【鏡の国】誠意を期待する韓国・制裁を警告する日本

 

韓国のメディアや政治家は韓日の関係を「運命共同体」と表現することがあるのだけど、いまのところは左右が反対に映る鏡の国どうしだ。
お互いの価値観や立場が違いすぎて、話がまったく見事にかみ合わない。

中央日報の記事(2020.11.13)

韓国与党院内代表「韓日首脳会談の早期開催は望ましい…菅首相の大胆な決定を」

 

韓国の与党「共に民主党」のキム・テニョン院内代表はこう言ったそうな。

「われわれは日本が過去の徴用問題に対する司法府判決を尊重して、誠意ある解決法を用意することを期待している」

キムさんの目に映っているのは、一体どんな日本なのか?
韓国の司法府判決に対する日本政府の見解は「明確な国際法違反」で、それは前から何度も言っているから、ここにきて立場を180度かえて尊重するはずがない。

「過去の徴用問題」は1965年の日韓請求権協定で韓国政府が解決を確認していて、すでに日本からばく大な経済支援金を受け取っている。
解決済みの問題を蒸し返し、韓国最高裁は日本企業に賠償を命じたのだけど、国家間の合意を国内法でひっくり返すことは国際法違反だ。
政府と政府が話し合って約束しても、あとでどちらかが自分の都合で白紙にすることが認められるのなら、国どうしの約束はもはや無意味。

だから日本は韓国に対して、判決が言い渡された2018年から何度も何度も、国際法違反の状態を是正するよう求めてきた。
「誠意ある解決法を用意することを期待している」のは日本であって、用意しないといけない側が期待していてどうする。

 

いま文政権が気になっているのが、自身がホストとなって年内に韓中日首脳会議を開催すること。
これができないとなると、国家のメンツが傷ついてしまう。
それに対して菅首相は韓国側に、日本企業の資産の現金化をしないと確約すれば韓国を訪問することは可能だと伝える。
それをキム院内代表は、「日本が条件をつけずに参加し、自然に韓日首脳会談を開催する決定が必要だ」と日本の要求を完全スルーして、自分たちの必要性だけを強調する。

キム氏の言葉で唯一共感できるのは、来年おこなわれる東京オリンピックについて「新型コロナウイルス感染症で疲れた世界の人々の心を慰める行事になることを期待する」と言ったことなのに、直後に、「このためにはまず軍慰安婦や強制徴用など歴史問題を解決しなければならない。菅内閣の大胆で前向きな決定を期待する」と言うから、ダメだこりゃ。
その問題は日韓両政府が話し合って解決済みで、菅政権が終わったことに前向きな決定をすることはあり得ない。

 

一方的に期待しているという“待ち”の姿勢の韓国に対して、いま日本は警告を出している。

中央日報の記事(2020.11.11)

日本、韓国内日本企業の資産現金化手続きに「深刻な状況を招く」

11月10日に韓国で、現金化の段階が一歩進んだことについてコメントを求められた加藤長官は、「韓国国内の手続きのいちいちコメントすることを差し控える」と一蹴。
韓国の国内問題は韓国政府が対応しないといけないから、これは当たり前。
いまの韓国は国際法違反の状態にあると指摘したうえで、加藤長官は「今後も韓国に日本が受け入れ可能な解決策を提示すると強力に求めていくだろう」と迫った。

現状では日本と韓国は立場が180度違う。
「日本が司法府判決を尊重して、誠意ある解決法を期待する」という他人ごとの韓国と、「現金化に至れば、深刻な状況を招く」とシリアスな日本。
「深刻な状況」というのは、韓国が心の底から恐れている経済制裁にほかならない。

「菅首相の大胆な決定を!」と韓国は日本の譲歩を期待しているが、そんな受け身の姿勢は、菅首相の別の大胆な決定をうながすことになりそう。
現金化までもう時間は残されていないのに、文政権は何も決めないことを決断したのだろうか。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

“韓国好き”だった菅官房長官が、急速に“嫌韓”へ傾いた理由

 

1 個のコメント

  • >現金化までもう時間は残されていないのに、文政権は何も決めないことを決断したのだろうか。

    おそらく、そうでしょうね。
    文政権は、国民の側から「現金化に反対する動き」が出てくることを期待しているのだろうが、そうはうまくいきそうにない。このまま手をこまねいて実際に現金化がなされて日韓関係は破滅に陥るか、もしくは、現金化を阻止しようと文政権が動いて与党及び国民からボイコットされて大統領職から弾劾されるか、どちらかでしょう。
    どっちにしても破滅。まあ自らの無策が招いた死地ですから、しょうがないでしょう。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。