似ているようでやっぱり違う日本と韓国。
10年ぐらい前、ソウルのレストランで韓国人の友人とご飯をたべたときに、昼間と夜で「アレっ?」という違いを感じた。
昼に利用したレストランは「明洞餃子」という日本人観光客に超有名なお店で、そこでは、注文したカルグクス(温かいうどん)と餃子を持ってきた店員が「これはどちら様ですか?」みたいなことを聞いて品を置く。
日本と同じ感覚で、ここでは何の違和感もなし。
夕食は昼と180度違って、日本人には無名で韓国人がよく行くような店をチョイスしてもらった。
そこでは確かメニュー表に英語はなく、ハングルオンリーだった気がする。
冷麺と焼き肉のセットを2つ注文したまでは明洞餃子と同じだったけど、しばらくしてやってきた店員がテーブルに置いたのがこれ。
ほぉ~、これがセットで付いてる焼き肉か。
1人前にしては量が多い気がするけど、さすが韓国、気前がいい。
それより、もうひとつの焼き肉をなんで持ってこないんだ?
と疑問に思って前にいる韓国人に聞いたら、「これだけですよ。韓国ではこれが普通なんです」とサラリと言う。
「同じ皿にあるものをシェアして食べるのが韓国の文化です。さっきの明洞餃子では注文を取りに来た店員が、あなたが日本人と気づいたから、餃子を別々の皿に分けて持ってきたんでしょう。韓国人なら、ひとつの皿にある物をみんなで食べますから」
焼き肉を取り分ける小皿がないのもそういう理由で、それぞれが自分の箸で食べ物を直接つまむから、そんなものは必要ないらしい。
その韓国人の話では、このほうがお皿が少なくて済むから店にとっては楽で効率的だし、客も同じ皿の物をシェアして食べると親近感や一体感を感じるから誰も気にしない。
そうは言われても、こっちは純度100%の日本人だ。
この韓国人とはこの日が初対面だったから(しかも20代の女性)、この場面では、使っていない箸で別の皿に取り分けてそれぞれ別々で食べたいところ。
でも本人は気にしていないし、これが韓国の食文化なら「郷に入っては郷に従え」で結局、同じ皿にある食べ物をお互いにつついて食べた。
0か100ではなくてケースバイケースだけど、全体的な傾向として韓国はシェア文化、日本は友人でも一線を引く個別文化なんだと思う。
そんな話はカンボジア人の日本語ガイドからも聞いた。
韓国人観光客には大皿にのった焼き肉なんかの料理をドンっとテーブルに置いて、ツアー客みんながそれに箸をのばして食べる。
でも日本人にそれをすると文句が出るから、料理は必ず1人1品(1セット)で提供するという。
アンコールワットの近くのレストランで、日本人の団体客がツアー会社の用意したお弁当を食べているのを見て「“みんな”ではなく、“それぞれ”が日本人の感覚か」と思ったことがある。
どちらが良い/悪いではなくて、「同じ釜の飯を食った仲間」を優先する韓国人はシェア、「親しき中にも礼儀あり」の日本人は個別が好きなんだろう。
韓国の人たちは「情」を大事にする一方、日本人は相手との「距離」を尊重する。
でも新型コロナが猛威を振るういま、韓国のシェア文化が見直されているらしい。
韓国メディア・イーデイリーは「韓国の食文化は変わるべき」という記事でこう指摘する。
レコードチャイナの記事(2020年10月4日)
韓国に来た外国人が最も驚く食文化には「1つのチゲ鍋を複数人が各自のスプーンですくって食べる」ことや「自分の箸で相手の皿に食べ物を取ってあげること」が挙げられると紹介している。
外国人が驚く韓国のあの文化、コロナ時代でやめるべき?=韓国ネット「どこの国も大差ない」
皿やコップを共有するだけでも、感染の危険性は3倍ほど高まるという研究結果があるそうだ。
それでいま韓国社会でも、「個人の衛生を徹底するため食卓の姿を変えるべきだ」という考え方をする人が増えている。
そんな主張に対して、韓国のネット上ではこんな意見があるとか。
「同じお皿から直箸で取る副菜も問題」
「テーブルの上の箱に大量に入っている箸やスプーンを取り出すときの方が危ない」
「あいさつのキスの文化がある欧米、みんなで食べる料理を自分のスプーンでかき混ぜる韓国、手で食べる東南アジア。どこも大差ないと思う」
「バラエティー番組で一緒に食べる場面を放送することからやめるべき」
「飲食店ではお皿を使わず、給食のようなご飯・スープ・おかずを盛れるトレーを使えばいい」
「ウィズコロナ」の時代に限っていえば、相手と距離を置く日本の個別文化のほうが良さそうだ。
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中国文化の日本文化への影響②日本風にアレンジした5つの具体例
> 韓国のシェア文化が見直されているらしい。
このような表現は、伝統的な日本語においては「韓国のシェア文化が(望ましいものとして)見直されているらしい」という意味になります。でも、この記事で書いてあることはそういう意味じゃない。
韓国人が書いている記事かと思いましたよ。
これが辞書にある「見直す」の意味です。
1 もう一度改めて見る。また、その結果気づいた欠点を是正する。「提出前に作文を―・す」「仕事の進め方を―・す」
2 それまでの認識を改める。「今回のことで新しい市長を―・した」
ところで、「食のシェア」については、どっちかと言うと韓国人の考え方の方が世界標準に近いようですね。日本人があれほど個人単位の食事や食器の分配にこだわる理由は、おそらく、「穢れ」思想と関係があるのでしょう。たとえば食器ですが、茶碗とか箸とか家族の中で自分の使う食器が決まっているなどという慣習は、全世界でもたぶん日本人だけが持っているものです。つまり、たとえ家族の中であると言っても、他人の「穢れ」が付着している食器は使うべきではないと。
これが外国人の場合、幼い子供のように明らかに他の大人と同じ食器を使用するのが困難な者だけが、他の人達と違う特別な食器を利用するくらいですよ。
この「個人単位で使用する食器が決まっている」という日本人の慣習ですが、なぜか洋食器(カレー皿とかスプーンとかティーカップなど)になると誰のものか決まってないことが多い。一見すると不思議ですが、やはり食器の「穢れ」も、日本人に特有の思想であるから、和食器にしか通じないのでしょうね。