15年ほど前、インドを旅行した時のこと。
首都ニューデリーで次の都市へ移動するために、チケットを買いに鉄道駅にある売り場へ向かって歩いていたところ、「ちょっと君」と制服姿の警察官に呼び止められた。
駅のセキュリティーポリスかな?
チケットオフィスはきょうは休みだから、別の売り場に案内してやると警官が言って歩き出す。
そうか休みか。でもここはインドだ。
実はオフィスは開いているのに、そんなウソを言って日本人旅行者を旅行代理店に連れていき、適正価格の10倍近いチケットを買わせる詐欺師の話は聞いていた。
だからアヤシサは感じた。
が、カーキ色の制服に身を包んで腰に警棒をぶら下げているこの人は360度、どこから見ても警察官だ。
それで後をついて行ったら、近くの旅行代理店に到着。
その後、言われるままに椅子に座ると、代理店にいたインド人から「いまは祭の最中で、残っているチケットはとても少ない。でもマイフレンド、おまえは幸運だ。」とか何とか言われ、やっぱり10倍ほど高いチケットを買わされそうになった。
クソっ、やつは偽の制服を着たインチキ警官だったか!
と思ったのだけど、インドはそう単純でもない。
後日、この話をインド人の日本語ガイドにすると、彼はそれ以外に次の2つの可能性を指摘する。
・詐欺師がどこかから、ホンモノの警察官の制服を手に入れた。
・ホンモノの警察官が詐欺行為をした。
すべて実際に起こり得ることだから、ガイドもその警官がどこまでホンモノかはわからない。
リアルとフェイクが入り混じっているのがインドって国。
インドの警官か軍人
詐欺師が警官のフリをする。
日本でも「振り込め詐欺」でこんなことをするヤカラがいる。
インドでは警察の制服を着た詐欺師や、本物の警察官が詐欺行為をするのは常識の範囲内にある(たぶん)。
でも、さすがにこれはぶっ飛んでいた。
AFPの記事(2022/08/19)
ギャングが「偽交番」運営、8か月後に発覚 インド
インドのビハール州で、警察署長(本物)の家の近くにギャングが「フェイク警察署」を設置し、メンバーはそこで階級章付きの制服を着用して銃も携帯する「偽警官」になった。
『こち亀』でもこんな話はなかったと思う。
なんでギャングはこんなコトをしたのか?
そこをホンモノの警察署と信じた住民が相談や通報のためにやってくると、偽警官はカネを要求したり、公営住宅への入居や警察への採用を持ちかけ金銭を受け取っていたのだ。
さらに日給約500ルピー(約850円)で人を雇って、偽警官として働かせていたというからもはやギャグ。
でも、偽警官の銃が本物ではないと本物の警官が気付いたことで、この壮大な詐欺が発覚しギャングのメンバーは逮捕された。
ただしリーダーは今も逃走中。
記事にはこんな「インドあるある」がサラリと紹介されている。
「インドで恐れ敬われている兵士や警官になりすます詐欺は日常茶飯事だが、偽警察署の設置は従来よりも一段と手の込んだ手口となる。」
それまで多くの住民が金銭をだまし取られていたのに「偽警察署」がバレなかったのは、住民も「インドの警察官はそんなもの」と考えていたからでは?
つまりそれほど違和感がなかった。
リアルとフェイクの入り混じったワンダーランドがインドだ。
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