「スシ」も人種差別：日本人の無神経な言葉に怒る外国人

最近フランスで、韓国人のサッカー選手が人種差別の被害にあったらしい。
でも、それを伝える韓国メディアのタイトルに違和感が。

中央日報（2021.12.01）

＜サッカー＞「サムライ」「スシ」…石鉉俊がマルセイユから人種差別

フランスのマルセイユで行われた試合で、「トロワ」に所属するの石鉉俊（ソク・ヒョンジュン）選手に対する人種差別発言があったという。
この日、ソクが選手が相手選手の攻撃を防ぐと、マルセイユのベンチから「サムライが２回も防いだ」「彼はスシを作るはず」という声が上がった。
それをしっかりマイクが拾ってしまう。
フランス・メディアはこれを「人種差別発言」と受け止め、トロワ側は、

「多様な人種と文化を尊重するサッカーで容認できない発言だ。我々はあらゆる形態の人種差別と外国人嫌悪を糾弾する。」

という怒りの声明を出した。

事故に巻き込まれたカッコウの日本のネット民の感想がコレだ。

・サムライと寿司の起源は韓国なのに何が不満なんだい？
・いや日本人だと思われてるってことやろ
・壁画にあったろ
・テコンドーが二回も防いだって言えば良かったのか
・これ高度な皮肉やろ
・これはアジア人として怒ってくれてありがとうなんか？

ちなみにヤフコメを見ると、そこにはこんな言葉があってコメントを表示できない状態になっている。

「違反コメント数などが基準を超えたため、コメント欄を自動的に非表示にしています。
詳細はこちらをご覧ください。」

フランスか韓国に対して、大量の侮辱語や差別語が寄せられたのだろう。
こういう汚い言葉はネットでは日常茶飯事だ。

「サムライが防いだ」
「彼はスシを作るはずだ」

そんな言葉がアジア人（本来なら日本人）への人種差別になると聞いて、意外に思った人も多いのでは？
もしマルセイユの誰かが「テコンドーが二回も防いだ」、「彼はキムチを作るはずだ」と言ったとしても、同じく差別行為とみなされるはずだ。
でもこれが日本ならどうだろう？
海外の日本人選手が相手の攻撃を防ぐ活躍を見せたうえで、サムライ・スシと言われるのを聞いても、「人種差別だっ！」とメディアが取り上げることはないし、「そのぐらいならいいのでは？」とスルーする国民がほとんどだと思う。
でもフランス人の感覚だとアウトらしい。

ここ最近の欧米社会では差別問題には超敏感肌になっているから、特定のステレオタイプのイメージを人種に当てはめて相手をやゆする発言は絶対にマズい。
高原直泰選手や香川真司選手などドイツのサッカーリーグで日本人選手が活躍すると、「スシボンバー」とよく呼ばれた。
知人のドイツ人の話では、「スシ」はドイツ人なら誰でも知ってる日本の象徴で、「爆弾」というほど強烈な印象を与えたということだから、「スシボンバー」というニックネームには親しみや驚きが込められている。
だから、けっして侮辱語ではない。
でも、最近のドイツ社会を見ていると、数年前ならOKだった「スシボンバー」も、日本人への侮辱意識がないから差別語にはならないだろうけど、テレビやラジオで使うには不適切な言葉とみなされるだろうとのこと。

2016年に米ロサンジェルスのチャイナタウンで、中国系アメリカ人にレポーターが、
「あいさつする時はお辞儀をすべき？」
「空手を知っている？」
といった質問をして、「アジア人蔑視だ」と批判が殺到した。
ニューヨーク・タイムズ紙の記者は「私が見た中でも特にあからさまな人種差別」と言う。
くわしいことはこの記事を。

アメリカの人種差別：「空手を知ってる？」もアジア人蔑視に。

いまちょうど、むごいニュースを見た。
北海道苫小牧市の職員が生活保護受給者について「人間ではない」、「野蛮だから時計をしていくと襲われる」とツイッターに投稿したことが分かって大問題になっているという。

この言葉が侮辱語や差別語であることのは誰でもわかる。
でも、日本にいる外国人からは、カレーとインド人と結び付けるといった、悪気はないけど配慮もない日本人の言葉にイラっとした、という話をたまに聞くのですよ。
こんな発言をすると、相手や場所によっては配慮以前に、基本的な人権意識が欠如しているとみなされるというのがいまの時代だ。
匿名でネットに書き込んだり、日本人だけでの話ならまだしも、公の場や外国人を相手に、ステレオタイプのイメージと人種や民族をくっつける発言はNGだ。
「そんなつもりじゃないっ」と言っても差別問題では、かなり高い代償を払わないといけないことが多い。