米国でスシを普及させたのは韓国人?いえ、日本人の努力です

 

韓国の全国紙・中央日報が、日本人を挑発するような記事をサクッと掲載してくれた。(2021.11.08)

NYT「米国ですしを大衆化したのは韓国人」…彼は統一教の文鮮明

元ネタは米メディアのニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道だとしても、これはあくまで韓国の読者を対象に韓国メディアが構成した記事だ。
実際に中を見てみると、韓国人が誇らしく思ったり喜びそうな内容に仕上がっている。
ではさっそく内容を確認していこう。

まず記事によると、「日本の料理として知らされている「すし」が米国で広がったのは韓国人のおかげ」とある。
それは統一教の文鮮明(ムン・ソンミョン)氏がアメリカで「トゥルー・ワールド・フーズ」という水産物流通業社を設立したからで、「米国内のすしの大衆化を導いたのは文氏だった」という。

この記事では「すしはもともと日本のものではなく、中国や東南アジアなどで初めて食べられるようになった」と寿司の起源を紹介しているが、それは魚の保存食で、いま外国人が食べる「SUSHI」とはまったく違う。
この食べ物が現存しているのかも謎。
世界中の人が食べている、生魚をご飯の上に乗せたあのスシは、江戸時代に日本人が考案した江戸前寿司なのに、記事ではその重要部分がきれいさっぱりスルーされている。

 

生食文化のないアメリカで寿司を紹介し、普及させた日本人の努力について一行でも書いてほしかったですよ。

まず1906年にロサンゼルスのリトル・トーキョーで、日本人がアメリカで初めて寿司屋をオープンさせたことから歴史が始まった。
その後、大前 錦次郎(おおまえ きんじろう)氏がワシントンD.C.の全米桜祭りに、日本人の職人を連れて行って寿司を振る舞ったり、英語で寿司を説明する初めての本「寿司の本」を出版するなどしてアメリカでスシが知られるようになった。
寿司の普及で決定的な役割を果たしたのは、実業家の金井 紀年(かない のりとし:1923年 – 2017年)氏だ。
彼がリトル・トーキョーで初めてアメリカに握り寿司を紹介し、「スシ・ブーム」の仕掛人となる。

1970年には、20世紀フォックススタジオの隣に「Osho」という寿司バーが登場。
ハリウッドスターらがそこの寿司を気に入って紹介し、健康のために魚を食べようという動きもあってアメリカでの寿司ブームが加速した。
インフルエンサーとして彼らの影響力は絶大だったから、「寿司が普及したのはハリウッド俳優のおかげ」というのは正しい。

英語版ウィキペディアの「History of sushi」にはアメリカで寿司が普及した背景として、「スシ・バー」という名称をつくった金井 紀年氏の活動や、日本人が考案したカルフォルニア・ロールについての記述がある。
しかし、韓国人についての言及はゼロ。

 

日本人がアメリカに紹介・普及して、できあがった土台に文鮮明が乗ったのだろう。
彼が韓国料理ではなく寿司を選んだのは、アメリカでスシを広めることをねらったというより、単純に「日本ブランド」を利用した方がもうかるからだ。
いまの日本でいえば、ネパール人が「本格的インドカレー」を提供するようなもの。

慰安婦・徴用工問題といった政治的な内容ではなくて、こんなカジュアルな食文化についての記事でも、「パクリ」、「日本人のフリをしてね」と日本での反応はすこぶる悪い。
でも中にはこんな冷静な指摘もあった。

・これをパクリと言っちゃうのは簡単だけど
日本人が自らの手で市場を開拓できないことは大きな問題だよ
韓国を揶揄する前に日本の情けなさを反省したほうがいい

アメリカで韓国人がもうかる手段として日本料理を選んだことで寿司が広まり、大衆化に貢献したのは事実だと思う。
ただそれを伝えるのなら、その基盤をつくった日本人への感謝やリスペクトが、ほんのチョットでもほしかった。
まあ数年前にカルフォルニアで登場して、日本人を震撼させた店「Dokudo sushi」(独島寿司)よりはマシだけどね。
韓国系米国人が経営するこの店では、焼き鳥とカラオケも提供するという。
このハングリー精神は日本人にはない。

