日本の厳しい校則と、ポーランドの学校の“柔軟性”

 

南インドからやってきて、いまは浜松市に住んでるインド人の知り合いがいる。
一年を通じてどんなに寒くなっても、20度以下になることはないという南国で生まれ育った彼女は、日本で秋になったころには「寒いデス。本当に寒いデス」と泣きそうになっていた。
そんな人間がこうなったら、一体どうなるのか?

NHKニュース(2023年2月8日)

寒い日でもジャンパー着て登校 「校則」で認めず 広島の中学校

強烈な寒気が流れ込んだ1月下旬のこの日、広島市の最低気温はマイナス4.2度、最高気温は3.1度という極寒地獄となる。
雪の降るなか、中学2年の生徒がジャンパーを着て登校したところ、校門にいた教員から「生徒指導規程(校則)」に違反していると注意されて、ジャンパーを脱いで学校に入った。
もちろん、下校する時もジャンパーはNGだ。
翌日に熱を出した生徒は数日間、学校を休むことになる。

「学校のルールがおかしいと思うし、改めてほしい」と生徒の保護者は訴えるが、学校側はこう話す。

「決められたルールは子どもの安全や安心のために守る必要がある。現時点では、病気などの個別な理由を除き、認めている防寒着で寒さに対応できると考えている」

それを守った結果、生徒は病気になったのだが?
子供は風の子じゃなくて「風邪の子」になってしまったという、今回の事案にネット陪審員はこう思った。

・スカジャンとかは流石にダメやろけど、普通のジャンパーくらいなら自由でええやろ。
・制服の下に着るタイプがあるだろ
・ウルトラライトダウンを直前まで着て校門前でしまえばどうよ
・教師も登校の際コート禁止で車のヒーターも禁止な
・もっと柔軟に
寒い日はダウンコート着用登校許可
暑い日は水着登校許可で

これが南インドだったら、「児童虐待だ!」「人権侵害だろっ!」と親が集団で学校に怒鳴り込む。

 

程度の差はあってもこうした厳しい校則と、それを金科玉条にして、絶対に守らせようとする先生は全国の学校にいるから、こうしたことはよくニュースになる。
ポーランド出身で浜松の中学校で英語を教えていた女性も、日本の校則の厳しさと、その絶対順守っぷりにビックリした。
とても寒い冬の朝、自転車に乗って学校へ行くと、震えながら登校する生徒を見て心が痛くなる。
なんで生徒はジャンパーやコートを着ないのか?
疑問に思って日本人の教員に聞いても、「校則で認められていないから」で終わり。
どんなに寒くなっても、強い風や雪が降っても、気温や天候がどう変わっても校則だけは動かない。

校則は生徒のためにあるべきなのに、校則を活かすために生徒が犠牲になっている(ように見えた)。
他にも下着の色や髪型についても細かい規則があって、教員はそれを厳しく生徒に守らせている。
このへんの感覚がポーランド人としては理不尽で理解できない。
でも、ALT(外国語指導助手)の自分はそれについてどうこう言える立場にない。
「権限のないことはしない」というのは、社会人として大事なルールだ。
ということで肩を丸めて下を向いている生徒には、「ガンバッテネ」と心の中でエールを送るしかない。

 

「ルールについて、ポーランドの学校はかなり柔軟ですよ~」なんて言うから、「では見せてもらおうか。ポーランドの柔軟性とやらを」と聞くと彼女はこんな話をする。

中学生のころ、音楽を聴きながら授業を受けることは禁止されていたけど、美術の授業ではそれが認められた。
その理由は、音楽を聴くことで集中力が高まって、より高い完成度の作品をつくることができるから。
音漏れしない範囲で、自分の好きな曲を聴きながら創作活動をすることができるし、もちろん聴かなくてもいい。
その判断は生徒にまかされている。
生徒が自分の感性を磨いたり、技術を高めることが美術の授業の目的だから、そのゴールに近づく効果的な方法があれば、それが採用されるのは当然。
何年か前に生徒がこの案を提案したら、それが受け入れられて学校のルールになったらしい。
このアイデアは合理的でポーランド人の価値観や考え方に合っているから、きっと他の学校でも問題ないと彼女は言う。

たしかにこれは、日本の学校なら許可が下りるとは思えない。
「柔軟性ってルールを変えることじゃなくて、生徒の選択肢を増やすことだと思うの」とか言われると、何も言えねぇ。

 

音楽と学習の関係についてアメリカで調査を行なったところ、無音の環境よりも、音楽を聴きながら勉強した人の成績のほうが良かったという結果がでた。
多くの人が集中力を高めたり、勉強をより楽しくするのに音楽は役立つと考えている。
そんなわけで、回答者の58%が授業中にBGMを聴くことを認めるかどうか、学校は検討すべきだと考えているという。

New York Post(August 18, 2022)

More than half (58%) of respondents said that schools should consider letting their students experiment with background music to help them focus.

Students who listen to music while studying have a higher GPA: poll

 

勉強中に聴く「音」の種類にはクラシック、R&B、カントリーといった音楽だけなく、自然界の音やポッドキャストを挙げる人もいた。
アメリカの学校でも美術の授業で、音楽を聴きながら絵を描いたり像を作っても許されそう。

 

でも、日本の学校なら授業を受ける態度も重視されるから、もっと良い絵が描ける(または成績が良くなる)という結果が出たとしても、イヤホンをつけながらの学習はダメだろう。
放課後のクラブ活動で、ギリ認められるかどうか。
逆に海外の学校なら、それぐらいのユルい校則が多い気がする。
いまは外国人の児童生徒も多いから、南インド出身の生徒が広島市内の中学校へ通うようになるかもしれない。
氷点下でもジャンパーやコートの着用は認めない!
そんなレベルの校則はそろそろ通用しない時代だと思う。

 

 

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2 件のコメント

  • 楽しく読みました。
    定められた規則、規定、法を徹底的に守る日本社会の雰囲気は学校から作られるのですね。
    ところで、一つ疑問なことがあります。日本の女子高校生のスカートは短すぎますが(現在韓国も同じですが。。)それも校則を遵守するのですか?
    韓国の場合、おそらく2005年くらいまではスカートの長さを守っていましたが、その後から日本の真似をして現在は日本を凌駕するほど短くなっています。

  • 学校教育の影響は絶大ですね。
    厳しい校則があって、それを守ることを重視する全国で行われています。
    なかには理由のよく分からない「ブラック校則」もあって、よく問題になりますが。
    スカートの短い女子高校生は東京などの一部にいて、全国的には違います。
    そういう女子高校生は少なくて、代表的ではありません。
    あんな短くても校則違反ではないらしいですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。