“人権”で対立する欧州とイスラム圏、日本は世界で孤立する?

 

アルゼンチンがフランスとの頂上対決を制して優秀し、幕を閉じたサッカーW杯カタール大会。
「メッシのメッシによるメッシのための大会」とも言える。
ちなみに先日の12月18日は、1825年にサーニー・ビン・ムハンマドがこの日に初代首長となったことから、カタールの独立記念日だった。

日本はベスト16で敗退したものの、1次リーグでドイツとスペインに勝ち、PK戦でクロアチアに負けた試合は引き分け扱いになったから、最終順位は9位だ。
世界トップ10に入っているのなら、これだけならもはや強豪国と言ってヨシ。
さらに国際サッカー連盟(FIFA)は「傑出していたチーム」として、アルゼンチン、クロアチア、モロッコと日本を選んだ。

この情報はここ最近のメディア報道から拾ったもので、今回のW杯について日本ではこんな感じに、日本とサッカーを中心に伝えている。
でも、ヨーロッパのメディアはそうではなく、性的少数者や外国人労働者についての人権問題を取り上げて、ホスト国となったカタールを非難している。
知人のドイツ人も国内ではW杯でドイツが勝ち進むことよりも、カタールでの人権状況に関心を寄せる国民のほうが多いと言う。

ドイツ人の価値観 サッカーW杯で日本との試合より大事なもの

といっても1825年に誕生した時から、イスラム教の影響が強いカタールでは同性愛はタブーになっていて、この状況はなかなか変わらない。

 

今回のW杯ではイングランド、ウェールズ、オランダ、ドイツなどの欧州代表チームの主将が、差別反対や多様性を象徴するレインボーカラーの腕章を着けて出場すると表明していた。
これは、同性愛を法律で禁止するカタールを批判しているのは明白。
欧州議会がカタールについて、人権侵害を非難する決議案を採択したこともこれを後押ししている。
でも、政治・宗教的なイメージを表すことを禁じるFIFAの規定によって、ヨーロッパの選手がこの腕章を着用することはできなかった。

で、話は日本ですよ。
日本代表には腕章を着けるような気配は1ミリもなかったし、ドイツやフランスの主要都市のように、パブリックビューイングの中止が発表されることもなく、カタールの人権問題を批判する動きはほとんどない。
ヨーロッパに比べると、日本はあまりに静からしい。
毎日新聞の記事(2022/12/3)

「水差すのは…」W杯開催地カタールの人権侵害、日本は関心薄い?

日本人の反応の薄さについて、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル日本」の事務局長はこう話す。

「欧州などでは、人権は人々が勝ち取ってきたものという歴史があるが、日本では人権というと『思いやり』や『道徳』が絡む話になってしまう」
「この問題に批判の声を上げずにいると、日本が国際社会から取り残されてしまう」

でもネットを見てみると、これとは違う見方が多い。

・人権問題に対して意見を表明するときに
その国がやってるスポーツイベントを利用しないといけないという意味が分からない
・日本が政権批判に繋げれないような人権侵害に興味なんてあるわけ無いでしょ
・政治パフォーマンスにうつつを抜かして無様に敗退しちゃったらただの笑い物
・多様性だと言いながらよそに土足でズカズカとってのは植民地時代から変わってないわな
・そんな国でワールドカップやるの決めたの欧州中心のFIFA理事会だろ

 

日本サッカー協会の田嶋会長は「あくまでサッカーに集中する」として、この大会で日本は何らかの意思表示はしなかった。
それでいい。スポーツと政治は分けて考えて、W杯で特定の国への人権批判は控えるべき。日本人の大多数もこの態度に賛成と思われ。
さいわい今のところ、日本が国際社会から取り残されてしまう動きはないし、ヨーロッパと同じことをしないと、「世界のハブ」になるというのはチョット考えられない。
そもそもFIFAが禁止する行為をしてはいけない。

良くも悪くも、あまり他国のことに口を出さないのが日本の価値観だ。
韓国で五輪が開かれた時、日本のメディアが欧米のように「犬食」取り上げて批判することはなかった。
日本にも犬を食べる習慣はないが、他国の食文化にとやかく言うべきではない、という空気が支配的だと思う。
欧州連合(EU)は死刑を廃止していて、日本の死刑制度を非難している。かといって、日本で開催される国際大会に参加するヨーロッパの国が、日本批判を展開するのは受け入れられない。

 

ヨーロッパの多くの国がロシアと戦うウクライナに武器を送っていても、日本はそうしないで別の方法で支援をしている。
でも、日本が国際社会から仲間はずれになることはない。
ヨーロッパの基準・やり方をそのまま国際標準とする発想はもう時代おくれだ。
欧州と同じくカタールでの人権侵害は認められないとしても、W杯でそれをアピールするのは日本人の価値観とは合わない。
それにネットを見ていると、スポーツに政治を持ち込もうとする西洋のやり方に批判的な外国人はよくいる。
自分と違う価値観を認めることが主流な、多様性重視のいまの世界で“孤児”になることはある意味むずかしい。
イスラム圏でも欧州圏でもない日本には、もともと独自の価値観ややり方があるのだから、外部の意見を参考にするのはいいとしても、ガイアツ(外圧)に振り回されることなく、日本の見方に自信を持てばいい。
「そんなことをすれば(しなければ)、日本は国際社会から取り残されてしまう」といった話は、昭和の時代から何度も見てきたけど、本当にそうなった事例は一体どれだけあったのか?

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。