パンと米の食文化 日本人は「無知」とインド人が言ったワケ

 

インド出身で初めて日本の政治家(江戸川区議会議員)になったプラニク・ヨゲンドラさんが、『ビートたけしのTVタックル』(4月16日放送)に出演してこう言った。

「日本はまだインドのこと無知だと思ってます」

その根拠は、ヨゲンドラ氏が日本の小学校で見た本に、「インドのご飯はナンとカレー」と書いてあったから。
それはナンセンスなことで、日本人はまだインドを知らないと。
ヨゲンドラ氏に言わせると、ナンはインドじゃなくて中東の料理で5世紀にインドへやってきた。
じゃあ、インド人はカレーと一緒に何を食べるかという質問に、氏は「チャパティ」と答える。

*以上のソースは『Asagei Biz』のこの記事(2023年4月17日)

「ナンはインドの料理じゃない」インド出身の校長が日本の「無知」を一刀両断 

 

インドカレー屋のド定番のナンは、実はインドの料理じゃない。
初めて知った日本人には、「熊本に(野生の)クマはいない」のと同じようなもので、きっと「ナン…だと…」となる。
でもこれはこの人の持論で、1500年も前からある食べ物ならもうインド料理といってよし。
*ナンは数千年前にイラン(ペルシャ)で誕生したといわれる料理で、インドへ5世紀にきたという説の根拠はナゾ。
日本料理を代表する天ぷらなんて、まだ日本へ伝わってから500年もたっていない。

これにネットの反応は?

・そうナンですか?
・日本でインド人がカレー屋でナン売りにしてるから仕方ない
・5世紀からあるのに
ナン癖つけやがって
・インド人ってみんなターバン巻いてる って信じている俺ガイル
・インドの教科書は日本をちゃんと書いてるの?

 

そもそも日本ではチャパティが知られていないし、知名度はカバディより下かもしれない。
ナンチャパティも小麦粉を原料とするパンという点は同じで、ココが違う。

チャパティー:全粒粉を使う。発酵させないで鉄板で焼く。薄くて丸い形をしている。
ナン:精白粉を使って発酵させる。タンドールという釜(かま)の側面にペタッと付けて焼く。もっちりした食感がある。
*チャパティをタンドールで焼くことも可。

小麦の胚芽などを取り除いて、白い粉にしたのが「精白粉」 で日本によくある小麦粉がこれ。
小麦の胚芽などをふくめて、そのまま粉にするのが「全粒粉」だ。
お米でいうなら精白粉は白米で、全粒粉は玄米ってところ。

タンドール窯

 

チャパティ
全粒粉を使っているから全体的に茶色い。

 

インド人から食事に招待されたら、まず間違いなくカレーとそれにつけるチャパティが出てくる。
日本に住んでいたインド人夫婦に夕食をごちそうしてもらった時、彼らはこんなフライパンでチャパティを作っていた。
下にあるのはチャイ(インドのミルクティー)。

 

 

ナンを作るには精製された小麦粉とタンドール窯が必要になるから、インドではレストランで食べる高級なパンになる。
ふつうの家にそんな窯があるわけない。
一般家庭では全粒粉を水で練って、フライパンで焼いて作るチャパティを食べるから、ナンを食べるのはインドの国民的な習慣ではない。
だから、「日本へ来て初めてナンを食べました」というインド人の話を聞いて、「ナンと!」と驚く日本人もいる。

「インドのご飯はナンとカレー」というのは日本にあるインドカレー店の話で、インド人の日常とは違うから、学校でそんな本を読んで先生や生徒が誤解するのはマズい。
だかといって、日本人を「無知」と一刀両断するほどのことでもないと思う。
そもそも一般のインド人は、日本の食文化なんてほとんど知らないのだから。
ケララ州やタミルナドゥ州とかの南部出身で、日本に住んでいるインド人に聞くと、日本人がもっているインドのイメージは北部にかたよっていると話す人が多い。
インドの食文化は南北で大きく違う。
北はパン(小麦粉)の文化で、南部のインド人は米をよく食べる。
だから、「インドのご飯はカレーと北部ではチャパティ、南部ではお米」といったほうが正確だ。

 

 

インド 目次 ③

インド人が絶賛する日本社会 ワイロはなくても“恥”はある

【カレーと刺身】“日本で嫌いな食べ物”とインド人が言う理由

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【ヒンドゥー教と神道】もしインド人を神社へ連れて行ったら?

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。