らしい
3度目の緊急事態宣言が出てから、きょう5月2日で1週間となった。
が大阪では5月1日の新型コロナ感染者は1262人と過去最高を更新し、41人の死者を出して感染拡大がまったく止まんない。
関西圏での10万人あたりの新規感染者は、首都圏の3倍超だ。
この事態に厚生労働省関係者は「異次元の状況です。関西圏ではわが国が経験したことのない最悪の状態に突入しています」と絶句。
東京や他の地域でも感染拡大にストップをかけられず、危機的状況は続いている。
北海道では5月2日の新規感染者数が過去最多の326人、札幌市は246人でこれまた過去最多。
緊急事態宣言の期間は5月11日までだけど、まず間違いなく延長される。
でも、“沈みゆく日本丸”とは対照的な国が海外にはあるらしい。
毎日新聞の記事(2021/5/2)
屋外でマスク不要のイスラエル 市民に笑顔…一方、政府は警戒感
いまのイスラエルは日本の正反対。
屋外でのマスク着用が不要となってから、2日で2週間がすぎたという。
「外でマスクをせず、友達と話すのが楽しい。やっと解放された感じ」とよろこぶ市民がいる一方、気の緩みすぎを警戒している状況だとか。
でも全体としては人出はコロナ前にほぼ戻ったというから、うらやましいこと山のごとし。
アメリカも同じく街がにぎやかになって、経済は上がり調子だ。
GDPの水準はコロナ危機直前の99%にまで回復したし、雇用拡大も進んでいる。
レストランの予約サイトによれば、4月になってからの予約数はコロナ前の9割ほどまで回復する日も多い。
ゴールデンウイークは“自宅待機”を命じられたような日本人からすると「異次元の状況」だ。
どうして差がついたのか…慢心、環境の違い。
この決定的な違いはワクチンの接種率で、さらにその背後には“国民性”がある。
イスラエルは昨年12月からワクチン接種を始めて、2回目の接種をした人は50%を超え、アメリカでも人口の約40%が接種を受けた。
ワクチン接種が進んでいるイギリスでも感染者は大幅に減っていて、ことしの夏ごろには経済を正常化させたいと考えているという。
それに対して日本の接種率は1.3%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国(37カ国)のなかでダントツのビリ。
イスラエルのように、国民が「やっと解放された感じ」と言える日は一体いつ?
こんな日本の現状を見て、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄は東洋経済オンラインで、お先真っ暗な記事を書く。(2021/05/02)
日本のワクチン接種の状況が世界の趨勢に比べて大きく遅れていることは、最近ようやく認識され始めた。
しかし、そのことがコロナ感染状況に上述のように大きな影響を与えていることは、あまり知られていない。「ワクチン敗戦国」日本が絶望的に後れる惨状
この状況を不思議に思う外国人は多いようで、個人的にも「日本政府は『五輪を開催する!』とアピールしているのに、なんで接種がこんなに遅いのか?」とアメリカ人とドイツ人から質問された。
ネットでも日本の進捗状況に関心が集まっている。
・フランスドイツにも置いていかれたな
・早く接種したらしたで、ほんの少数の死者やら副反応を大げさに取り上げて叩くんだろうな
・ワクチン接種が遅れて死んだ人も数多くいるわけで
家族はやり切れんだろうな。
・日本人はワクチンの副作用ゼロじゃないと納得しないから仕方ないよ
・先生、たられば論は、学生でもできます。
・ワクチン打てば経済回せるのは事実ですわ
ワクチン接種が“絶望的に”遅れた理由については2月に、NHKがこう報じていた。(2021年2月18日)
日本国内では、海外メーカーのワクチンについても、法律に基づいた手続きで小規模ながら臨床試験が行われ、日本人でも安全性と有効性が確保できるか、慎重に確認が行われました。
【ワクチン接種】世界の状況は? 日本が遅れた背景はどこに?
