日本で有名だけど無名な「包丁」。由来は中国の伝説的料理人

 

英語で単に「ナイフ(Knife)」というと、包丁を意味することが一般的。
日本人はハンバーグやステーキを切る刃物をナイフと言うけど、アメリカ人はあれをテーブルナイフと呼ぶらしい。

なんで日本人は食事で使うテーブルナイフを「ナイフ」と言うのか?
その理由には、「生き物を殺してはいけませんよ~。来世でムゴイ目にあいますよ~」という仏教の教えから、江戸時代まで肉食がほとんどなく、日本で肉料理が発達しなかったことがあるはず。
それに日本には、すでに「包丁」という言葉が古代からあって不動の地位を占めていたから、ナイフとかいう新参者が入り込む余地はなかった。

 

この包丁という言葉はもともとは外来語で、由来は中国の古典『荘子』に出てくる「庖丁」といわれる。
こでいう庖丁とは刃物ではなくて料理人のこと。
*昭和になって常用漢字が制定されてから、「庖」は「包」と書き換えられるようになった。

この庖丁さんは、ソーマや味吉陽一が料理バトルを挑んでもたぶん勝てないような中国のレジェンド料理人で、なにより実在した人物だ。

産経新聞のコラム「産経抄」(2021/11/26)

戦国時代の魏の恵王に仕え、主君のために見事な技で牛を解体した伝説の名料理人である。それを語源とする包丁は、昔も今も料理人にとって命そのものである。

「11月26日」

 

ただ、「包丁」とは個人の名前ではない。
庖は「台所」、丁は「召使としての成年男性」の意味で、その2つを組み合わせた包丁は古代中国で「台所で働く成年の召使男性」を指した。
だから魏の恵王に仕えた伝説的料理人の包丁も、そういう職名だったと思われ。

日本では奈良時代のころ、料理用もほか用途のものも、刃物はすべてひっくるめて大和言葉で「刀」(かたな)と言われていた。
平安時代になってから、庖(台所)で働く料理人を「庖丁者」や「庖丁人」と呼ぶようになり、いつしか人間から離れて「刃物=包丁」となる。
長い歴史の中で日本人になじみ親しんでいるアイテムだから、西洋由来のナイフにその座を奪われることはなかった。
いまのほとんどの日本人は気づいてないけど、包丁さんほど日本で有名な中国人はいない。

 

おまけ

包丁を知らない日本人はいないけど、それがそういう中国人に由来することを知ってる人は少ない。
似たような言葉にスピードを表す「マッハ」がある。
マッハ2は音速の2倍、マッハ3なら音速の3倍で、鉄腕アトムはマッハ10、ウルトラマンはマッハ5の早さで空を飛ぶ。
このマッハの由来は、音速を超えた時にうまれる衝撃波を見つけたオーストリアの物理学者、エルンスト・マッハにちなむ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。