日本よ、これがイスラム社会の「宗教警察」だ。

 

コロナ対策として拡政府や自治体から営業自粛が求められていても、オープンしている店を見つけると、入口に「店を閉めなさい」と紙をはる自粛警察。
着物の着付けがおかしい人を見つけると、「ちょっとアナタ」と呼びかけて注意を与える着物警察。
日本にはそんな多種多様な「〇〇ケイサツ」がいるけど、絶対にいないのがイスラム世界では常識的な宗教警察だ。

サウジアラビア出身でいまはエジプトに住んでいるアラビア人(10代の女性)と、このまえネットで話をしたときに、宗教警察の活動を知ったのでこれからそれを書いていこう。

 

あるエジプト人の昼食

 

住むとしたら、サウジアラビアとエジプトのどちらがいいか尋ねると、その人の答えはサウジアラビア。
その理由として、「It’s Islamic laws」とイスラム法(シャリア)を挙げる。
*以下、サウジアラビアはサウジと書く。

サウジから来て感じた違いは、イスラム教に対するエジプトの「なにこれ?」というほどのユルサだったという。
サウジはイスラムの国としてはかなり完成形に近い。
エジプトもイスラム教を国教としているのに、国内にはその教えを守らない人がたくさんいる。

それを取り締まる「宗教警察」の厳格さが両国では大きく違う。
これが日本とイスラム社会の国との決定的な違いで、サウジやエジプトにはイスラム教の考え方に基づいて、国民にモラルを守らせる宗教警察がいる。
あえて言うなら、学校の風紀委員のような役割。
でも彼ら「ムタワ」はそんなアマイものじゃなくて、その権限はとても強大だ。
ちなみに「religious Police」と書いてもその人には意味不明で、エジプトやサウジの宗教警察を英語で書くと「morality police」になるらしい。

エジプトの宗教警察はサウジと違って、その役割は「売春宿」を摘発してつぶすことぐらい。
それと女性の有名人が肌を露出して、男性を刺激するようなスキャンダラスな格好や行為をしたら捕まえる。
それに対してサウジの宗教警察は「売春宿」は当然として、体形や目と手以外の部分を隠す「アバヤ」を着ないで外出する女性がいたら、その人も捕まえて罰を与える。

 

 

女性の車の運転を認めるなど、最近のサウジでは世俗化が進んでいる。
その結果、街で派手なマニキュアを塗った女性や異性との出会いを求める男性がいたら、拘束して罰を与えていた宗教警察は力をなくしつつある。
3年前には人通りの多い路上で、女性(ベールはかぶっている)と親族ではない男性がダンスを楽しむ動画が拡散されて大問題になった。

AFPの記事(2018年2月15日)

この動画への対応をきっかけに、同国の宗教警察の影響力が低下しているとして一部から激しい非難の声が上がっているのだ。

「牙を抜かれた」サウジの宗教警察、社会に解放感も一抹の不安

 

「宗教警察はどこにいるのか?」「なぜ、黙っているのか?」とこの動画に激怒したのは主に保守的で年齢の高い人たちで、いまのサウジの若い世代はこういう自由を歓迎している。

 

エジプトとサウジの宗教警察の違いについて、そのアラビア人はこう書いた。

「Do not be strict about the niqab and hijab because Egypt is full of other religions
But if a woman’s clothes are scandalous, they punish her」

エジプトには、ヒジャブやニカブの着用義務のないコプト教などのキリスト教徒もいるから、服装に関してサウジほど厳しくはない。
実際エジプトに行った時、首都カイロではイスラム教徒でも髪を露出して、ジーンズにTシャツというラフな格好の女性がいた。
サウジならアウトでも、エジプトならこれはギリセーフ。

でも、イスラム教の考え方・価値観で風紀を取り締まる宗教警察はいるから、「スキャンダラス」には相応の罰が与えられる。
2017年に女性歌手が、バナナをセクシーに食べるMVを公開したら捕まって実刑判決を受けた。
くわしいことはこの記事を。

”エロ過ぎる!”と女性が逮捕。イスラム教と女性の服装の理由。

 

「政経分離」の原則から宗教と社会には、超えられない一線が引かれている日本で宗教警察はあり得ない。
でもその代わり、自粛警察とか着物警察とか面倒くさいのはいる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。