ワクチンを切り札と考えて、その接種を早めるために国内での臨床試験を行わず、海外でのデータをもって承認する国があった一方、安全性を確保しながら慎重に進めていたのが日本。
この未曾有の緊急時に、通常と同じ手続きをして承認していたのだから、副作用のリスクを取ってスピードを優先した国と差が出るのは当然。
*通常の過程を省略したという報道を見たけど、全体としては誤差のレベルだろう。
ただ、政府の分科会のあるメンバーは、接種が遅れたことの“メリット”をこう説明する。
「国内外での臨床試験の結果に加え海外で実際に接種が始まったあとの効果や副反応の状況を参考にしながら接種を進められる側面もある。」
そりゃそうだ。
先にワクチンを打った国の様子を見て、“失敗例”を確認してからのほうが、より安全に接種を行うことができるのは当たり前。
でも5月になったいま、国民はこの慎重さを高く評価しているとはとても思えない。
日本での接種が遅れた理由について、聖マリアンナ医科大学病院の感染症センター長・國島広之氏も「日本人が従来からワクチンの安全性や有効性について慎重な国民性であること」を挙げた。
安全重視で慎重に行動する国民性だから、ほとんどの人がマスクをしていたし、欧米に比べて感染者が少なかったことは間違いない。けどワクチン接種では、もう少し副作用のリスクを取ってもよかった。
接種が遅れれば、それだけ多くの死者が出るのだから。
サッカー元日本代表監督のイビチャ・オシム氏もそう思うのでは?
オシム氏
2006年に代表監督に就任した旧ユーゴスラヴィア出身のオシム氏が、日本で過ごした経験を本に書いている。
確実性重視でチャレンジ精神に乏しい日本代表選手を見て、「なぜ日本人はゴール前で責任を放棄するのか?」とオシム氏は言う。
いまでも日本代表の試合を見ていて、ゴール前でのまさかの横パスや、バックパスの多さにイライラする国民は多い。
でも、こういう危険回避は日本人の国民性だと思う。
オシム氏は日本人についてこんな長所があると指摘する。
日本人は素晴らしい面をもっている。敏捷性、尋常ではない闘争心、サッカーに必要な多くの感覚や素晴らしい個人技能。
「考えよ!ーなぜ日本はリスクを冒さないのか? (角川書店)」
太平洋戦争で日本は真珠湾攻撃を仕掛けてアメリカとの戦争をはじめた。
先制攻撃をおこなうというリスクを負った結果、敗戦という大きな物理的・精神的ダメージを負ったことが「日本人のメンタリティの転換期になっているのだろう」とオシム氏が惜しむ。
「何かに勝つためには、リスクや犠牲を負わなければならないのだ。」という信念をもつオシム氏は、日本人がそれを避ける理由を“責任感”に求めた。
責任感のあるプレーが、日本人の強みの1つである。しかしながら、この責任感というものを強調しすぎてはいけない。一部の日本人選手たちは、大きすぎる責任のためにリスクを少ししか負わないからだ。責任感の強すぎる選手は、リスクを全く負わなくなるのだ。
責任感を強く感じるからリスクを取れない人もいれば、何かミスがあると、まわりが大声で責任を追及するから安全重視になる人もいるはずだ。
いまだって副作用による死者が1人でも出たら、政府や厚労省がぶっ叩かれてるのは目に見えている。
大阪だけで1日で、41人が亡くなったことはすぐ忘れ去られるのに。
「負けないためにどうすべきかではなく、勝つためにはどうすべきかを考えようではないか」というオシム氏の言葉を借りるなら、日本人は全体的に、成功することより失敗しないことを優先して考える。
個人的な印象だが、「それでもし失敗したら、あなたはどう責任を取るのか?責任を負えるのか?」と迫る人が日本には多すぎ。
安全・確実を重視して慎重に行動する日本人の国民性は、責任追及社会とセットになっている。
だからきっと、「コロナ危機は終わった」と言える日は年内にはこない。
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ま、最近は感染者が急増しているとはいえ、世界の殆どの国に比較すれば「感染者率は非常に低い(特に同規模の人口・経済力を有する他国に比べれば今でもダントツに低い)」のですから。別に「遅すぎた」ということはないと思います。
ワクチン接種率を何とかして(日本よりも)上げるために、本来ならば2回目の接種に使うはずだったワクチンを1回目の接種に転用してしまって、結果、有効な2回接種が間に合わないケースが多発するなどという、無知な人気取り政策で失敗しているどこかの国に比べたら、まだマシですよ。