在日トルコ人の眼 巨大地震で再認識した日本人の2つの美点

 

巨大地震がトルコとシリアを襲ってから1週間がたったいま、トルコだけでも3万人以上の犠牲者が出ている。
これはまだ途中経過で、最終的な被害はいったいどこまで大きくなるのか。
気温は氷点下以下にまで下がる環境のなかで、崩れた建物に取り残された人はたくんいるから、一刻も早い救助が必要となるのに、現地にはそれを邪魔する悪者がいる。
商店やスーパーに侵入して物を盗んだり、支援物資を運ぶ車を襲って水、食べ物、毛布、薬を略奪する集団も現れた。
治安悪化を理由に救助活動がストップされることもあるから、助かる命も救うことができないのが現状だ。

 

 

最近、日本に住むトルコ人(30代の男性)と会ったから、地震について聞くまえに向こうからその話を始めた。
心にたまっているものがあるらしい。

トルコでこんな地震が起こったら、残念ながら、略奪や性犯罪が発生して治安が悪化するのは予想の範囲内。
でも、今回は国内にいる難民に、そうした犯罪行為をする人が多いことにショックを受けた。
困難な状況にあって脱出してきた難民をトルコは受け入れて、食べ物や住む場所を提供してきたのに、恩を仇で返すようなことをするから、いまトルコ人の激しい怒りを買っている。
この状況は想像していなかった。

2011年に東日本大震災が起きた時は、トルコでいろんな報道を見ていた。
そのなかで印象的を超えて衝撃的だったことは、街が崩壊したにもかかわらず、人々は秩序やマナーを失わなかったこと。
支援物資を受け取るために大勢の人がキレイな列をつくって並んでいる光景には、それを伝えるトルコ人記者も自分も本当に驚いた。
市民は冷静に行動していたし、治安が悪化したという話なんて聞かなかった。
それは不思議だったけど、日本で生活しているとその理由がよくわかる。

 

彼はこう感心していたけれど、略奪行為がゼロだったわけではない。
でも、銃で武装した軍人が街をパトロールする必要はなかったし、銃声が響くようなこともない。
地震とともに略奪が始まって、もう100人以上が逮捕されたり、トルコ軍が治安維持に乗り出すことで、ようやく救助活動が再開されるというのは日本人の想像を超えた世界では?
個人的には、いままで何度も叩かれたのに、また「千羽鶴を送ろうキャンペーン」をやろうとする日本人さんがいることにビックリ。
現地で必要な物は状況によって変わるから、送るならやっぱりお金が一番らしい。

 

そのトルコ人がもう一つ怒っていたことが、この地震によって明らかになった違法建築。
今回ここまで被害が大きくなった原因は、あまりにも多くの建物が簡単に崩壊したことにあって、それは巨大地震とカネもうけを優先した業者のコラボによって実現した。
コストカットのために劣悪な材質を使って建築したから、たくさんの人が生き埋めにされまま死んでいく。
法で定められた安全基準を満たしていたら、崩壊していなかった建物もたくさんあったことが判明して、これもいま国民の大きな怒りをよんでいる。
倒壊した建物の責任者130人以上に逮捕状が出ていて、実際に捕まった人もいるという。

いやいや。いまはそれよりも、救助作業に全集中するべきでは?
なんて思ってしまったけど、妻と一緒に出国しようとする寸前、空港で身柄を拘束された男もいるから、間接的に市民の命を奪ったヤツラが逃げ出す前に動く必要があったらしい。
違法建築を認めなかった区長のいる地域では、ほとんど被害が出なかったというから人災の面は本当に大きい。

 

 

知人のトルコ人は日本で無人販売所を見て感動した。
こんなものはトルコでは見たことない。
みんなが知り合いのような小さな村でならいいかもしれないが、不特定多数の人を相手にこんな商法がトルコで成立するはずない。
日本では人目が無くても人々は正直にお金を払うし、設置する側もその誠実さを前提にしている。
無人販売には日本人の暗黙の信頼関係がよく表れているから、これは彼の心に深く刺さった。
こういう人たちなら、人命を重視して違法建築なんてきっとしないだろうと彼は言う。
(これもゼロではないけれど)

トルコ人はオープンでフレンドリーで、いいところは山ほどある。
でも巨大な地震が起きて、いろいろなことが明らかになっていくいま、彼には日本人の美点がうらやましく見えるらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。