日本人だからこそ、南国マレーシアの生活で感じる“苦痛”

 

京都に住んでる人がSNSで「いま床閉まいの最中ですよ~」と写真をアップしていた。
夏に近づいて暖かくなってくると、四条~五条の鴨川沿いのレストランには川床がつくられて、川の流れを見たり風にあたったりして食事を楽しむことができる。
この夏の風物詩はふつうは9月30日までだけど、ことしは特別に10月31日まであって、いまそれを片づけているところらしい。

2022年の「立冬(りっとう)」は11月7日から始まった。
本格的な冬が始まるころだから、もう夏モードは終了しないといけない。
1年を4つの季節に分ける四季だけではなく、24分割する「二十四節気」、さらに1節気を3つに分けた「七十二候」も日本にはあるのだ。
1年を24や72に分けるという話を聞くと、「はっ?」と二度聞きする外国人がよくいる。

昔の日本人は季節の移り変わりに敏感だったらしく、ちゃんと変化を感じ取っていた。
2022年でいうと11月7日は立冬と同時に、七十二候では初候の「山茶始開(つばき はじめて ひらく)」の季節(時期)になる。
そして12日から次候の「地始凍(ち はじめて こおる)」、17日からは末候の「金盞香(きんせんか さく)」とつづく。
まあ江戸時代の日本人が72の変化をそれぞれ体感できたとは思えんが、でも伝統的にはそう分けられて、日本の季節は移り変わっていたのだ。

 

季節に応じて、イベントや記念日があるというのが日本のキホン。
立冬の多い11月7日は「そんな時こそあったまろう」という発想から、「鍋の日」や「ココアの日」の記念日になっている。
春夏秋冬の季節は日本だけじゃなくて、アメリカやヨーロッパやトルコにもある。
でも、マクドナルドでバイトをしていたトルコ人は、春や秋になると限定メニューが登場すると知って、「日本ではファストフード店にも四季があるのか!」とビックリした。

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こんな感じに日本人は四季の変化に敏感で、それに応じて生活するのがアタリマエになっている。
だから、季節を”奪われる”とわりと大変になるらしい。

 

 

マレーシアは一年中、暑いか温かくて過ごしやすい。
それに東南アジアの中では発展していて生活は便利だし、先進的な治療を受けることができるから、仕事をリタイアした後、第二の人生をこの国でスタートする日本人は多い。
ネットを見ると、マレーシアは14年連続で「日本人が移住したい国ナンバーワン」とある。

そんなマレーシアを旅行した時、現地で働く30代の日本人と知り合う。
「セカンドライフを始めるなら、シベリアより南国がいいな~」となんとなく思っていたから、マレーシアでの生活の良いトコ/悪いトコについて聞いてみた。
すると、文化や習慣の違いでとまどったことはあっても、基本的に大きな不満は無く、その人は楽しく生活できていた。
まずマレーシアは物価が安いから(だいたい日本の1/2~1/3)、経済的に余裕をもって過ごせるし、多民族国家だから美味しいマレー・中国・インド料理や日本食も食べることができる。
ただ日本とは治安が違うから油断したり、簡単にヒトを信用すると時に致命傷となる。
だから、ここでは平和ボケなんてしていられない。

若い日本人なら気にしないが、日本に長い間住んでいて、一定の年齢に達した人が一年中Tシャツでいられるマレーシアで新生活を始めると、そのうち四季の無いことに喪失感を感じることが多いという。
春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪といった、季節の移り変わりをマレーシアに求めるのはムリ。
失って初めて気づく価値もあるが、四季はお金でどうにかなるものじゃない。
でも、「だからアキラメロン」と言われても、日本人にはそれがむずかしいらしい。
マレーシアにいると、「季節ロス」が精神的にキツイという日本人の話を何度も聞いたから、季節感を感じられない環境は、日本人にとってはプチ拷問とその人は考えていた。

1月から12月まで川床を出しっぱしというのは風流も何も無くて、もはや日本の生活ですらない。
季節の移ろいを感じられないというのは、日本人にとっては心に埋められない穴が開く感覚では。
やっぱり豊かな四季や二十四節気、七十二候のある国が住みやすい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。