日本アニメに感動したフツウの理由と、トルコ人らしい理由

 

まえにドイツ人とトルコ人と話をしていた時のこと。
日本のアニメについて聞こうとして、「ジャパニーズ・アニメーション」と言ったら、「日本のアニメーションなら、“アニメ”だけでいい」とドイツ人が言う。
海外で「アニメ」といえば日本のアニメーションを指して、それ以外の、たとえばディズニーのものなんかは「アニメーション」と呼ぶという。
日本のアニメが大大大好きなトルコ人も「そうそう」と同意する。
日本アニメは表現やストーリーが独特だから、世界のそれ以外のアニメと区別されているらしい。

アニメとアニメーションの違いは「日本とそれ以外」

 

さて昨日7月14日は、日本初の国産テレビアニメが放送された日だ。
1958年(昭和33年)のこの日、メインキャラのモグラが夢の中で、宇宙旅行をするというストーリーの「もぐらのアバンチュール」がテレビで流された。

初めての国産カラーテレビアニメがこちら。

 

こうして始まった日本のアニメはその後、どんどんバンバン進化していく。
特にアニメの命とも言える「画」のクオリティーは『もぐアバ』と比べると、異次元のレベルに上がっていった。
上のトルコ人が日本アニメにハマった理由も、その“絵”の美しさだ。
光の当て方とそれによってできる影がすごくキレイだったり、目には見えない風を物の揺れ方でうまく表現するとか、日本人の描写はすごく繊細でディテールにこだわる。
ただ日本に来て生活してみると、日本人の細かさがメンドくさく感じることもあり。
このトルコ人だけでなくて、日本アニメの画力に目を見張る外国人はフツウによくいる。

 

数ある日本の『神作画アニメ』の中でも、高い評価を受けている作品がこれ。

 

そんな知人のトルコ人が好きなアニメに『Fate/Apocrypha』(フェイト・アポクリファ)がある。
その理由はとてもトルコ人らしくて、日本人の発想にはないものだ。
*下の動画で35秒あたりに出てくるおっさんに注目してくれ。

 

 

「ジャンヌ・ダルク」がヒロインになっているように、このアニメでは、歴史上の人物や神々が「サーヴァント」として召喚される。
そして自分を呼び寄せた人間を「マスター」と呼び、その臣下となった「サーヴァント」たちが壮絶な戦いを繰り広げるというバトルアクションもの。

このキャラ中に、ルーマニアにあったワラキア公国の領主ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)が出てくる。
このヴラド3世(1431年 – 1476年)は「串刺し公」や「ドラキュラ公」として歴史的に有名な人物だ。
彼はワラキアに攻めてきたオスマン・トルコ帝国の軍と何度か戦ったことがあり、1462年のトゥルゴヴィシュテの戦いでは、2万人のオスマン軍とブルガリアの兵を殺害したという。
ただ殺しただけじゃない。
ヴラド3世は生きたまま串刺しにして、オスマン・トルコの兵士として生まれてきたことを後悔させるような、そんな苦痛を与えながら息の根を止める。
後にその「串刺しの林」を見たオスマン皇帝メフメト2世は言葉を失った。

入城したメフメト2世を待っていたのは、ヴラド3世による大量のオスマン帝国兵の串刺しの林であり、それを見て戦意を失ったメフメト2世は、陣中に疫病が発生したこともあってワラキアから撤退した。

ヴラド・ツェペシュ

ヴラド3世

 

以上が、歴史上のヴラド3世だ。
アニメ『アポクリファ』にサーヴァントとして登場するヴラド3世は誇り高い人物で、「吸血鬼ドラキュラ」として汚された自分の名誉を回復することを悲願としている。
そんなヴラド3世にマスターが強制的に、ドラキュラに変身させるシーンがある。
汚名返上どころか、さらにそれを上塗りさせられる鬼畜な展開。
恐怖の表情を浮かべ、「たっ、頼む!それだけはやめてくれぇぇぇー!」と嫌がって叫ぶが、ヴラド3世は醜悪なドラキュラへと変身していく。
そしてほかのサーヴァントたちの総攻撃を受けて、最期はみじめに死んでいく。
そんなヴラド3世を見で、15世紀にご先祖を串刺しにされたトルコ人は「ざまぁみやがれぇぇぇ!ヒャッホーイ!」と歓喜したという。
「ヴラド3世は大嫌いでしたからね、あのシーンは本当にスカッとしましたよ」と笑顔で語る知人に、いまいち反応に困るボク。
その場面を日本アニメの画力、”神作画”で見れたのだから、トルコ人の感動はより一層高まったと思われ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。