日本に住んでいたインド人に印象を聞くと、
「日本はどこも同じだね。私は北海道から沖縄まで行ったことがあるけど、建物は似ているし、どこも同じ人間がいて、まわりからは日本語だけ聞こえてきた。もちろん、伏見稲荷のように外国人だらけのところもあるけど、それは例外だ。」
たしかに国全体を見ると、日本は同質性が高く、インドのような多様性なんてない。と言っても、それは悪いことではない。
多様性がありすぎたによって、世界史レベルの悲劇が起こることもあるのだから。
インドの紙幣には、ヒンディー語・アッサム語・ベンガル語など17の言語が書かれている。
国内を移動すると、文字が読めなくなることは「インドあるある」のひとつ。
こんな国から来ると、日本が「どこも同じ」に見える。
サッカーのヨーロッパチャンピオンを決める「ユーロ2024」は、このまえスペインの優勝で終わった。すると今度は不名誉な国を決める話し合いがおこなわれ、出場した7カ国に対し、サポーターによる人種差別的行為などが理由で制裁が科せられることが決定した。
その国と罰金は以下の通り。
・クロアチア 罰金約832万円
・ルーマニア 罰金約666万円
・セルビア 罰金約500万円
スロベニア 罰金約500万円
ハンガリー 罰金約500万円
アルバニア 罰金約500万円
オーストリア 罰金約333万円
これを見て日本のネット民の感想は?
・東欧ばっかで笑った
・日本は欧州を見習え←滑稽すぎるだろこの言葉w
・やっぱり共産圏はアカンな~
・彼らに
「東ヨーロッパの方ですよね?」とか
「スラブ系ですよね?」
なんて言ったら地雷踏むようなもんと説明された事ある。
・ユーロ見てからオリンピックのサッカー見るとスタジアムの盛り上がりがなくて虚しい
ガチムチ野郎共の野太い歓声が恋しい…
上記の国々がある地域はさまざまな民族や宗教が入り混じり、対立や憎悪がうずまいていたから、歴史的には「ヨーロッパの火薬庫」 と呼ばれた。
実際1914年にこの地域で、セルビア人がオーストリアの皇太子を暗殺するサラエボ事件が起き、第一次世界大戦という大爆発が発生した。
上記の7カ国の中で、クロアチアが最も重いペナルティーをくらった理由は、間違いなくコレが関係している。
米CNNの記事(June 20, 2024)
Serbia soccer association threatens to quit Euro 2024 after ‘kill, kill, kill the Serb’ chant
クロアチアとアルバニアの試合で両チームのサポーターから、「殺◯、◯せ、セルビア人(the Serb)を◯◯!」と叫ぶチャント(応援歌)が起きたことで、セルビア・サッカー協会が大激怒し、ユーロ2024からの撤退をチラつかせた。
日本のスポーツ界でも差別問題は発生するけど、これはスケールが違う。
なんでこんなことが発生したのか?
この7カ国のうち、セルビア・クロアチア・スロベニアには「旧ユーゴスラビア内にあった国」という共通点がある。
ユーゴスラビアの面積は約25万km²と、北海道・九州・四国などを除いた日本本土よりもややちょっと大きい程度。
そんな小国なのに、
「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」
と言われるほどバラエティー豊かだった。
ちなみに、5つの民族とは、セルビア人、クロアチア人、スロベニア人、マケドニア人、モンテネグロ人のこと。
第二次大戦後、こんな多様性の洪水のような国が何とかまとまっていたのは、カリスマ指導者のチトーとビッグボスのソ連の存在があったから。
それらが無くなるとユーゴは瓦解し、現在ではスロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニアになっている。
セルビアの自治州だったコソボは2008年に独立を宣言したが、セルビアは今も認めていない。
国が分離独立する際、は「今までお世話になりました」「いえいえ、これからも元気でね」とにこやかな挨拶が交わされるわけはなく、憎悪と憎悪がぶつかり、血で血を洗う惨事になることがよくある。
パキスタンがインドから分離独立した時もそうだった。
ユーゴスラビアが分裂した時も紛争(1991年〜2001年)が発生し、各地で激しい戦闘がおこなわれた。
セルビア側が約8千人のボシュニャク人(イスラム教徒)を殺害し、戦後ヨーロッパの最悪の虐殺事件と言われるスレブレニツァの虐殺が起きたのはこの時だ。
ユーゴスラビア紛争でクロアチア人はセルビア人と戦っているから、今でもセルビア人を嫌うクロアチア人は多い。
セルビアの隣には、岐阜県ほどの面積に9割以上のアルバニア人が住むコソボ共和国がある。
ここはかつてセルビアの自治州だったところで、1998年にアルバニア人が独立を求めて決起し、セルビア側と激しく戦った。(コソボ紛争)
アルバニアに住む人たちも、コソボにいるアルバニア人と同じ気持ちをもっている。
ということで、クロアチア人にとってもアルバニア人にとっても、セルビアは「敵」になるのだ。「敵の敵はマイ・フレンド」の法則によって、今回、両者が最悪のカタチでタッグを組んでしまった。
さまざま民族や宗教の人たちと共存することは、多くの文化や価値観に触れ合えるというメリットがある一方、多様性は統一性に欠けるため、何かきっかけがあると対立や暴動、殺し◯いがはじまるという爆弾を抱えている。
どこに行っても同じ人間がいて、同じ言語が聞こえてくる国なら、そんな紛争が起こる心配をしなくていい。
欧州の火薬庫と極東の島国はまったく違う。
> 国が分離独立する際、は「今までお世話になりました」「いえいえ、これからも元気でね」とにこやかな挨拶が交わされるわけはなく、憎悪と憎悪がぶつかり、血で血を洗う惨事になることがよくある。
そうですね、ほとんど世界中でそうなのですが。ごくたまに例外もあります。
旧・チェコスロバキア社会主義共和国が、チェコ共和国とスロバキア共和国に分離した時がそうでした。その切っ掛けは、ユーゴスラビアの内乱~解体と同じく、旧・ソビエト連邦を中心とした社会主義体制の崩壊だったのですけどね。
チェコとスロバキアの両国が、分離独立という政治体制の刷新を冷静ヵつ穏やかに成し遂げたことは素晴らしいと思います。協議離婚のようなものか?
チェコとスロバキアは美しい例外ですね。
ユーゴスラビアのように武力紛争なく、分離独立したことで、夫婦の協議離婚になぞらえて「ビロード離婚」と呼ばれているそうですよ。