1695年のきょう12月5日、徳川綱吉の出した生類憐れみの令によって、いまの東京・中野に16万坪という巨大な豚小屋「とんとことん」じゃなくて、犬小屋が作られて、そのせいで住民は強制退去というムゴイ目にあう。(それなりの保障はあったかも)
この法令でイヌだけでなく、ネコや鳥など広い範囲で生き物の殺生が禁じられて、犬を切り殺した人間が牢へぶち込まれてそこで死んだり、ハトを追い払おうと小石を投げたら処罰されるといった滅茶苦茶なことが起きた。
さらには昆虫も保護の対象となり、江戸で虫を飼うことが禁止される。
日本にいるイギリス人と動物愛護について話をしていた時、この生類憐れみの令の話をすると、「マジかよ、それはクレイジーだな」と彼は笑った後、「いまでも動物愛護の精神から、ブッ飛んだことをする人たちがいるよ。ペタって知ってるか?」と聞いてくる。
「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals)」を略して「PETA」。
苦痛や殺害といった虐待から動物を守るという精神はスバラシイのだが、彼らの考え方は極端すぎ。
創立者の女性のこんな言葉からも、その気配が感じられる。
「空腹や痛み、渇きを感じるのは、ネズミでもブタでも犬でも少年でも同じです」
こんなペタ的としては、「ペット」ではなくて「コンパニオンアニマル」(companion animal)、「所有者」(owner)ではなくて「世話を行う人」(human carers)や「保護者」(guardians)が適切な言葉だ。
鶏肉に代わる培養肉をつくった研究室には、賞金100万ドルを提供すると発表するのはいい。
ペタの抗議活動でハンバーガーチェーン店が、ベジタリアン用の商品を提供するようになったのもまだいいとしても、反毛皮運動として、ファッションショーのランウェイに赤い塗料を投げ込むのは感覚が狂っている。
アザラシ狩りへの抗議で、カナダの漁業担当大臣の顔にパイをぶつけるのは犯罪行為だ。
反毛皮運動で女性が裸になって、「毛皮を着るぐらいなら裸になる」というキャンペーンを始めたら、フェミニストから批判を受けるというカオス展開に。
「動物愛護団体 vs フェミニスト」の対決をYouTubeにあげたら、かなりの数字を稼げそう。
イギリスで開催される国際的な犬のイベント「クラフツ(Crufts)」に乱入して、つまみ出されるペタのメンバー。
これはホットドッグの販売に抗議して、下着の男女が抱き合っている。
1ミリも意味が分からない。
江戸時代に出た生類憐れみの令は300年以上も前のものだから、21世紀の常識からツッコむのは無意味。
ペタとは現在進行形で地球をシェアしているだけに、(全部ではないが)価値観や行動が別の世界線にあるようで、徳川綱吉の考え方よりも理解がむずかしい。
でも、人々の常識を超えた方法で活動をしないと注目を集められないから、彼らとしては世間の非常識が常道になる。
こうなると、ますます迷惑ユーチューバー化していく。
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