グーグルに「エメットティル」と入力すると、関連ワードとして「死因」や「映画」と一緒に、「検索してはいけない」が出てくる。
こんな地獄の門のような関連ワードはとてもめずらしい。
理由は簡単だ。
「エメットティル」については、画像を検討してはいけないから。
きょう8月28日は、1833年にイギリスで奴隷廃止法が制定された日。
アメリカでは南北戦争で奴隷解放を支持する北軍が勝利した後、1865年の合衆国憲法修正13条によって奴隷制が正式に廃止された。
とはいえ法律で制度をなくしても、きのうまで牛や豚などの家畜と同じような扱いをしていた黒人を、いきなり自分たちと同じ権利を持つ人間と認識するのは無理すぎる。
白人の意識の中には、黒人への差別意識が根強く残っていた。
それから90年後の1955年8月24日、ミシシッピー州で“事件”が起きる。
この日、黒人少年のエメット・ティルが商店に入ると、中には20代の白人女性キャロラインがいた。
ティルはその女性に向かって口笛を吹いた、腕をつかんでデートに誘った、とても卑猥な言葉を吐いた、と諸説あってハッキリしないが、とにかくその女性を不快にさせるようなコトがあった。
4日後の28日、キャロラインの夫と仲間が銃を持って家に侵入し、中にいたティルを車で連れ去る。
3日後、変わり果てたティルの遺体が川で発見された。
頭部はかなり激しく損傷しており、右耳の上頭部には銃で打ち抜かれた銃創が認められ、片方の眼球が無く、背中から尻に渡って激しく叩かれた形跡が残っており、首にはワイヤーで回転翼が錘として括り付けられていた。
キャロラインの夫と一緒に14歳の少年の目玉をえぐりだし、射殺した白人男性はこう話す。
「俺は黒ん坊は好きさ、奴らがその中にいる限りはな、俺はそのやり方を知ってる。だがな、何人かの奴らには注意しておかなきゃいけない時だと決めたのさ。」
母が送り出した時と、出迎えた時のティル(画像:Lisa Whittington)
遺体がシカゴにいた母親の元に戻ってくると、「世界中がこれを見てほしい」という強い思いから、母親は棺のふたを開いたまま葬儀をすることにした。
多くの人が葬儀に参加して原形をとどめていないティルの遺体を目撃し、メディアはその写真を全米に配信する。
*「検索してはいけない」の理由はこれ。
当然、米世論の激烈な反応を引き起こしたが、リンチ殺人をおこなった白人男性は裁判で無罪を言い渡される。
でも、ティル少年の死は、黒人の地位向上を目指す公民権運動を前進させるきっかけとなった。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが有名な「I Have a Dream」のスピーチをしたのはティルの8周忌の1963年8月28日だった。
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