先週の9月29日は「日中国交正常化の日」。
1972(昭和47)年のこの日、北京で田中角栄・周恩来首相が日中共同声明の調印式を行って、現在につづく日中関係がスタートした。
そんな中国ではいま「国慶節」の大型連休のまっ最中。
1949年10月1日に北京の天安門広場で、毛沢東が中華人民共和国の成立を宣言したことにちなみ、「国慶節」という祝日がつくられた。
言ってみれば中国の建国記念日ですよ。
この日から1週間ほど連休になるから、中国では大旅行シーズンとなる。
なんせ人口世界一の国だから、まだコロナ禍は収まっていなくて例年よりは控えめというが、ことしは6億5000万人という壮大な規模の国内移動が始まるらしい。
人気の旅行先は北京郊外に9月にオープンしたUSB、「ユニバーサル・スタジオ・北京」だ。
そして完全に当てが外れたのが大連の「小京都」。
日本家屋に日本庭園(枯山水)、家紋の入った提灯、法被を着た店員に招き猫と、日本の伝統文化を詰め込んだ「日本風情街」を1000億円かけて完成させ8月の終わりに開業した。
と思ったら、「日本文化の侵入だ」「かつて日本に支配された大連は国の恥を忘れるな!」といった批判と、「中日の友好交流をアピールするいい機会になる」「地元経済が発展するから中国にメリットがある」といった擁護の声が噴出して、結局は批判派の声が上回り、1週間ほどですぐに休業となってしまう。
知人の中国人は「京都は好きだけど、自分の国でこんな観光地ができるのはちょっとおかしい。でも行ってみたいとは思う」なんてことを言う。
それにしても中国にはカネがある。
日本で1000億円が動くというのは国家プロジェクトのレベルじゃないか?
*ただ最近の中国経済については不吉な情報をよく聞く。
大連に現われた「小京都」に、いつもは中国ニュースに厳しい日本のネット民もこれにはおおむね好意的だ。
・京都なんか長安をモデルなんだから問題ないだろ。
・一見さんピシャッと閉め出されるんだろ?
・京都越してるじゃん
本家超えはダメだろw
・ガンダム立てとけ
・日本でいう中華街をスーパーデラックスにしたようなもんか
・言うほど日本か?
・コレジャナイ感あるけど空が広くてイイね
「盛唐」とあるようにここは日本だけでなく、中国・唐王朝の建物もあって、日中の文化融合・交流をテーマとする街並みだったらしい。
でも、日本の商品しか販売できない、儲かるのは日本の業者だけ、といった反日感情に基づく事実無根のうわさがネットで流れて事態をややこしくした。
この事業には地元政府も協力しているし、店員も客も中国人で、ここから上がる税収も中国のものになるのに、そのへんのことは激しい国民感情にかき消されてしまった。
1931年9月18日に日本軍が鉄道を爆破した柳条湖事件が起きて、いまの中国でその日は「国恥の日」と呼ばれていて反日感情が高まる時期になっている。
だから、せめてその後にオープンすればよかったのに。
コロナ前は日本旅行が大人気で、日本への見方も好意的になったのは事実。でも、ここまでの「日本推し」はさすがに国民感情が認めかったらしい。
中国の英雄の言葉を借りるなら、「日中友好いまだ成らず」といったところ。
*元ネタは1911年の辛亥革命で清王朝を倒した孫文さん。
彼は1925年に亡くなるとき、「革命尚未成功(革命なお未だ成功せず)」という超有名な遺言を残したのだ。
清朝に追われ日本へ亡命した孫文は多くの日本人と付き合い、思想的影響や資金援助を受けた。
くわしいことは「孫文・日本との関係」で確認のこと。
数年かけて準備して、オープンしたらすぐに営業停止となった大連の「小京都」。
地中に数年いて、成虫したら1週間ほどで死ぬセミのようだ。
でも無料で開放されているところもあって、日本庭園や招き猫をバックに記念撮影を楽しむ市民はいるらしい。
FNNプライムオンライン(9/9)
和傘のオブジェの前で、中年女性の集団が大音量の音楽をかけてダンスする様子は、かなりシュールで、「反日」の空気は感じられない。
突如営業停止…なのに人気!? 中国「小京都」に行ってみてわかった微妙な日中関係
1000億円のプロジェクトがこのまま消滅することは、さすがにないだろう。
また営業が再開したら、いまのアウェーの空気も変わるかも。
「日本風情街」は蘇州にもできたし、対日感情は全体的には良くなっているはずだ。
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