仏教とイスラム教の「記録係」は、浄玻璃鏡と2人の天使

 

「わたしをお寺に連れてって」

そんなことを言うインドネシア人のイスラム教徒(20代の男女)がいたんで、浜松市内にあるお寺へ案内することにした。
宗教施設であるイスラム教のモスク(礼拝所)と似ている点をたずねると、2人はこんな話をする。

「むしろ違いしか感じません。お寺でいちばん重要な仏像は、偶像崇拝を禁止するイスラム教では絶対的なタブーです。像をつくって祈る行為は、イスラム教ではいちばんやってはいけないことですから。木造の建物の中に畳が床一杯に敷き詰められていて、インドネシアで見たモスクとは何もかも違います」

なるほど、まったく別ものか。

そのお寺では死後の世界を絵を使って説明していて、その中にこんな一枚を発見。

 

 

地獄の王で神でもある閻魔(えんま)が、生前にした良いこと/悪いことを参考に死者を裁いている。
隣で書状をのぞき込んでいるのは、ひょっとして鬼灯(ほおずき)さま?

ここでは、「わたしは生きていたころ、困った人を助けて周囲の人には常に親切にしていまいた。控えめに言ってもわたしは善人です。いやガチで」なんてウソをつくことはできない。
というのは閻魔の法廷には、浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ:写真左下)というマジックアイテムがあるから。
この魔鏡は、亡者が生前にしたすべての行為を記録して、本人と閻魔の前で無慈悲に映しだす。
だから亡者が閻魔にウソをついてもすぐに見破られ、さらに罪を重ねてしまうことになる。

そんな話を話すと、「その話はイスラム教とよく似ています!」と2人が驚く。

 

浄玻璃鏡

 

イスラム教でも死後、人は神(アッラー)に裁かれて天国や地獄へ行くことになっている。
その際には天使が、仏教でいう浄玻璃鏡の役割を果たすという。
キリスト教と同じようにイスラム教でも天使は重要キャラで、例えば天使ガブリエルは最後の審判の時に死者を復活させるのだ。

 

洞窟にいるムハンマドに、アッラーの言葉を伝える天使ジブリール(ガブリエル)
キリスト教やイスラム教でガブリエルは、「神のメッセンジャー」という役割を担うことが多い。

 

イスラム教の考えによると、人間の肩には「キラミン・カティビン」というアッラーに任命された2人の天使が記録係として座っている。
(どっちがキラ・カテかわからんけど)右肩にいる天使はすべての善行を、左肩の天使はすべての悪行を記録しているという。

The work of the kiraman katibin is to write down and record every action of a person each day. One angel figuratively sits on the right shoulder and records all good deeds, while the other sits on the left shoulder and records all bad deeds.

Kiraman Katibin

 

キラミンとカティビンが生前の記録をアッラーに伝え、それを参考にして死者が裁かれて天国や地獄に行く。

偶像崇拝の点で、仏教とイスラム教には決定的な違いがある。
でも、人は神に裁かれて行き先を決められること、そしてその際には記録係がいるという死後の世界はよく似ている。
イスラム教徒が日本のお寺に行くといろんな発見があるし、それを知るとボクにも気づきがある。
なんつー理想的な国際交流だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。