【日本の月見】平安時代からの、月を楽しむ文化の移り変わり 

 

きのう十五夜の月見の日、ある外国人さんがSNSに「今夜のために特別な生け花をいけましたよ。月見は千年以上前から日本にある伝統です」てな投稿をしてた。

「Special Tsukimi Ikebana for tonights Tsukimi festival that i made today at the temple…Tsukimi means ”Moon watching” and is an ancient tradition in Japan going back over a thousand years…」

きのうが十五夜だから、今夜は十六夜(いざよい)だ。
15日に比べて16日は満月になるのが少し遅いことから、昔の日本人が「お月がためらっている」と考えて、「ためらう」を意味する動詞「いざよう」を語源として「いざよい」ができたという説がある。

日本で月を見る習慣は縄文時代からあったというが、現代の日本人がしている月見の起源となるのは平安時代の貴族が行っていた行事だ。
当時の貴い人たちは月を見ては酒を飲み、詩歌を詠んだり音楽を楽しんでいた。
優雅&上品をモットーとする平安貴族はただ月と向かい合うだけでなくて、こんな風流に月を愛でることもあった。

舟遊び(直接月を見るのではなく船などに乗り、水面に揺れる月を楽しむ)で歌を詠み、宴を催した。また、平安貴族らは月を直接見ることをせず、杯や池にそれを映して楽しんだという。

中秋節

 

京都の広沢の池は平安時代から観月の名所として知られていて、古来から多くの人がこの湖面に揺れる月を眺めていた。
平安貴族の気分を味わいたかったら広沢に池、と言いたい。

 

 

平安時代の日本人が話す日本語を再現した動画があったんで聞いてみたところ、意味が分からなくすぎてビビる。

朗読 源氏物語(The Tale of Genji) 若紫1 平安朝日本語復元による試み

 

時代は流れて江戸時代になると、いまの月見文化の原型ができてくる。
ススキで月見の飾りを作っては、庶民はその時期にとれるサトイモや花見団子を食していた。
月見団子は月の丸い形を模したとも、サトイモの形に由来するともいわれる。
十五夜には豊かな収穫を願うため稲穂をお供え物にしたいところなんだけど、まだ稲は育っていないからススキで代用したという。
ススキには神様がおりてくる「依り代」の意味もアリ。

 

画像:katorisi

 

月見団子というと上の丸い形のやつが一般的。
でも地方によっていろんな個性があって、関西ではあんこを巻いたような月見団子がスタンダードだ。

 

 

東海道のど真ん中にあるわが静岡では、こんな「へそ餅」を月見の日に食べる。
徳川家康が子どものころ人質として駿府にいたとき、付き人が元気に育つようにと餅にくぼみを作り、そこにあんを入れて家康に食べさせたのが始まりという話もある。

 

 

月見のときには綱引きや相撲をする地域もあるし、子どもを「月の使者」(セーラームーンですか?)と考えて、お供え物を盗んでもいいとする「お月見泥棒」の風習もあった。
そのほか日本各地の月見の文化については  中秋節・日本 を参照のこと。

花見団子は全国でイロイロな形があっても、これは北海道から沖縄まですべて同じだ。

 

 

欧米や東南アジアの外国人にきくと、母国にもマクドナルドは山盛りあるけど、日本のように春は「てりたま」、秋は「月見バーガー」と季節に応じてメニューが変化することはないという。
ファストフード店にもあらわれてしまう季節感は日本人ならではのもの。
千年前は湖面に映る月を愛でていたのが、いまではハンバーガ一やパイにして楽しむようになったのだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。