日本にとって歴史的にいちばん関係が深くて、大きな影響を与えられた国といえば中国だ。
日本について説明する最古の書『魏志倭人伝』は中国人が書いたもので、これによって邪馬台国や卑弥呼の存在などを現在の日本人も知ることができる。
日本は奈良・平安時代に遣隋使や遣唐使を派遣して、中国の文明や文化をガチで学んで吸収する。
なかでも漢字は本当に優秀な道具で、これによって日本人は詩歌をつくって感性を磨き、文書を作成し高度な情報伝達ができるようになった。
唐の法による統治を参考に、日本の国情にあった「大宝律令」をつくり上げて政治制度を確立させたことで、「大化の改新」の目標は達成されたといっていい。
もちろん日中の間で文化・文明の流入は、西から東への一方通行ではない。
幕末・明治の時代になると、中国人が日本の明治維新に学んで社会の近代化を図ったし、日本人が英語を漢字翻訳した言葉を中国人が採用して、いまではソレなしでは新聞記事を書くこともできないほど社会に定着している。
「人民共和国」は実は”日本語”だったりする。
「中華人民共和国」の7割は“日本語”。日本から伝わった言葉とは?
そんなふうに、古代から付き合いのある中国との関係がいまピンチ。
お互いのイメージはかなり悪化していて、先月10月に言論NPOが発表した「第17回日中共同世論調査」を見るとその深刻さがよくわかる。
まず日本に「良くない」印象をもつ中国人は66.1%だったのに対して、中国に「良くない」印象を持つ日本人は90.9%という絶望的な結果。
中国を「好き」という日本人はもう、絶滅危惧種に指定して保護すべきレベル。
中国では歴史問題、日本では中国軍による領海・領空への侵犯が悪印象の大きな原因となった。
また現在の日中関係を「悪い」と考える中国人は42.6%(昨年から20ポイントもアップ!)で、「良い」という人は昨年の22.1%から半減して10.6%となった。
日中関係を「悪い」と考える日本人は54.6%、「良い」は2.6%と初めて導入された消費税以下。
いまの日中はお互い、印象も関係も「かなり悪い」という点では完全一致していて、もはや絶望しかない。というワケでもなさそうだ。
それでも日中関係を「重視している」と答えた日本人は66.4%いて、これと同じ中国人は70.9%いた。
日本・中国ともに「感じは悪いけど、重要な相手」という認識はあるらしい。
実際、日本人がどう感じたとしても、中国が世界第二位の経済大国という客観的な事実は動かない。
個人的な感情は「ヨイショ」と置いといて、日本にとってのメリットを考えたら、中国との関係を絶つことはもう不可能だ。
自分の好きな人だけを選んで付き合えるのは友人関係だけ。
仕事ではむしろ逆で、「イヤでも付き合っていく」前提でその上手な方法を考えるしかない。
いまの中国との関係もそれと同じようなもの。(それは向こうも)
日本の産業界や観光業界からは、中国との関係改善を望む声が多く上がっているのはそのためで、これは回り回って、直接関係ない日本人にも恵みをもたらす。
古代のような友好関係を再現するのはアニメやマンガにまかせるとして、現実世界では「好き・嫌い」の感情よりも、いまは実利を優先して中国との関係を考えた方がいい。
悪印象が9割を超えたとしても、違いではなく利害に注目すれば、ビジネスパートナーとして大人の関係は築けるはず。
日本経済のため、ぶっちゃけカネのために、乗り越えないといけない価値観や見方の違いはある。
きょう発足した岸田内閣の注目は、日中友好議員連盟会長を務める林芳正氏が外相に選ばれたことだ。
日本外交のなかで、中国との付き合い方は最重要課題のひとつ。
「(中国にこびる)媚中ではいけないが、知中派であってもいい」と言う林氏が外相に起用されたことは、中国には対話重視のハト派路線で接していくという岸田首相の意思の表れじゃね。
個人的には、日本人にとって中国の文化は面白いと思う。
たとえば中国語で「老婆」には「新妻」の意味もあるから、「我愛老婆」といっても、その人がおばあさんに夢中というワケではない。
こういうことが分かるのは、漢字文化圏で生きているから。
さて来年は、悪印象が9割を下回りますように。
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