朝鮮出兵で日本になぜ負けた? 内輪モメに勝利するも国王逃亡

 

きょう6月12日は1592年に、朝鮮出兵(文禄の役)で日本軍が朝鮮の首都である漢城(現ソウル)を制圧し、小西行長・加藤清正らが入城した日。
九州から北上してきた日本軍は釜山に上陸すると、その後は朝鮮半島で次々と敵を撃破しながら北上していき、開戦から21日目で首都を陥落させる。
国王や側近らはその直前に急いで逃げ出していたから、日本軍が漢城に入城したときにはすでに彼ら上級国民の姿はなし。
ほかの人間はどうでもいい。とにかく自分たちだけは助からないといけないと、国も民も置き去りにした王たちを見る民衆の目はとても冷たかった。

漢城府から逃げ出す際自らの王にも関わらず石を投げる者もおり、宣祖の一行は進む先の村々で住民と出会ったが、住民たちは王が民を見捨てて逃げることを悲しみ、王を迎える礼法を守らなかった。

朝鮮国王の都落ち

 

自分たちを捨てた朝鮮政府を見限って、日本軍に協力する者が続出したというし、ヨーロッパ人宣教師のルイス・フロイスも、

「(朝鮮の民は)恐怖も不安も感じずに、自ら進んで親切に誠意をもって兵士らに食物を配布し、手真似で何か必要なものはないかと訊ねる有様で、日本人の方が面食らっていた」

と記録する。
そういえばソウルの京福宮に行ったとき現地ガイドが、「朝鮮侵略で日本軍はこの王宮を燃やしました」と説明してたっけ。
でも、それは間違い。
当時、無政府状態となった漢城で奴隷の身分を記録した書類を焼いて、金品財宝を奪い、京福宮に放火したのは朝鮮の民衆で、小西行長や加藤清正が見たのはその焼け跡だ。

 

首都から逃亡する国王ら一行

 

たった3週間で、首都を占領されるという大惨事を招いた原因はなにか?
その大きな原因のひとつに、朝鮮側の油断と自滅がある。
朝鮮出兵が始まる前、「秀吉が攻め込んでくるのでは?」という気配は朝鮮政府も感じていて、それを確かめるため使者を送って日本の様子をさぐらせた。
その使者には、朝鮮の官僚たちが組織した派閥の「東人」と「西人」の人間がいた。
日本で秀吉と会って話をして、戻ってきた東人派の金 誠一(キム・ソンイル)と西人派の黄允吉 (ファン・ユンギル)はまったく反対の報告をする。

西人の通信正使・黄允吉は、日本が多くの兵船を準備しており、必ず侵略すると主張したのに対して、東人の金誠一は侵入する兆しがないばかりか、豊臣秀吉は恐れるほどの人物でもないと言った。

「朝鮮王朝実録 朴永圭(新潮社)」

朝鮮時代の官僚(両班)の家

 

「日本は必ず攻めこんで来ます!我々は備えるべきです」と主張する西人の使者に対して、「いえ、それはありません。秀吉は雑魚キャラ同然です」と東人の使者は言う。
すると派閥の利権・勢力争いに発展して朝鮮政府は2分され、結局は東人グループが勝って「日本は攻めてこない」という黄允吉説が採用された。

国家存亡の危機に際し、朝鮮人どうしが互いを敵にして争うというのは、沈没する船の中でどっちが船長になるか争うようなもの。
この内輪モメの末、「豊臣秀吉は恐れるほどの人物でもない」という意見が通って、朝鮮は油断し国内の防備をおろそかにしてしまう。
その結果、日本軍の無双を可能にし、国王があわてて首都から逃げ出して「自らの王にも関わらず石を投げる者もおり」という状態を招く。
「どちらの情報が正確なのか?」ではなくて、「アイツらに主導権を奪われたくない!」という思いから権力闘争をはじめ、東人が西人に勝利して日本に首都を奪われた。
アニメならシーズン1の最終話で、シーズン2の「王の帰還」を期待させるようなオチ。

 

国民そっちのけで、政敵を倒すことに全集中する韓国の政治家の悪癖は過去の話でもない。
数年前にムン政権が誕生すると「積弊清算」を理由に、前政権を徹底的に攻撃したけど国民生活は豊かにならなかった。

朝鮮日報(2022/05/10)

「文在寅政府の改革」も「改革」という外見だけを装った単なる政治闘争にすぎなかったようだ。国民は改革に疲れ、生活は何ら向上しなかった。

【コラム】文在寅の無責任、尹錫悦の責任

 

そして先月、ユン政権が誕生すると、今度はムン政権への”攻撃”を開始するような気配があることから、「無用な改革を打ち出して国民を疲れさせないようにしてほしい」と朝鮮日報はブスッと釘をさす。
まあ国内の敵を倒すことに夢中になって、国全体を危機におとしいれることはきっと世界中の国である。

 

 

Kpopアイドルと韓国の歴史認識。”豊臣秀吉が好き”で猛批判。

韓国人「なんで世界的な陶磁器がないのか?」・日本の伝統文化の育て方

景福宮(ソウル)の日本語ガイドさんの説明では、ここに注意して。

日本・中国・韓国の関係。大国にはさまれて今もツラい韓国

 

2 件のコメント

  • 家の写真の後、西人→東人の順番であろう部分が西人→西人になってますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。