ハレー彗星の出現に恐怖した人類 日本では「久安」へ改元

 

ウィキペデアによると紀元前240年のきょう5月25日、秦の始皇帝が治めていた中国でハレー彗星が確認された。
ハレー彗星出現の記録としては、『史記』にあるこの記述が世界最古。といっても「要出典」とあるから、精度はその程度のものと考えておこう。

 

1986年に撮影されたハレー彗星

 

ハレー彗星はとても明るくて肉眼で見ることができるから、むかしの人なら、いまよりもっとハッキリ見えたと思われる。
でも、科学や天文学が発達してなくて、一般的に正しい知識が広がっていなかった時代、ハレー彗星の接近は人々に不安や恐怖をよんだ。
1910年にハレー彗星がやってきた時には、「大気中にガスが充満して、全生命体が死ぬかもしれない!」 とフランスの天文学者がでたらめな主張をしたせいで、パニック状態になってガスマスクを購入した人もいた。
アメリカではハレー彗星による災害を免れるために、処女を生贄(いけにえ)にしようとしたアホの宗教団体があったし、中国にはこんな記録がある。(ハレー彗星

「人々はハレー彗星が戦争、火災、疫病、王朝の交代のような惨事を引き起こすと信じていた。一部地域では家の扉が半日開かない日や水が運ばれてこない日もあった。彗星のせいで地球上には有害な蒸気で満たされているとうわさされていて水を飲まない人さえもたくさんいた。」

この翌年、1911年に辛亥革命が起こって清朝が滅亡したから、ハレー彗星が人々に何らかの心理的影響を与えていたかも。

 

紀元前2世紀のバビロニア粘土板に、ハレー彗星が出現したっぽい記述がある。(大英博物館)

 

さて、平成さんが役目を終えて、新元号の「令和」が始まってからもう4年になる。
いまのように一人の天皇につき、一つの年号を用いる制度を「一世一元の制」といい、これは明治時代に始まったわりと新しいシステムだ。
古代から江戸時代までは災害や疫病とか不幸なことが起きたり、珍しい動物が見つかるといっためでたいことがあると、わりと簡単に元号が変えられていた。
だから、たとえば室町時代の後花園天皇は「正長」の時代に生まれて、その後、嘉吉→文安→宝徳→享徳→康正→長禄→寛正と36年の在位の間に8回も改元している。

こんなふうに良くも悪くも、世の中で大きな変化があると日本人は元号を変えてきた。
ハレー彗星の出現も、十分その理由になる。
平安時代末期の1145年にはそれが理由で、元号が天養(てんよう)から久安(きゅうあん)へ変えられた。
いまだと京都にある高級割烹の店名のようだけど、「久安」という元号からは、ハレー彗星に不安と恐怖を感じた当時の日本人の心情がうかがえる。
でも、このあと暴風や洪水が起きたから、わずか6年で1151年に「仁平(にんぺい)」へまた改元された。
ぜんぜん「久」でも「安」でもなかったというオチ。

 

いまはみんなが賢くなったからハレー彗星が出現すると聞いても、ガスマスクを買いに走る、処女を生贄にしようとする、戦争や王朝の交代のような惨事を引き起こすと考える人はいないし、日本ではもう改元の理由にはならない。
未知の恐怖を科学で克服するのが人類の進化だ。
といっても、ほんの100年ほど前はパニック状態になったから、ここまでくるのにずい分時間がかった。

 

 

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2 件のコメント

  • > ハレー彗星出現の記録としては、『史記』にあるこの記述が世界最古。といっても「要出典」とあるから、精度はその程度のものと考えておこう。

    Wikipediaではそうなっているのでしょうが、司馬遷『史記』「秦始皇本紀」始皇帝7年条「彗星先ず東方に出で、北方に見ゆ。五月西方に見ゆ」との記述については、ほぼ確実に正しい記述であるらしいですよ。それどころか、『史記』にはさらに遡った年代でのハレー彗星の記録もあるのだとか。
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72798

  • >これがハレー彗星出現の確実で最も古い記録とされているのです。
    >この日付は『史記』に載っていたものではなく、後世に計算によって導き出された近日点通過日、ということになります。

    最古の記録と考えられていますが、断定はできません。
    その可能性は高いと思いますが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。