替わったようなものか。
ただネットで見たサイトでは、日本文化を紹介するフランス人を「タタミゼ」と呼んでいたから、完全になくなったというわけでもない。
(文化や国際政治など特定の分野では現役らしい)

 

「自分の意見をハッキリ言わなくなった。以前よりおとなしくなった」といったニュアンスで「タタミゼ(日本人のようになった)」と言うこともあるらしい。
これはマイナスのように聞こえるけど、ある在仏日本人に言わせると、フランス人には頭が固くて、自己中で理屈っぽい面がある。だから、日本語を学んで性格が丸くなったり、態度が穏やかになるのは良いことだ。
これはタタミゼ効果か。

 

 

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2 件のコメント

  • > あとから「シロガネーゼ」は日本語とイタリア語の造語ということが発覚。フランス語は関係ナカッタ。

    ええと、確かに「シロガネーゼ」は日本人編集者がイタリア語の「ミラネーゼ(ミラノっ子)」を真似て作った造語ですから、その由来においてはフランス語は関係ありません。ただし、イタリア語もフランス語も同じ「ラテン系言語(ロマンス諸語)」に属する言葉ですから、語尾の「~ゼ」あるいは(上げ調子で)「~ゼィ!」という表現は、どちらの言語でも同じような意味に使われているのだと思いますよ。

    ただし、フランス語の「パリっ子」は男性名詞なので「パリジャン」なのですけどね。意外と男女差別的?

  • ところで、「タタミゼ(=タタミ化する)」という単語は、もはや日本マニアの外国人たちの間で「常識的単語」となりつつあるそうですよ。

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