【世界初の飢饉】マダガスカル人が話す、人災による食糧難

 

なんせこんな異様な形と大きさだから、バオバブには悪魔が巨木を引っ込ぬいて、逆さまにして地面に突っ込んだという言い伝えがある。

 

画像:Pat Hooper

 

そんな木の並んだ「バオバブ街道」があるのが、東アフリカにあるマダガスカル。

 

 

ほとんどの日本人にとっては圏外のマダガスカルってこんな国ですよ。

面積:587,295平方キロメートル(日本の約1.6倍)
人口:2,697万人(2019年)
首都:アンタナナリボ(Antananarivo)
民族:アフリカ大陸系、マレー系、部族は約18(メリナ、ベチレオ他)
言語:マダガスカル語、フランス語(共に公用語)
宗教:キリスト教、伝統宗教、イスラム教

外務省ホームページ「マダガスカル共和国(Republic of Madagascar)基礎データ」から。

 

いまこの国の南部でかなり深刻な食糧難が発生していて、人道上の危機に直面していることはご存じだろうか。
ほぼ4年間も雨が降っていないことや森林破壊、気候変動などが原因となって、ここ40年間で最悪の干ばつとなり、世界食糧計画(WFP)は114万人が食糧難におちいり、現時点でも4人に1人が急性栄養不良の状態になっていると発表した。

住民は葉っぱや昆虫などをかき集めて口に入れて、何とかその日を生き延びている状態だ。
下の動画に出てくる女性は夫は飢餓で夫を亡くして、いまはサボテンの葉しか食べるものがないと言う。
2人の子供たちも母親を失った。

 

 

WFPの日本語版サイトには最後の食事はいつ、何を食べたのか質問された子どものようすがある。

彼は粘土質の地面を指差しました。彼の母親によると、何もなかったため、最後に子どもたちに食べさせたのは、普段は食べられない草などの植物だったそうです。それを煮て、粘土を入れて、お腹を満たすために食べさせていたのだと言います。

マダガスカル:子どもたちは走ることも遊ぶこともせず、目に深い悲しみを浮かべています。

 

空腹から体力がなくなり、スプーンを持ち上げることもできなかった10代の若者もいたという。

「バオバブ街道」や豊かな自然のあるマダガスカルは観光国だけど、パンデミックの直撃を受けて、観光業が壊滅状態になったことも悲劇に追い打ちをかけている。
コロナ対策で南部の港は封鎖されているため、海外からの食料は北部の港に下ろされたあと、ひどい陸路を通って8日ほどかけて南部へ運ばれていく。
だから食糧供給がスムーズにいかないのだ。

紛争が原因で起きるいままでの飢饉とは違って、これは世界で初めて気候変動による飢饉になる可能性があるとWFPはいう。

 

 

最近、マダガスカル人(20代の女性)と話をしたときにこの食糧難について聞いたから、これからその内容を紹介しよう。
最初に断っておくが、これはあくまで彼女の個人的な意見だ。

まず首都アンタナナリボに住んでいる彼女にとって、南部の深刻な食糧難は自分の生活にはほとんど関係ない。
そこでは多くの人が餓死しているというニュースを聞くけど、ここではカフェやレストランで好きなものを食べることができる。

なにそれ?
なんで南部には死と隣り合わせの絶望が広がっているのに、北部や中部にはいつもの日常が広がっているのか?

 

基本的に政府は国民のことを考えていないから、WFPが大声で訴えても、積極的な支援をしようとしない。
海外から届いた援助物資を横領して金もうけをする役人や政治家が多いから、南部へ届くころにはかなり少なくなってしまう。

それに支援をジャマする連中もいる。
友だちがネットで募金活動を始めて、集まったお金で食べ物を購入して南部へ送ろうとしたら、「いますぐその活動を止めろ。さもないとおまえは〇される」といった脅迫メールが届くようになった。

葉っぱや昆虫、粘土を口に入れる人たちを助けたいだけなのに、なんでそれを阻止しようとするのか?
日本人のボクにはサッパリ分からん。

彼女の友人の話では、南部の土地がほしい人にとっては、その地域の人が死ぬと土地を得るのが簡単になるから。
マダガスカルには自分の土地に愛着を持っていて、手放そうとしない人が多い一方で、土地を手に入れてビジネスをしたい人がたくさんいる。
特に外国人がマダガスカルの土地をほしくて、以前からトラブルが起きていた。
そういう人間にとっていまは“チャンス”で、支援活動なんてしてほしくないからジャマをする。
これは脅しだけじゃないと判断して、友人は計画をあきらめた。

ニューズウィーク誌の記事を見ると、事態は鬼畜の望み通りの方向に進んでいる。
(2021年9月8日)

食料の市場価格は3倍以上に跳ね上がっており、一部地区では食べ物を調達するために土地を手放す人々も現れはじめた。

気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ…マダガスカル

 

日本で見るニュースでは天候不順やイナゴ害などで起こるアフリカの食糧難が、現地の人の話を聞くと、実は人災の面がとても大きいということがよくある。
「気候変動による世界初の飢饉」といっても、今回のマダガスカルの件もやっぱり同じか。

 

 

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2 件のコメント

  • > 外務省ホームページ「ダガスカル共和国(Republic of Madagascar)基礎データ」

    ダガスカル共和国 → マダガスカル共和国 の間違いですね。

    マダガスカル国内での食糧生産(農業・水産業)と海外からの食料輸入、及び国内流通の実態はどうなっているのでしょうかね?
    「土地を守りたい・奪いたい」という志向の国民が存在していることは分かりました。でも、その国の経済の仕組みを考えなければ、その国の問題を解決する上で、真に有効な考察・批判はできないと思います。政治経済の問題は、水戸黄門のような勧善懲悪ストーリーを訴えるだけでは、解決できませんよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。