韓国と台湾で尊敬される日本人 その理由はまるで違った

 

台湾と韓国には同じ過去とまるで違うイマがある。
日清戦争で日本が勝利してから太平洋戦争で敗北するまで、1895年~1945年のあいだ台湾は日本に統治されていた。(日本統治時代の台湾
韓国の場合は1910年の日韓併合で始まったから、その期間は15年ほど短い。(日本統治時代の朝鮮

日本統治という共通の体験があっても、いまの台湾と韓国では歴史や日本への認識は別ものだ。
韓国の視点からすると間違った歴史観を持っていて、韓日関係を最悪にさせた安倍元首相は「公共の敵」なんだが、正しい歴史認識を持ち、日台関係を発展させた安倍氏を台湾は「永遠の友人」と呼んで銅像まで建てた。

公共の敵 or 永遠の友人 韓国と台湾で分かれる安倍氏の見方

こんな韓国と台湾では「尊敬する日本人」もまるで違う。
その具体例をこれから見ていこう。

 

きのう8日、台湾メディアがこんな記事を掲載した。

 

いまの台湾の人たちに尊敬され、高い評価を受ける八田与一(與一)とはどんな人物なのか。

彼は統治時代の台湾にいた土木技師で、当時としては世界最大規模のダムをつくろうと悪戦苦闘する。
その工事の過程で爆発事故が起きて多くの台湾人労働者が死ぬと、八田は遺族の家に走り、「申し訳ございません!」と土間に両ひじ・両膝をつけて涙を流しながら謝罪した。
こうした困難を乗り越えて、1930年に烏山頭ダムが完成すると、付近の平野は豊かな穀倉地帯になって台湾人の生活も豊かになった。

「感謝しきれない!」日本人の八田与一が台湾で愛される理由

義理堅い台湾人はそんな八田与一を「先生」と呼び、銅像を建ててその功績を後世に伝えている。
彼の命日には毎年、記念式典が行われて、81周年のことしは台湾のナンバーツー(副総統)と台南市長が参加し、さらに八田与一の孫やその家族などが招待された。
ズラリと並んだ花束の量に、台湾の人たちの八田への感謝の気持ちが表れている。
それを知らせる投稿がSNSにあると必ず、「ありがとうございます」「台湾の人たちの気持ちには感謝しかありません」といった日本人のメッセージが書き込まれるから、八田与一が台湾と日本の友好のかけ橋となった(台日之間的友誼)というのは正しい。

 

八田与一(明治19年 – 昭和17年)

 

台湾メディアにそんな報道があったころ、韓国ではハンギョレ新聞がこんな記事を掲載した。(2023-05-01)

5月の独立運動家は「日本人」…朝鮮を愛した2人

この韓国紙が「朝鮮とともに日帝に対抗した」と称える2人の日本人とは金子文子(ふみこ)と布施辰治(ふせ たつじ)のこと。
まず、金子文子は大正時代にいたアナキスト(無政府主義者)だ。

ハンギョレ新聞によると、朝鮮人の独立運動家・朴烈(パク・ヨル)の同志で恋人でもあった文子は、パクとともに「昭和天皇暗殺を謀議し逮捕された」という。
1926年に東京で開かれた初公判で文子は韓服を着て現れると、自分を「朴文子(パク・ムンジャ)」と呼び、死刑を言い渡されると「マンセー(万歳)」と叫ぶ。
パクと文子のために活動した弁護士が布施 辰治だ。
ちなみに2人とも、後に天皇の慈悲で減刑される。

そんな文子の言動が高く評価され、愛国心の高揚を図るための韓国の国家機関「国家報勲処(ほうくんしょ)」が2023年の「5月の独立運動家」にこの女性を選ぶ。
金子文子と布施辰治は、大韓民国建国勲章(愛国章)を授与された日本人として一部では有名だ。

 

朴烈と金子文子(怪写真)

 

文子について日本語のウィキベテアにはこう書いてある。

旦那の朴が大正天皇と皇太子の爆弾による殺害を計画していたとほのめかし、文子も朴に共感して天皇否定と爆殺・大日本帝国滅亡を必要だと論じたために、大逆罪で起訴され、有罪となった。

金子文子

 

大日本帝国の滅亡と天皇暗殺の必要性を主張したことで、いまの韓国で金子文子は「良心的日本人」の地位にある。
これは韓国の基本的な考え方で、「桜田門事件」で昭和天皇を殺害しようとした李 奉昌(イ・ポンチャン)も日本ではテロリストだけど、韓国では国民的英雄となっている。
台湾における八田与一との絶望的な違いよ。
韓国と台湾にはそれぞれの価値観や見方があるから、同じ人物を「公共の敵」や「永遠の友人」と呼んだり、尊敬される日本人像がまったく別ものになるのもアタリマエ。
ただ八田と違って、金子文子が日本人の共感を得ることはなく、日韓友好のかけ橋になることもない。

 

 

台湾 「目次」 ①

台湾 「目次」 ②

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韓国の独立門。中国への従属、日本からの「プレゼント」

朝鮮の壬午軍乱:日本人を激怒させた、閔妃と大院君の争い

 

2 件のコメント

  • 不必要な過去史論争は終止符を打つべきです。
    良心的な韓国人がたくさん生まれています。 そのため、日本統治時代の日本を理解しようという動きもあります。彼らは岸田首相の訪韓の際も歓迎行事を行いました。
    https://blog.naver.com/cleanmt2010/223097205925
    消耗的な感情対立は両国にとって全く役に立ちません。

  • ユン大統領の対日政策について、韓国世論は真っ二つに分かれているようです。
    ただ、安重根など韓国にとっての偉人が、日本にとってはテロリストになるという歴史認識のギャップは埋まりません。
    これはお互いに違いを受け入れるしかないです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。