【警察官の犯罪】ロシアは特権乱用するな! 怒る米も拒否権行使

 

「ミスター・ニエット」

国連の安全保障理事会で、ソビエト代表のアンドレイ・グロムイコ氏は1946年~49年の3年間で、拒否権を42回も使いまくって「ミスター・ニエット(ノー)」と呼ばれた。
その悪いクセがまた出たから、今度という今度はアメリカがぶちギレる。

読売新聞(2022/04/13)

安保理で拒否権行使なら…総会で説明責任、米が決議案準備「ロシアが特権乱用」

ウクライナ侵攻についての議決が出ても、ロシアが拒否権を行使して白紙に戻してしまうから、安全保障理事会がまったく機能しないでいる。
だからアメリカや西ヨーロッパの国を中心に、拒否権を使えない国連総会でロシア非難を行っているのだが、これにはあまり力がない。
ただロシアを非難する決議にロシアが賛成するわけがないから、これは当たり前のことだろうと。

それでアメリカのグリーンフィールド国連大使は、これから安全保障理事会で常任理事国が拒否権を使った場合は、国連総会でその説明を求めることを提案するという。
拒否権を使った理由を世界に向かって説明させることで、その乱用に歯止めをかけたいらしい。

 

第二次世界大戦の末期、アメリカのルーズベルト大統領が安定した世界秩序を維持するため、「4人の警察官」という構想を考えた。
国際連盟ではこの大戦を止めることができなかったという反省から、戦勝国の中心にいた米英中ソの4カ国が協力して、「世界の警察官」という立場から国際社会の平和を維持していこうと。
後にフランスが加わって、国連安保理の5つの常任理事国が誕生することとなる。
そしてこの5カ国にだけ、拒否権という特権があたえられた。

それから時が流れて21世紀になったいま、常任理事国がウクライナへ武力侵攻して世界を驚かす。
警察官が戦争犯罪を犯した場合、いったい誰が止めたらいいのか?
こういう戦争を止めるのが安保理の最大の役割なのに、ロシアが拒否権を使って、安保理を機能不全におちいらせている。
それでアメリカが「特権の乱用だ!」と激怒した。まあ、それはそうなんだが、でもチョット待ってほしい。
そんなアメリカさんもイスラエルの非難決議が出されると、拒否権を使って何度も葬り去ってきたのでは?

拒否権なんてもう時代に合ってないのだ。
そんな戦勝国の特権は廃止しようという動きは過去に何度かあったけど、いつもはいがみ合っている世界の警察官も、そういう時だけは一致団結して反対するからうまくいかない。

毎日新聞のコラム「余禄」(2022/4/7)

日本を含め、安保理の構成や拒否権の見直しを求める国は少なくない。だが、改革の声が高まると、普段は対立している5大国が足並みをそろえて特権を守ろうとしてきたのが現実である

「4人の警察官」は第二次大戦中に…

 

今回の国連改革も甘いしぬるい。
常任理事国が拒否権を使うのなら、それに説明責任を負わせて乱用を防ぐという案なんだが、拒否権の行使そのものにはまったく手を付けていない。
「拒否権は廃止するべき!」ではなくて、アメリカも使えるようにした上で「乱用防止」を考えるから、こんな中途半端なものになる。
それに事後説明なんて、テキトーにすればいい。
いま現在、「民間人の虐殺はウクライナの仕業だ。戦争犯罪を犯しているのはウクライナだ」と説明しているロシアに、一体どんな説明を期待しているのか。

ウクライナのゼレンスキー大統領も、いまの事態に無力な国連を改革するよう訴えた。
でも、ウクライナを全力で支援すると表明しているアメリカもイギリスもフランスも、その声にはきっと耳を貸さない。
結局、常任理事国という世界の警察官は、特権を絶対に手放したくないのだ。
といっても、国連安保理を全否定することはない。
でもそのていどの機関だから、あまり期待や信頼をしてはいけない。
自分の身は基本的に、自分で守らないとダメなのだ。

 

 

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1 個のコメント

  • > 結局、常任理事国という世界の警察官は、特権を絶対に手放したくないのだ。
    > といっても、国連安保理を全否定することはない。
    > でもそのていどの機関だから、あまり期待や信頼をしてはいけない。
    > 自分の身は基本的に、自分で守らないとダメなのだ。

    まったくその通りです。仮に、常任理事国の拒否権を取り上げたりしたら、アメリカはともかく、ロシアや中国なんかはすぐに国連から脱退してしまうでしょうね。
    戦前の日本がそうであったように。

    あと、常任理事国の拒否権という特権を弱める方法としては、一部の人が主張するように「拒否権を持たない常任理事国」という制度の創設がありますけど。これもおそらく、中国その他の国々が反対するだろうし。
    なかなか難しいですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。