きょう6月12日は1592年に、朝鮮出兵(文禄の役)で日本軍が朝鮮の首都である漢城を制圧し、小西行長・加藤清正らが入城した日。つーことで前回こんな記事を書いてみました。
きょう6月12日はフィリピンにとってスペシャルな日、独立記念日なので、フィリピンの新旧2人の国民的英雄を紹介しようと思う。
まず1人めは豊臣秀吉と同じ時代を生きたラブライブ、じゃなくてラプ=ラプ。
彼がフィリピンのマクタン島で部族長をしていた16世紀のある日、世界一周の航海をしていたマゼランとその部下がやってきた。
火縄銃や大砲などの強力な武器で威嚇しながら、マゼランはエラそうに部族長たちにスペイン王への朝貢、さらにキリスト教への改宗を求める。
そんな屈辱的な要求に対し、「だが断る!」と初めてノーと言ったのがラプ=ラプだ。
これに怒ったマゼランは1521年に彼を討つためにマクタン島へやってきたが、ラプ=ラプらフィリピンの戦士がマゼランを倒し、このごう慢なヨーロッパ人らを返り討ちにした。
このマクタン島の戦いで侵略者を撃退したラプ=ラプはフィリピンの英雄となり、偉人すぎてこんな伝説まで生まれた。
地元の伝説によれば、ラプ=ラプは不死のまま石になり、マクタンの海を守護しているのだという。マクタン島の漁師は、人間の形をした石に向かって硬貨を投げ、ラプ=ラプの領土の中で魚をとる許可を求める儀式を行う。
フィリピン人にとってマゼランは「侵略者」でも、スペインやポルトガルでは勇敢な冒険者だ。
フィリピン人にとってラプ=ラプはヒーローでも、スペイン人やポルトガル人はきっと別の見方をしている。
同じ人物・出来事でも、国によって見方が違うのはセカイの当たり前。
韓国では「侵略者」の豊臣秀吉は、日本では天下統一を果たした偉人で、韓国の「朝鮮侵略」の表記も日本では「朝鮮出兵」になる。
どっちが正しいのかではなくて、どっちも正解。
国によって評価が反対になることは「世界あるある」のひとつ。
そして次は1898年6月12日に、スペインに対して独立宣言を行った革命軍の最高指導者アギナルド。
エミリオ・アギナルド・イ・ファミイ(1869年 – 1964年)
マクタン島の戦いでラプ=ラプらが撃退したものの、その後やってきたスペインに支配されフィリピンは16世紀からその植民地となる。
異民族による支配はどの国でも屈辱の歴史として描かれているが、その時代を「100%悪」と切り捨てる国は例外的。
フィリピンでのスペイン支配の”光”の面をみるなら、これによってフィリピンが初めて統一されたということがあげられる。(スペインの基礎知識)
ちなみに国名はスペインのフェリペ皇太子(後の国王フェリペ2世)にちなんでつけられた。
でも、植民地支配はやっぱり屈辱的で耐えがたい。
19世紀後半にナショナリズムが高揚すると、フィリピンで独立を求める動きが高まってくる。
知識階級の人たちが非暴力的に、マイルドなやり方でフィリピンの改革を進めていこうとしたら、スペインの徹底的な弾圧を受けたため、「力には力で」の考え方から武力闘争へと変わっていく。
このへんはイギリスに対するインドの「ガンディー路線」の反対だ。
カティプナン
「力には、もっと大きな力で」というスペイン側はこの動きを封じるために、中心人物のホセ・リサールを逮捕し銃殺する。
そしたらこれが、むしろ闘争本能に火をつけた。
ホセ・リサールが処刑された年の1896年、独立を目指す秘密組織「カティプナン」と、それを断固阻止するスペイン側との本格的な戦いがハジマタ。
この動きのなかで、アギナルドはカティプナンのリーダーとなる。
その後、スペインに対し連戦連勝したアギナルドらカティプナンは、ついに独立を達成しました。めでたしめでたし。
とウマイことはいかず、どうしてもスペインには勝てなかったアギナルドは香港へ亡命し、自転車業を営むこととなる。
でもこのあと1898年にアメリカとスペインとの米西戦争が始まると、「自転車屋やってる場合じゃねえ!」となって、アメリカの支援をとりつけたアギナルドは再び革命運動に身を投じる。
独立戦争の再開を宣言すると、今度はうまくいってスペイン軍に勝利し、アギナルドはその年の6月12日にフィリピンの独立を宣言した。
翌99年にフィリピン第一共和国が成立すると、アギナルドは初代大統領に就任。
だがしかし、スペインとの戦争に勝ったアメリカはとつぜん記憶喪失になったようで、以前かわした約束を無視してフィリピンの独立を認めず、自分たちの支配下に置こうとする。
今度はアメリカとの戦争(米比戦争)が始まり、1901年にアギナルドがアメリカ軍に拘束されてフィリピン第一共和国は瓦解。
フィリピンは16世紀以来の自由と解放をホンの一瞬味わったあと、次はアメリカの植民地となった。
でも、侵略者を撃退して国土を守った人物や、異民族支配に反旗を翻し、自由を勝ち取った人物はどこの国でもヒーローになるから、現在のフィリピンではラプ=ラプとアギナルドが国民的英雄になっている。
侵略者であるモンゴル軍を撃退して国を守った北条時宗が、国民的英雄になっていない日本のような国は世界でもめずらしい。
フィリピンのラプ=ラプぐらい、国民から尊敬されてもいいのに。
スペイン語で「万歳!!!フィリピン共和国万歳!!!」と書かれたフィリピン革命軍旗
“親日度90%”のフィリピンで、ボルテスⅤの人気はすごかった
太平洋戦争の現実①敵は“飢え”。日本兵がフィリピンでしたこと
コメントを残す