 

 

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4 件のコメント

  • このブログの持ち主には申し訳ないですが、私はニューヨークタイムズの記事を自分で読みましたので、本文中で”これはあくまで韓国の読者を対象に韓国メディアが構成した記事だ”という部分は感情的なアプローチだと思います。もちろん, 中央日報がNYTの記事を紹介した目的は、確かに寿司のアメリカ普及に韓国が大きく寄与したことを強く主張するためだと思います。韓国の力を誇示したかったのでしょう。
    しかし、中央日報が紹介した内容は、NYT記事をありのまま書いたもので、韓国人に合わせて再構成したものではありません。寿司がもともと日本の食べ物じゃないという話に気分が悪いかもしれませんが、それもやはりNYTの記事のままです。 次の通りです。

    “It originally wasn’t Japanese: Like rice cultivation and ironworking, Chinese characters and Zen Buddhism, sushi came from across the sea, invented in China or Southeast Asia before appearing in Japanese records, as a form of tribute currency, more than millennium ago”

    寿司の起源がNYT記事のように日本ではないとしても、現在世界の人々はみんな寿司を日本食と認めています。
    私も寿司を日本の食べ物だと思いながら美味しく食べています。

  • これはNYTの記事のどの部分を採用し、どの部分をしなかったかという取捨選択の問題です。
    韓国人読者に読んでもうため、韓国人の基準や感覚でその取捨選択をしたはずです。そうでなければ、NYTの記事全文を紹介しないといけない。
    いま世界中にある寿司は約200年ほど前に江戸で作られたもの。
    その起源は中国や東南アジアにあった発酵食品ですが、これはすしとは別もの。ただこれはNYTの記者の知識不足です。
    この考え方を当てはめると、韓服もキムチもビビンバも韓国のものではなく、中国のものなるでしょう。

    そもそもなんで韓国人記者は、「すしはもともと日本のものではない」という部分を抜き出したのか?
    しかも一番印象に残る記事の終わりでこれを書いています。
    こういう言葉をみると韓国人読者がよろこぶからでしょう。
    NYTの記事のどの部分を抜き出して、どんな順序で読者に見せるか?これは韓国メディアが構成した記事です。

  • 私が上のコメントで書いたように、中央日報がNYTのあの記事を紹介した目的は、「寿司の世界化に韓国が貢献した」ということを強調するためです。しかし、NYTの記事内容を歪曲はしませんでした。
    ただ、NYTの記事に、日本国民から少し不便な事実を抜粋して書いたことは否定できません。
    どうせNYT記事の専門を全部紹介することは話にならないことなので、韓国人が見て気分のいい内容を抜粋して書き、韓国人が反日感情で気分のいい内容は日本人にとっては気分の悪いことです。
    しかし、記事の内容を読んでみると、統一教主が寿司技術者として日本人を連れて行ったという内容があるので、”寿司が日本の食べ物ではない”という言葉は記事内容の要点ではありません。
    中央日報の記者は、寿司の世界的流行は日本人の力だけではなく、韓国人が助けてくれたという、NYTの記事が自分の心に満足したので紹介したんだと思います。やっぱり、その根底には反日意識があることは否定できません。

  • >NYTの記事内容を歪曲はしませんでした。
    わたしは「歪曲した」とは一言も書いていません。
    韓国人の価値観を重視して、韓国人読者を対象にした記事にNYTの記事を構成したと指摘したのです。

    >”寿司が日本の食べ物ではない”という言葉は記事内容の要点ではありません。
    その通りです。
    これは要点ではないのに、韓国メディアはこの部分を抜き出しました。
    韓国人用の記事にするためにはこうしたのです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。