黒人が握る寿司:多様性・寛容を試されるこれからの日本人 

 

オシャレとスイーツの国・フランスで、日本人が快挙を達成したもよう。

時事通信の記事(2023年01月22日)

洋菓子の世界大会、日本が優勝 16年ぶり3度目―仏

お客さんの「なにコレ美味しい!」のために、日々スイーツ修行をしているのがパティシエ(洋菓子職人)。
そんな世界中のパティシエがフランスに集結して、国別対抗の団体戦で腕(テク)を競うあう大会が「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」だ。
このフランス版『食戟のソーマ』というか、洋菓子のワールドカップみたいな大会は2年に1回開かれている。
このイベントでみごと日本代表チームが優勝した。
この快挙は1991年、2007年に続く3度目のことで、それはそれでスゲーのだけど、日本は21年まで5大会連続で2位だったというのもスゴイ。

世界各地で行われた予選を突破した精鋭たちによる、今年の「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」の2位はフランスで3位はイタリアだ。
世界最高峰のスイーツ大国をおさえて、洋菓子の分野で優勝したというからスバラシイにもほどがある。

この偉業に日本のネット民の反応は?

・料理ってだいたい日本人優勝に絡むんだよな
まあ本場の国行って修行するんだからそりゃそうだろとも思うが
・イギリスは飯は不味いがお菓子は旨いよ
ティータイムと戦争に関わることについてはイギリス人はガチ
・柚子がフランス料理を席巻してるように今度は餡子が洋菓子界を席巻するのか
・ベルギーとかも美味しいの作りそうだけど
チョコレートだけなのかな?

2017年には、フランスで毎年行なわれている最高のバゲット(パン)を決める「バゲットコンクール」で日本人が優秀し、最高のパン職人となった。
ギレン・ザビなら「圧倒的ではないか、我が軍は!」とニヤッとするかも。

 

大会会長のピエール・エルメ氏は「細部へのこだわり、忍耐力、献身的な姿勢」と日本チームを称賛。

 

「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」では過去にはフランスのほか、アメリカ、イタリア、マレーシアなんかも優勝している。
また「バゲットコンクール」では、セネガル人のパン職人がナンバーワンになったこともある。
こういう多様性がフランスの強みであり、イイところ。
さて、それぞれの大会で日本人が世界一に輝いたことをよろこぶ日本人さんには、その逆転現象が起こる準備はできているのだろうか?

 

ちょっと前に、「他人が握るおにぎりは食べられない」という現象が話題になった。
自宅へ遊びに来た友人に母親がつくったおにぎりを出したら、「ごめん、神経質なんで食べられない」と超無神経なことを言われて、傷ついたという投稿をSNSで見たことがある。
ネットでアンケート調査を見ると、「誰が握ったおにぎりでもOK」という人よりも、家族や友人など、身近な人が握ったおにぎりなら食べられるという人のほうが多い。
他人が握るおにぎりに、抵抗を感じる日本人は多いらしい。
でもまあそれぐらいなら、個人の好みや自由だからいいのだけど、一線を越えてはいけない。

以前、トルコ人とアメリカ人と一緒に寿司を食べに行ったら、後ろの席に大声で話すうるせー客がいた。
もはや会話が聞こえてくるのは不可避な状況。
そのうちの1人が「やっぱ寿司は日本人が握るものに限る!」と言うのはいいとして、それを受けてダレかが「だよなー。黒人が握った寿司なんてムリだわー」と言い出すのを聞いて、一瞬、時間が止まった。
「えっ?」と驚いたボクには気づかず、日本語の分からない2人は目の前のサーモンやアボカドの寿司に全集中している。

同じ日本人でも「他人の握るおにぎりはダメ」という人が多いのなら、「黒人の握る寿司」には絶望的な予感しかない。
そんなアンケート調査をとったら、社会的にエクプロージョンするから、客観的なデータは分からないけど、ホンネの部分ではそう思っている日本人は多いのでは?

 

 

話を1993年にバックすると、この年、記録的な冷夏によって日本は深刻な米不足におちいった。
スーパーやコンビニから米が消えて入手困難になり、「平成の米騒動」と呼ばれるほど国民が困り果てたから、政府は各国に米の緊急輸入をお願いする。
すると、タイ政府がそれに応じて米を輸出してくれた。
そしたら日本人は口に合わないとか言って、タイ米を家畜のエサにしたり捨ててしまい、タイ人を怒らせる。

【1993年米騒動】日本米は美味しいが、タイ人を怒らせるな

タイ米を廃棄した理由にはイロイロあるのだろうけど、「日本人が食べる米は日本米に限る」といった意識もあったと思う。

 

「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」や「バゲットコンクール」で日本人が優勝したことをよろこぶのなら、その逆も認めないといけない。
日本が開催する「世界寿司コンクール」で、アフリカ人が日本人をおさえて世界最高の寿司職人になる可能性はある。
いま日本は「SUSHI」を世界中へ広めたり指導しているから、才能と技術のある外国人はドンドン生まれている。
和菓子や寿司の世界大会で「つぶすつもりで来てください」と言って、日本人の職人が外国人職人につぶされたとしても、日本人は拍手を送らないといけない。

日本食が海外で受け入れられて世界化していくと、食の世界に国籍なんて関係ないから、どんどん日本人から離れていくことになる。
野球やサッカーで日本が世界一に輝くと超うれしいけど、日本食が「人類の所有物」になることは認められないという二重基準は認められない。
日本人がすでにタネをまいたから、これからの日本人は日本文化について、きっと多様性や寛容の精神が試されることになる。
といっても出てきた寿司を見て、どの人種が握ったものか分かるワケないし、やっぱり食は味や見た目を追求するべきだ。
鎖国時代の日本じゃないんだから、日本食を世界に開放してレベルを上げたり、日本食の人気を高めたほうがいい。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

インド人が感じた「日本の多様性」。衣と食の沖縄文化

人種と民族の違い。黒人の日本人(民族)がいて「ふつう」の時代

反論できる?「日本人が、外国人の日本料理をインチキと言うな!」

外国人の質問「すしを食べるのは箸か素手か?」の答え

アフリカの負の世界遺産(黒人奴隷):ガーナのケープ・コースト城

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。