「ぜいたくは敵だ!」
「日本人ならぜいたくは出来ない筈だ!」
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
と 国民精神総動員 で政府が国民に発破をかけるような戦争のときほどひどくはないけど、コロナのせいで日本国民の生活はだんだんと苦しくなっていく。
にもかかわらず広島県と兵庫県が知事のため、山口県が県議会議長のために、庶民を挑発するような高級車を購入したことが発覚していま世間が燃えている。
ことし8月、「皇族送迎用」という名目で山口県が約2100万円でトヨタのセンチュリーを買ったものの、いまのところ山口に皇族が来る予定はまったくなくて、実際には県議会議長の公用車になっている。
庶民の家計や県の財政は火の車なのに、議長の車内にはスピーカー20個とマッサージ機能、11・6インチのモニターが搭載されているという。
これで批判が殺到しないと思わないほうがおかしい。
兵庫県知事の場合は「一度乗ってみてください。レクサスもその前のセンチュリーもその程度の排気量が、知事車にふさわしいと思っており」と説明するも炎上。
・くれよ乗るから
・喧嘩売ってるようにしか聞こえない
・車種云々では無くて公費で高級車が必要かって話なんだが・・・
・乗り心地を問題にしてない
・ホントにバブル世代の上司は
金銭感覚おかしいねん
・自分の金じゃなくて県民の金で買ってるって感覚がないんだな
イギリスの歴史家ジョン・アクトンが言った「すべての権力は崩壊するし、絶対的権力は絶対的に崩壊する」はいまも通じる金言。
長いあいだ権力を持ちつづけていると、人は感覚がマヒしてまわりや未来が見えなくなる。
そんな状態にならないようにするには、その前に気づくことが重要。
ということでぜい沢で身を滅ぼさないよう、3000年前の中国の賢人「箕子(きし)」の言葉に耳を傾けよう。
殷(いん)の最後王・紂王(ちゅうおう)は、人が考えらえるだけのムダとぜい沢の限りをつくして、民を苦しめた中国の歴史でも最悪レベルの暴虐王だった。
紂王(帝辛)の振る舞いが「酒池肉林」という四文字熟語を生み出す。
帝辛は肉を天井から吊るし林に見立て、酒を溜めて池に見立て、その上で女性をはべらかしながら、ほしいままにこれらを飲み食いした。ここから度を過ぎた享楽の事を「酒池肉林」と呼ぶようになった。
紂王
酒池肉林の代償は革命で、反乱軍に追い詰められた紂王は焼身自殺して殷王朝は滅亡した。
この王の感覚はもはやヒトのものではなく、残酷を心の底から楽しんでいた。そのことは炮烙(ほうらく)を知ればよくわかる。
この王に仕えていた政治家の箕子(きし)は、紂王が象牙の箸を使ったと聞いて「これは大変なことになる!」と青ざめた。
その理由が分からない周囲の人たちに、箕子はこんな話をする。
「象牙の箸を使うようになると、いままでの素焼の器では物足りなくなって玉(ヒスイ)の器やサイの角の杯(さかずき)を使いたくなるだろう。
*ここから度を越えたぜい沢を意味する、象箸玉杯(ぞうちょぎょくはい)という言葉が生まれた。
そしてそんな高級な器で食事をすれば、いままでのような質素な食べ物ではなくて、水牛や象の肉などのご馳走がほしくなるだろう。
豪華な食器で山海の珍味を食べるとなれば、もう粗末な服や家屋では満足できなくなり、錦の衣服や宮殿が欲しくなる。
人間の欲にはキリがないから、ぜい沢が止まらなくなると、中国全土の財物を集めても足りなくなるから、国はきっと大いに乱れる。だからわたしは象牙の箸を恐れるのだ」
箕子
象牙の箸を使い始めたと聞いて、箕子はここまで未来を読むことができた。
ブランドTシャツを1枚買うと、身につけるものすべてがブランド品になっちゃうみたいなことはいまの日本人でもありそう。
でも、これは「風が吹けば桶屋が儲かる」的なこじつけではなく、箕子の不安は現実となって紂王は自殺し、殷王朝は崩壊した。
そんな故事から、「小さな事柄から大きな流れを察知すること、またはそれができる人物」を意味する「箕子の憂い(きしのうれい)」という言葉ができた。
やりたい放題の紂王に「おやめください」と箕子はいさめたけど、バカ王が聞き入れるはずもない。殺されることを恐れた箕子は、狂人のふりをして奴隷になり難を逃れた。
そのあと訪れた運命は先ほど書いたとおりで、殷の滅亡後、箕子は朝鮮半島に移動して「箕子朝鮮」を建国する。
酒池肉林を楽しんだ王は焼身自殺して、象牙の箸(箕子の憂い)から暗黒の未来が見えた賢人は奴隷から王になった。
そんな紂王と箕子の対照的な一生は、アニメのように話がうまくまとまっている。
ただ王が中国人だったことから、韓国で箕子朝鮮の人気はすこぶるない。
日本の知事や議長にも、「コロナ下で無駄遣いするな」「なぜ貴賓車を使うのか」と叩かれ前に、箕子のような少しのおごりに気づく人がまわりにいなかったのだろうか。
それとも、そういう声を無視するプチ紂王の状態になっていたか。
欲望には限りがなくて、権力はホントに腐敗する。
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>広島県と兵庫県が知事のため、山口県が県議会議長のために
はからずも、西日本ばかりが話題となっているのは、なにか理由があるのでしょうかね?
>箕子のような少しのおごりに気づく人がまわりにいなかったのだろうか。
>それとも、そういう声を無視するプチ紂王の状態になっていたか。
うーん。たかが公用車の話を「殷の紂王による酒池肉林」に例えるのも、どうかと思いますが。マリー・アントワネットのパンとケーキの話も同じですか?
だけど、日本人の心根に「質素倹約を旨とせよ」という儒教的な道徳観(?)が刻まれているのは本当だと思います。それはおそらく、農耕を主たる業として、地道に生産活動に励むことにより、社会の存続をつないできた日本人の悟りであると言ってもいいのでしょう。
外国だったら、その程度の話だったら「権力者の贅沢」とは、とてもみなされない程度の些細なことでしょう。もっとすごい話がいっぱいあります。つまりは、それだけ「社会階層が上下で乖離している、貧富の差がある」ことを前提条件として認めているのが普通の国なのですよ。日本は世界で最も平等化の進んだ「社会主義国家」ですから。
そういえば西日本以外でこの話を聞きませんね。