【見た目詐欺】日本の“奨学金”に怒る、中国人ならではの理由

 

知り合いの中国人が日本の大学に留学していて、怒っていたのは「奨学金」。
いやマテ、お金の無い学生でも高等教育を受けられるなんてステキやん。と思うのだけど、その中国人が不満だったのは制度じゃなかった。

漢字の国からきた彼の感覚では「奨学金」という漢字を見ると、政府が返済不用のお金を提供して、しっかり学習できるように学生を支援するイメージがある。
中国では実際にそうらしく、ネットを見ると「なんと授業料と住居費が無料になり、生活費も日本円で月5万円〜の支給を受けられます」、「ここまで手厚い奨学金ってなかなかないように思います」といった日本人の喜びの声が上がっている。
日本でいう「奨学金」とは後で返さないといけない「学生ローン」のことで、この中国人に言わせると、漢字の意味と違っているから腹が立つ。
歴史をさかのぼれば奈良・平安時代、日本政府が優秀な人間を遣唐使として派遣していたころ、中国国内での彼らの生活費や旅費は唐政府が出してくれていた。
中国はいまでもそんな精神を持っているのか、それとも世界的に見ると日本がケチなのか。

 

最近の日本ではお菓子なんかで、箱の大きさは以前のままでも、実は中身が小さくなっていて、パッと見ただけでは気づかない「ステレス値上げ」が国民をイラっとさせている。
ネット画像と届いた物が違い過ぎて、血糖値を上げてしまう人も多い。
でも、こうした「見た目詐欺」は基本的に量が少ないというモノで、箱の写真や文字と中身が違っているというケースはレベルが違ってガチの詐欺になる。
知人の中国人的には「奨学金」ならお金を出してくれるということなのに、日本では借金を意味するから、感覚としては悪質な「見た目詐欺」になる。
京都人の言う「その時計、ステキですね」は実は、「時間見ろ、はよ帰れ」を意味しているように、言葉と意味が違うケースは日本では多々ある。
「奨学金=借金」と最初から理解していればストレスは感じないけれど、漢字圏の国からきた人だとそうはいかないらしい。

困窮した人がお金を借りて、成功してから返す「出世払い」は江戸時代からあったという。
日本の奨学金は来年から、そんな制度に近づいていくようだ。

毎日新聞のコラム「余禄」(2022/12/25)

政府は、修士課程などの大学院生の授業料を国が肩代わりし、修了後に年収300万円以上になってから返済する制度を再来年秋から導入する

成功してから借金を返す出世払い方式は…

 

いまの奨学金制度では、大学から離れて半年ほどすると口座振替で返還が始まる。
日本政府はその条件を変えて、年収300万円に達したら返還が始まるようにするらしい。
つまり、お金を返すことが現状よりは楽になったけれど、「奨学金」と書いて「借金」を意味することは変わっていない。
知人のように怒る中国人はいるかもだけど、日本には生活の厳しい人がたくさんいて、国のお金がいくらあっても足りないから仕方ない。
いまの日本では、学費も生活費も支給してくれた唐王朝に勝てる気がしない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。