【フランス外人部隊】目的や歴史、伝説的なカマロンの戦い

 

2日前の3月10日、1830年のこの日に「フランス外人部隊」が誕生したんで、このまえこんな記事を書いたのですよ。

フランスの3月10日 絶対王政→革命・処刑→外人部隊の誕生

今回はこの部隊について、もう少しくわしく知っていきましょー。

 

フランス外人部隊はもはやひとつの伝説だ。
この部隊は世界的に有名で、日本のアニメやマンガでもこれをモデルにしたようなキャラや設定がよく使われている。
いま絶賛放送中のアニメ『86-エイティシックス-』の作者は、この作品が生まれたきっかけとして「自国民に戦争をさせてはいけないが、外国人で軍隊を作れば問題ない」という内容の記事を読んだことを挙げた。
これはフランス外人部隊ができた理由とソックリ。
1830年にアルジェリア征服戦争を始めると、フランス国民軍に想像を絶する死傷者が出たため、国民の非難を怖れたフランス政府は外国人を兵士として募集し、自国の軍隊の一部にする新しい部隊を創設することにした。
それで1831年3月10日、国王ルイ・フィリップが署名してフランス外人部隊が爆誕。
だからこの背景には、「外国人なら(死んでも)問題ない」という黒い意図があったのだ。

 

「7つの炎の手榴弾」を表す外人部隊の隊旗
中二病をくすぐるデザインと意味だ。

 

19世紀前半、アフリカのアルジェリアから小麦を輸入していたフランスは、「ここを支配しちゃえば小麦やパンを確保できて、食糧不足の不安がなくなるのでは?」と考えて、アルジェリアに戦争を仕掛けて支配してしまう。
さっき書いたように、フランス外人部隊はこのために創設された。

くわしい説明は英語版ウィキペデアにあるので、この記事ではそれを参照する。

The Legion was primarily used to help protect and expand the French colonial empire during the 19th century. The Foreign Legion was initially stationed only in Algeria, where it took part in the pacification and development of the colony.

French Foreign Legion 

 

The Legion(レギオン:フランス外人部隊)は、19世紀のフランス植民地帝国の保護と拡大に役立った。外人部隊は初めはアルジェリアだけに駐屯して、植民地の平和と発展に貢献した。

ということで最初フランス政府は、アルジェリアとの戦争や戦後の治安維持のために外国人兵士を利用する。
その後、役割は拡大して、ナポレオン3世の時代にはクリミア戦争、イタリア統一戦争、メキシコへの武力介入などに彼らが投入されていく。
アルジェリア征服戦争で創設された経緯から、外国人兵士はフランスの植民政策と密接にかかわっていて、上記のほかにもスーダン、ベナン、マダガスカル、モロッコといった仏植民地で彼らは活躍した。
世界各地で戦闘を行ったことで、フランス外人部隊の名は広く地球に知れわたるようになる。
フランス人じゃないし、損害を受けても国民からの非難(=政権へのダメージ)が少ないという“使い勝手”の良さが、フランス政府にとっては魅力的だったはずだ。

 

フランス外人部隊が“伝説”となったのは(earned its legendary status)、1863年にメキシコ軍との間で激しい戦闘を行ったとき。(カマロンの戦い
このとき輸送部隊の護衛をしていジャン・ダンジュー大尉が指揮する外人部隊(彼を含めて65人)が、2~3000人のメキシコ軍と遭遇し戦闘になる。
メキシコ軍に完全包囲され、降伏を迫られたダンジューは「我々にはまだ弾がある。降伏はしない!」と戦闘を選択し、彼と彼の部隊は死ぬまでそこで戦い続け、65人中62人が死亡したところでカマロンの戦いは終わった。
この一戦のあと、メキシコ軍の司令官は彼らをこう称賛したという。

「こいつらは人間ではない、鬼だ」

絶望的な状況下でも降伏を拒否し、命がけで戦って敵を引き付けたことで、大量の補給物資を損害ゼロで目的地へ届けることができた。
カマロンの戦いはフランス外人部隊の”理想”とされて、ジャン・ダンジューは伝説的人物となり、彼が使っていた義手は外人部隊にとって最も貴重な遺物となる(the Foreign Legion’s most precious relic)。

この戦いが行われた4月30日をフランス外人部隊は「カメロン記念日」として、彼らの勇気や自己犠牲を称え、その日には本部で彼らの「最も貴重な遺物」を公開している。

 

フランス外人部隊の「あるべき姿」を象徴しているダンジューの義手

 

 

舞台になっている架空の「サンマグノリア共和国」の街並みはフランス共和国っぽい。

 

 

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2 件のコメント

  • フランス外人部隊(傭兵)の話は小説などにもしばしば登場しています。この記事で紹介されている最近のアニメ「86ーエイティシックスー」がおそらく下敷きにしたであろう昔のマンガ、新谷かおる作「エリア88」という作品も、戦闘機を操る傭兵たちの物語です。その登場人物たちは、自分自身のことを「外人部隊(エトランジェ)」とフランス語で呼んでいました。
    また、外人部隊を主人公にした経済サスペンス小説の最高傑作とも言われるのが、F.フォーサイス作「戦争の犬たち(1974)」です。映画化もされています。この小説の主人公は作者と同じくイギリス出身の傭兵なのですが、そのライバルとして、フランス人の傭兵も作中に登場します。作者のフォーサイスは、なんと、自分で金を出して傭兵部隊を雇い、アフリカの小国でクーデターを起こそうと本気で計画していたらしいです。

    フォーサイス作品では「ジャッカルの日」という暗殺者の物語が超有名なのですが、他に「悪魔の選択」という小説があります。これは、旧ソ連時代を舞台に、当時はソビエト連邦の一部であったウクライナで民族主義者が独立を掲げて、ヨーロッパで大規模テロを仕掛けるという話。50年も前から既に現状を予言していたような話であり、これを思い出した時はコワかったです。

  • 「エリア88」のことは別の記事で書こうと思ってました。
    これは日本アニメの傭兵・外人部隊のイメージに大きな影響を与えましたね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。