【世界は広い】なぜ韓国(日本)だけなのか? と怒る人たち

 

ハロウィーンの週末をむかえた韓国の梨泰院で、150人以上が死亡する圧死事件がおきた。
岸田首相やバイデン米大統領など世界各国の首脳が、哀悼の意を捧げたのは言うまでもない。
でもグッチやディオールといった世界的企業がそれをしたところ、こんな反応がきたという。

中央日報(2022.11.02)

「なぜ韓国にだけ哀悼するのか」グッチ、ディオールの梨泰院事故追悼文に各国のネットユーザーが激怒

たしかにあの事件では2人の日本人のほか、イラン5人、中国4人、ロシア4人、米国2人など14カ国・26人が犠牲になったのだから、韓国人だけに哀悼の意を捧げるのはおかしい。
…と見出しを見て、直感でそう思ってしまったが、記事を読んだら、外国人の怒りポイントはそこじゃない。

グッチとディオールが公式インスタグラムで、「梨泰院で発生した悲劇的な事故に対して深い哀悼とお見舞いの気持ちを伝える」といった内容の文章を英語と韓国語で掲載した。
すると海外のネットユーザーは、インドで140人以上が犠牲になった橋崩壊事故や200人以上が亡くなったイランのデモ、そしてウクライナ戦争などいま世界各地で不幸な出来事が起きているのに、「なぜ韓国にだけ哀悼するのか」と激怒したという。
ウクライナ戦争についてはアフリカ人の知人が、「白人が死ぬと欧米は大騒ぎするけど、アフリカで黒人が死んでも気づきもしない。」と二重基準の態度を批判した。
すべての人間の命には同じ価値があるのなら、こういう反応があってもおかしくない。

上のグッチとディオールのメッセージにはこんな批判が寄せられたという。

「先進国だけに選択的に哀悼するのか」
「韓国が大きな市場だと贔屓(ひいき)する」
「私たちのためにも声を出せ」

いま世界で苦しんでいる人がほかにいるのは確かで、こうしたコメントは見当違いではない。
だから企業や韓国としても、反論するのはむずかしい。というかムリ。
「けっしてそんなつもりではなかったが、不愉快にさせたらそれは申し訳ない」と釈明するぐらいか。

 

Aを取り上げたら、「BやCを無視するな!」と怒りの反応がかえってくることはよくある。
例えばこの写真だ。

 

 

原爆が投下された直後の長崎の火葬場で、死体となった弟を背負った少年が前を見て、直立不動で順番を待っている。
核兵器の悲劇を伝えるこの写真はローマ法王や皇后陛下の心を動かす。

ローマ法王と皇后陛下を動かした少年・戦後最大の危機から核軍縮へ

8月9日にある日本人が、日本に興味のある外国人が集まるネットグループにこの写真を投稿して、核使用の悲惨さや愚かさを訴えた。
すると外国人からはこんな反応が。

オーストラリア人:We humans really suck, no justification for killing children.
私たち人類は本当に最低だ。子供を殺すことを正当化することはできない。

ミャンマー人:I pray for everyone who was vistim of war.
戦争の犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。

長崎への原爆投下:『焼き場に立つ少年』を見た外国人の感想

 

でも、こうした戦争反対や犠牲者への哀悼の意だけではない。

・当時、日本軍がアジアを何をしたか分かっているのか?
・その少年を見ると胸が張り裂けそう。でも、犠牲になったのは彼らだけではない。
・いまパレスチナでは同じように、家族を失った少年少女がいる。でも世界は彼らに関心がない。

といった意見も相当数きた。
(まあ投稿をしたのはボクなんで、このことはよく覚えてます。)
この少年を取り上げたからといって、日本人だけが犠牲になったと主張しているワケではないし、第二次世界大戦で起きたすべての出来事を書きだすのも無理。
いろんな悲劇を並べて、「どれが最も悲惨なのか?」と競っても意味はない

結局、自分は自分の立場でメッセージを発信するしかないのだ。
でもそうすると、同じ理由で「無視するな!」という批判が飛んでくる。

広い世界にはいろんな視点や価値観、立場があるのだから、善意の平和や哀悼のメッセージをすれば、共感コメントしかこないと思うのは「お花畑脳」にもほどがある。
だから、「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」と言ったフィリップ・マーロウ(やルルーシュ)のように、「何を言っても誰かが怒る。きっとどこかから石が飛んでくる」と覚悟して発信するしかない。
それか、「キジも鳴かずば撃たれまい」で黙っているか。
いまってそんな時代。

 

 

カテゴリー「平和」 目次

第一次世界大戦はどんな戦争なの?新兵器と総力戦とは?

東南アジアで戦争と平和を知る。日本軍のインパール作戦とは?

平和について③キューバ危機とデタント・核戦争と核軍縮

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。