【誤解される日本】ウクライナ、歴史認識のミスを認め謝罪

 

ことし2月、ロシア軍に攻め込まれて街は破壊され、多くの市民が犠牲になったことで、日本の世論は「反ロシア・親ウクライナ」になった。
でも思わぬ”風”が吹いて、いまその空気がゆらいでいる。

・千羽鶴送る送料すら勿体ないレベル
・日本のトレンド
昭和天皇
95,047件のツイート
・ウクライナはもうどうでも良いかな
・まあ別にいいじゃん
ただなんか助ける気なくすよな
・プーチン目線でウクライナを見れるようになりそうな自分がいる

ネットでこんな声が噴出し、「ウクライナ支持」の熱が急速冷凍したのは、ウクライナ政府がしてはいけないミスをしたからだ。
どこの国にも歴史や政治問題で、それに触れたら国民が一斉に立ち上がるというタブーがある。
ウクライナ政府が先日、公式ツイッターで「we will fight rashism, here and now」(私たちは今ここで、ラシズムとと戦っている)とメッセージを投稿した。
ロシア(Russia)+ファシズム(fashism)をくっつけたラシズム(rashism)という造語は、ウクライナでは「ロシアのファシズム」といった感じで、ロシアを非難する意味で使われているらしい。
これだけなら事実だし、日本人を刺激する要素はゼロ。
でも、そのツイッターの動画にこんな画像があったから、日本人の気持ちを一気に冷めさせた。

 

ウクライナ政府のツイッターのキャプチャー(いまは修正済み)

 

第二次世界大戦のとき、たしかに日本はドイツやイタリアと軍事同盟を結んでいた。
でも、天皇をヒトラーやムッソリーニと並べて、「ファシズムとナチズムは1945年に打倒された)」と表示することは間違っている。
歴史認識の点でも、支持者を敵に回すという面でもこのツイッター投稿は失敗だ。
「よりによって昭和天皇をファシスト呼ばわり もう、許せないよ!!」とネットで書かれても仕方ない。
恩を仇で返された感から、ウクライナへの寄付金を後悔する人もいた。
「これがウクライナの本性。信用しないほうがいい」と、例外的に存在する日本の「反ウクライナ・親ロシア」勢力に利用されたことでも、このウクライナ政府のミスは痛い。

 

戦争終結時、昭和天皇の「戦争責任」は大きなテーマになって、連合国内でさまざまな議論が行われた結果、昭和天皇の責任は認められないという結論に達し、日本の戦争犯罪を裁く東京裁判でこの件は不問になった。

昭和天皇の戦争責任論

でも、これを追求する声はあったし、いまでもネットには天皇の戦争責任を追及する人はいる。
賛否両論、危言覈論、鳩首凝議、喧喧諤諤、諸説紛紛。
個人としてはいろんな見方があって、活発な議論になるのはいいとしても、一国の政府が昭和天皇に戦争犯罪を負わせる認識は間違っている。
千歩ゆずって東条英機ならまだしも、政府公式ツイッターが戦争責任のない昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと一緒に並べて、「打倒されるべきファシズムとナチズム」というメッセージを投稿したことはもう言葉を失うレベル。
歴史認識の面でも、現実的な効果としても不適切で失敗だった。
これは「日本のタブー」ではなくて、日本についての誤解だ。

でもこの投稿の直後、多くの日本人が声を上げた結果、

「Our sincere apologies to @japan for this mistake. We had no intention to offend the friendly people of Japan.🇺🇦🇯🇵」

とウクライナ政府の公式ツイッターで、「この失敗を謝罪します。日本の友好的な人々を不快にさせる意図はありませんでした」と謝罪声明が出された。
で、ミスを修正し、新しく公開した動画(We have corrected it and posted the new video here)がこちら。

 

 

ウクライナのコルスンスキー駐日大使も「制作者の歴史認識不足と思われます」、「ご不快に思われた日本の皆さまにまずは深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

外国人のネットへの書き込みを見ると、いまでも昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと同一視する人はけっこうフツウにいる。
今回ウクライナ政府が間違いを認めて修正しなかったら、そんな誤解が事実として広く世界に定着するところだった。
まだウクライナを恨んで、ネガティブ・コメントを書き込む人(親ロシア勢力かな?)がいるけど、ウクライナ政府が「心からお詫びいたします。(Our sincere apologies)」と言ったのだからもう非難はイラナイ、またウクライナを支援しよう。
ただ、海外ではこんな誤解があることや、それに対して声を上げることは重要で効果的ということは覚えておこう。

 

 

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3 件のコメント

  • 三浦 淳(新潟大学人文学部)
    「外国では受容者=弟子としてペコペコし、逆に国内では輸入品を振りかざして啓蒙家=教師を気どる——これが明治(建国)以来、日本の二流知識人が一貫してとってきた行動様式だった。 同じ知識階級でも一流ならこういう莫迦な真似はしない。 日本の欠点は欠点として指摘し、しかし対外的にも言うべきは言う。 考えてみればそれは当然のことだが、この当り前のことが一番難しいのが日本の二流知識人なのである。」

    反捕鯨の病理学 (第1回)

  • > 第二次世界大戦のとき、たしかに日本はドイツやイタリアと軍事同盟を結んでいた。
    > でも、天皇をヒトラーやムッソリーニと並べて、「ファシズムとナチズムは1945年に打倒された)」と表示することは間違っている。

    そうですね。そのように日本人が主張したいのは私も理解しますが、ならば「なぜ間違っているのか」を論理的に説明する必要があると思いますね。特に、現代の若い人達と外国人に対しては。
    また、日本から遠く離れた東欧の国がそのような歴史認識であることは、まあ、率直に言って無理もないと思います。むしろ、日本からの抗議に応じて即座に謝罪・訂正してくれたことが望外の好意的反応でした。やはり自国に対する理不尽な見解には、声を上げて抗議することが重要ですね。

  • 一流でも二流でも別に構わないと思いますが、クジラを喰いたいのであれば、必要最小限度に留めることだと思いますね。宗教的に理解できないとしても、だからと言って、キリスト教系西側自由主義経済陣営から離れて生きていくことなど、日本にはできないでしょ? 仕方ありませんよ。
    クジラを喰いたけりゃ、それを「贅沢」として自覚し、それ相応の経済的負担に耐えるしかありませんね。捕鯨に、「伝統文化維持を目的とした」予算以上の補助金を出すことには反対です。

    因みに、自分にとっては、クジラ肉なんて給食の不味いオカズの典型であって悪い思い出しかない。二度と食べたくありません。
    クジラの肉だけでなく、骨やヒレなど必要とする産業・文化があることは知っています。美味しんぼとかで見たので。(まーでも、骨なんかプラスチックで代用してしかるべきですけどね。)

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。