日本人と英国人の「tea」:緑茶・紅茶・烏龍茶の同じと違い

 

江戸時代の1782年、船で江戸に向かっていたら暴風雨にあって遭難し、「ソウナンですか?」と気づいてみたら、大黒屋光太夫(だいこくや こうだゆう)はロシアにいた。
かの地で皇帝エカチェリーナ2世からお茶会に誘われた大黒屋は1791年11月1日、日本人として初めて紅茶を飲んだということからその日は日本で「紅茶の日」になっている。
詳しいことはこの記事を。

紅茶を初めて飲んだ日本人・鹿鳴館から一般家庭までの歴史

 

最近、新しいアパートへ引っ越しするというイギリス人女性がいて、その手伝いをしたら、紅茶とブラウニーのシンプル茶会を催してくれた。(上の写真)
それで大黒屋の話をすると、「それはおかしい」と反論しやがるです。
日本人はもっと昔に飲んだはずだと主張するから、「い~や、そんなことはない。1791年よりも前に日本人がティーを飲んだ記録はない」と言い返して、線香花火ぐらいの火花が散ると、「そのティーって紅茶のこと?」と何かを発見した顔をする。

イギリス人にとってティーといえばブラックティー(紅茶)、緑茶ならグリーンティーじゃないの?と思って聞くと、基本的にはそうだけどそれは相手によるらしい。
日本に住んでいる彼女の感覚だと、アメリカ人やイギリス人が「ティー」と言ったら紅茶、日本人が「ティー」と言ったら緑茶を思い浮かべる。

日本人が緑茶を飲んだ記録は平安時代にあるから、1791年は明らかに間違い。
この解釈なら、さっきの指摘はExactly(そのとおりでございます)。
日本で生まれ育ったボクは「tea=紅茶、green tea=緑茶」を当然のように考えていたけど、その訳はフレキシブルで(マリファナや麻薬をこう呼ぶこともあるらしい)、ティーの最適解はそのときの相手や場によって変わる。
コトバは生き物だから基本は辞書の日本語訳でよくて、あとは状況によって、柔軟に発想を変えることが大事と英語の先生らしいことを言う。

 

 

誤解が解けたところで話題はティーだ。
tea の根本的な意味は「茶の葉」で、紅茶も緑茶も同じチャノキの葉から作られるのだから、本質的にはまったく同じ飲み物だとイギリス人が話す。
烏龍茶も同じ葉で、これらの分類はどのていど発酵させたかによる。
発酵というと一般的には微生物さんがガンバッテ働いて、人間にとって都合の良い食べ物きに変化させてくれることをいう。
でも、お茶でいう発酵とは酸化のことだ。
茶葉をどのぐらい発酵させるか、茶葉の成分をどのぐらい酸化させるかによって味や色合い、においなどが変わってくる。
その具体例がコレ。

緑茶:不発酵茶
紅茶:発酵茶
烏龍茶:半発酵茶

茶葉はもともとは緑色だから、発酵させない緑茶はその色になる。
発酵が進むと葉は赤色になるから、烏龍茶や紅茶もそんな色になっていく。
極限まで発酵させたら紅茶、発酵を途中でストップさせたら烏龍茶の出来上がり。
ちなみに烏龍茶は「青茶」に分類されて、緑茶→白茶→黄茶→青茶→紅茶の順に発酵のレベルが高くなっていく。

このうち紅茶と烏龍茶には、茶葉の水分を取り除く「萎凋(いちょう:Withering)」という乾燥作業を行うけど、緑茶は基本的にそんなことはしない。
ということで相手が日本人か欧米人かのほかに、茶葉の発酵度合いによっても「tea」は紅茶にも緑茶にも訳すことができる。

ちなみに紅茶が「ブラックティー」と呼ばれるのは、茶葉の色が黒いから。
これはアッサムティーの茶葉。

 

画像:Paweł Więcek

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。