真珠湾攻撃から80年:日米の友情を確認し、失敗からは学ぶ

 

80年前の12月7日、日本がハワイのホノルルにある真珠湾に攻撃をおこない、翌8日にアメリカ・イギリスに対して宣戦布告をしてあの戦争が始まった。
真珠湾攻撃は宣戦布告より先で、多くの米兵が亡くなったことから、アメリカでは「だまし討ち」として評判が悪い。
でも、バイデン米大統領はかつての敵国だった日本はもういないと明言。

日本経済新聞の記事(2021年12月4日)

米大統領「かつての敵国、同盟国に」 真珠湾攻撃80年で

声明のなかで、「この日は80年たった今でも悪名高い日になっている」と指摘しているから、やっぱりアメリカ人にとって真珠湾攻撃はいまでも印象最悪らしい。
それでもバイデン大統領は「かつての敵国を同盟国に変えた国際システムの基礎を築いた偉大なる世代に感謝する」と強調する。

この力強いメッセージに日本のネットでも感動する人が続出、ということは特にないようだ。

・よりによってクリスマス間近に爆撃だからな
アメリカを本気で怒らせたよ
・真珠湾の博物館では真珠湾攻撃の戦略を絶賛する展示があるそうだね。
・通信傍受して知ってたくせに何が奇襲だよ
・アメリカに敗けて良かったよ。
なまじ戦前の体制が温存されていたら、目も当てられない国になっていた。
・WW2は日本の負け
だが白人の負けでもある
植民地ほとんど失ったろ?

オースティン米国防長官も7日に発表した声明で、日本について「昔の敵は今では最も親しい友人になっている」と述べた。

 

80年ほど前は戦争で互いに殺し合ったことは事実で、その歴史は後世に伝えていかないといけないとしても、憎しみや恨みを現在に引きずってはいけない。
そうすれば良い友人にも、力強い同盟国にもなることができる。
広島や真珠湾は日本人やアメリカ人や人類に、そんなことを教えてくれる場所だ。

2016年5月にオバマ氏が現職のアメリカ大統領としては初めて広島を訪れて、平和記念公園にある原爆慰霊碑に献花をした。
するとその年の12月、安倍首相がハワイの真珠湾を訪れて、現在の日米の和解や同盟関係の強さをアピールした。
真珠湾で日米首脳会談をおこなったあと、オバマ大統領はこう語る。

「戦果より和解にこそ価値がある。戦争の傷は友情に変わり、日米同盟はかつてなく強固になった」

 

真珠湾で日本軍の攻撃を受ける戦艦アリゾナ

 

過去の戦争に学んで、「憎悪」を生み出すような歴史教育ならしないほうがマシ。
「過去はカコ、今はイマ」で和解という結論を導き出すことは大事。
でも、太平洋戦争では300万人以上の日本人が命が失われたのだから、過ちを繰り返さないためにも反省は必要だ。
ということで『失敗の本質』ですよ。

これは日本軍が犯した失敗について、組織の特性に着目してその原因を追求した名著。
これは現在の日本人にも当てはまる内容で、新浪剛史氏(サントリー社長)が愛読しているし、小池百合子都知事は「座右の書」として称賛した良書だ。
その本をひも解くと、太平洋戦争の失敗についてこう書いてある。

作戦目的があいまいであり、しかも中央と現地とのコミュニケーションが有効に機能しなかった。情報に関しても、その受容や解釈に独善性が見られ、戦闘では過度に精神主義が誇張され た。

「失敗の本質 (ダイヤモンド社) 戸部 良一、寺本 義也その他」

 

リーダーが目的とそれに到達する手段を明らかにして、所属するメンバーに「これ何のためにやってんの?」といった疑念を持たせないようにする。
現場のようすを正確につかんで、トップが的確な指示を出す。
希望的観測や相手を否定したい気持ちから、情報を理解したり発信してはいけない。
こうしたことは政府のコロナ対策を含めて、日本のいろんな組織に当てはまると思う。

 

 

世界で日本とインドだけが行うこと ~平和について①~

【戦争と平和】74年前の日本兵の不安→これが今の日米関係

インド人「戦争はしてはならない。だから核兵器は必要なんだ」~平和について②~

キューバ危機とその後のデタント~平和について③~

「恐怖の中の平和」 ~平和について④~

平和について、語っていいですか?

 

4 件のコメント

  • 日米両国の歴史上最大の災難ともいえる太平洋戦争の敵対関係から、今や世界で最も緊密な友好関係へと発展させた両国の包容力が、まさに世界最先進国といえます。しかし韓国と日本はそんな戦争がなかったにもかかわらず、まだ両国の心情的壁は世界で一番高い水準だというのが虚しいですね。もちろん、そのほとんどの原因は韓国にありますが···。
    今日もソウルの日本大使館前では、慰安婦少女像を撤去しなければならないという、ある賢明な韓国学者の一人デモがありました。勿論、その反対側ではその学者を非難するデモもありました。しかし、韓国人たちが少しずつ目覚めていて、歴史の真実はいつかは明らかになるはずだから、韓日の未来も、暗いばかりではありません。

  • > 希望的観測や相手を否定したい気持ちから、情報を理解したり発信してはいけない。
    > こうしたことは政府のコロナ対策を含めて、日本のいろんな組織に当てはまると思う。

    日本のいろんな組織にも当てはまるでしょうけど、個人のいろんなブログにも当てはまりますよね。

  • 政治的な対立を解くには、日本の納得できる解決案を韓国側が提示することが不可欠です。
    それとは別で、民間での交流はけっこう進んでいて、わたしの周りでも韓国に興味なかった人がドラマや歌手で関心をもつようになった人が多いです。

  • > 歴史の真実はいつかは明らかになるはずだから、韓日の未来も、暗いばかりではありません。

    両国の人間(特に、世論をリードする影響のある政治家、メディア、一部ネット民)が正しい方向へ努力を続けて、それでもなお30年はかかるでしょう。

    日本社会においても今なお、太平洋戦争へ向かう大きな原因を作った者たちは、そのことに口をつぐんで「軍部と政治家」それと「一般世論」の責任にしています。
    当時、一般国民が自分たちだけで「世論」を形成する力がありますか? 現在のNET社会のように国民の一人一人が誰でも世の中に自分の見解を広く訴えることができる時代だったらともかく。
    そうじゃありません。
    当時、軍部と政治家の言うがままに先棒を担いで一般国民を扇動し、世論を誤った方向へ誘導したのは、他でもない「新聞・ラジオ」を中心としたメディアですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。