浜松に住んでる知人のバングラデシュ人女性からメールがきて、それを開くとこんなメッセージが。
「来月に夫が日本へやってきて、3か月一緒に住むことになったから、2人にちょうどいい広さで、できるだけ安いアパートかホテルを知りたい。」
バングラデシュのIT企業で働いている夫はコロナ禍の影響で、数か月のリモート勤務が可能になったから日本へ来ることになったという。
それはメデタイ。
ただ彼女は日本語が分からなくて、「アパート」というカタカナすら読めない。
それでボクがネットで探すと、すぐに良さげなマンスリーマンションが見つかって、「楽勝じゃん」と思って条件をよく見たら、トンデモナイことが書いてあった。
「ペット可」はいいとして、「外国人可」って。
当然、「外国人不可」の物件もある。
静岡県にある日本語学校を卒業して、日本語で日常会話のできるスリランカ人もアパート探しでは、不動産会社で何度も何度も「外国人の壁」と激突した。
「アンタ外国人?じゃあ、紹介できる部屋はないよ」と、ためらうことなく人種差別的な発言をした店員もいれば、丁寧で遠回しに「ガイジン拒否」を伝える店もあり。
店の外の案内で良さそうな物件を見つけたから、中へ入って話を聞くと、「ああ、あの物件ですか。もう空き部屋がないんですよ~。表の紹介をまだ外していませんでしたね。すみません」と拒否られた。
でも後日、スリランカ人が店の前を通った時には、予想どおりその物件は相変わらず入居者募集中。
最終的には良い部屋が見つかって、いまでは楽しく暮らしている。
でも意外なことに、そのスリランカ人は「ガイジン拒否」については怒っていなかった。
「スリランカにも差別はあります。どの国にも悪い人と良い人がいます。それは仕方ないですよ」とあきらめていたというか、へんに達観していた。
その後、アメリカ人の友人とご飯を食べに行く機会があった。
アメリカ社会では絶対に許されないだろうと思い、「“外国人可・不可”ってどうよ?」と聞くと、まずは和製英語を直された。
「マンスリーマンション」は日本に存在する謎英語で、アメリカでは「short term rental」や「extended stay」と言うらしい。
ボクの話を聞いても、彼は特に驚く様子を見せない。
日本の不動産会社が外国人に部屋を貸さないのは、「在日外国人あるある」というほどよくあることだからと。
「アメリカでもそういうことはあるけど、でも、ホームページにそんな言葉を載せる不動産会社はないだろうなあ」と言う。
外国人に部屋を貸したくないと思ったら、アメリカ人なら“もっとうまく”やる。
「外国人に部屋は紹介できない」なんて言ったら一発アウトだから、外国人では手に入らない書類の提出を求める。
不動産会社は「入居するにはソーシャル・セキュリティー・ナンバーが必要になります」とか言って、外国人にあきらめさせるという。
*ソーシャル・セキュリティー・ナンバー(社会保障番号)はアメリカ国民しか持っていない。
ヒスパニック系の彼はアメリカで受けた人種差別行為が心底イヤになって、それが日本へ行く理由のひとつになった。
そんなアメリカ人の意見では、差別意識はアメリカ社会のほうが強いけど、表面的には隠すからフツウは見えにくい。日本人には違う人種への憎悪や敵意は本当に少ないけど、差別に対して無知だから、あきれるほど露骨に差別行為をする。そう見えるだけで、実際には差別意識は無くて、英語が分からないといった言葉の違いが原因だったりする。
日本人はよく遠回しに表現するのに、「外国人不可」と外国人がビックリするような直球を投げる理由も、それがどういうことなのかよく分かっていないからだろう。
アメリカ人の話を聞いていて、マイケル・ムーアを思い出す。
白人のジャーナリストで映画監督のマイケル・ムーアがアメリカ社会で見られるこんな白人の振る舞いを批判した。
俺たちは必ず、「私の友人が―黒人なんですけどね…」と言う。黒人の友人がいることをアピールするわけだ。
黒人学校基金連合に寄付をし、黒人歴史月間を念頭に置き、たった1人しかいない黒人の従業員を、正面受付デスクに置く。
「見て下さい―私たちは人種差別なんてしていません。ちゃんと黒人を雇っていますよ」と主張するために。まさしく、俺たちはとても狡猾で、抜け目のない人種だ。
「アホでマヌケなアメリカ人 (柏書房) マイケル・ムーア」
この本は日本で2002年に発行されたからチョット古い。
でも、人種差別は現在のアメリカで最も深刻な社会問題のひとつだから、この内容はいまでも有効だと思う。
それか、「俺たちはとても狡猾で、抜け目のない」ということだから、そう見えないように“うまく”やっているか。
無知な日本人はそんなテクニックなんて知らない。
だから、「外国人不可」とホームページに堂々と載せてしまう。
コメントを残す