最近SNSで「mooch」って英単語があることを知りますた。
日本で英語を教えているイギリス人がアップした情報によると、これはマンチェスター地方の方言というから、知ってる日本人はかなりレアのはず。
moochの意味は目的のない散歩をすることで、辞書には「ぶらつく、うろつく」とある。
そこから転じたのだろうけど、moochには「盗む」という意味もあって、オーストラリア人はこの意味で使うとコメントしていた。
そのイギリス人は例文として、「I’m going for a mooch around the shops」(店をぶらぶらする)という例文をのせる。
いまの日本では気晴らしなんかで「mooch」する人はよくいるけど、昔の日本人にそんな習慣はなく、散歩というのは意味不明の謎行為だった。
戦国時代の末期にヨーロッパからやってきて、織田信長や豊臣秀吉と会って話をしたこともあるキリスト教の宣教師でルイス・フロイス(1532年 – 1597年)って人がいる。
フロイスの記録を見ると、当時の日本人のようすが分かっておもしろい。
桜を見たり生の海藻を食べるのが好きだったという点は現代も同じ、でも、犬や鶴、大猿、猫を食べることが好きだったという、「マジか!」と驚くようなことが書いてある。
ほかにもフロイスの観察によると、日本人はまったく散歩をしない。
戦国時代の日本人は歩行を移動手段としてだけ考えていたようで、フロイスが目的もなく外をブラブラ散歩することが理解できなかったらしい。
*散歩については触れてないけど、フロイスが見た日本人のようすは「日欧文化比較」にある。
散歩が好きなヨーロッパ人と、「なにそれ?」という日本人の構図は江戸時代になっても同じまま。
幕末に医学を教えていたオランダ人のポンペは、決まった目的もなく、楽しく散歩することを日本人はほとんど知らないと記録した。
当時の日本ではコレといった目的もなく、街や自然の中をブラブラする人間は「アヤシイやつ」と思われたかもしれない。
いまの日本でいう「散歩」は勝海舟によってつくられたという。
長崎の海軍伝習所で、オランダ人の教官が行き先や用もないのによく歩くのを見て、「それにはどんな意味があるのか?」と勝海舟が不思議に思ってオランダ人にたずねと、これは歩くことを楽しむプロムナードというものだと教官が言う。
*プロムナードは「散歩」を意味するフランス語。
それを聞いた勝海舟がこのプロムナードに「散歩」という字をあてたことが、いまの日本語の散歩の始まりになった。
明治時代になって欧米を模範国と考え、いろんな文化や習慣を取り入れるようになると、散歩をする日本人が現れるようになった。
坪内逍遥(しょうよう)の『当世書生気質』には、暖かくなったので楓葉(もみぢ)を見ながら「運動のため散歩をなさん」という文がある。
江戸時代の物語や俳句で、プロムナードの意味での「散歩」は出てこないはず。
そしてその後の日本で、くわしい過程は知らんけど、散歩は社会に広く定着して国民的習慣となった。
もう外をブラブラ歩く人を見ても、意味が分からないと思う日本人はいない。
ただこうなると、日本人のする森林浴の意味が分からないといういまの欧米人が不思議になる。
ところで「逍遥」の意味はご存知だろうか。
辞書(大辞泉)には「気ままにあちこちを歩き回ること。そぞろ歩き。散歩。」とあって、これを使った「郊外を逍遥する」という例文を載せている。
「逍遥自在」という四文字熟語は、自由を楽しみ優雅に暮らすこと、世俗を離れ自由気ままに過ごすことといった意味だから、坪内雄蔵(ゆうぞう)はここから「逍遥」のペンネームをとったのだろう。
だから逍遥をマンチェスター英語にしたら「mooch」になる。
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